碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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夏ドラマのダークホース、「民王(たみおう)」が面白い

2015年07月29日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今回は、テレビ朝日のドラマ「民王(たみおう)」について書きました。


テレビ朝日系「民王」
ワニ顔を千変万化させる遠藤と
“ダメ息子”菅田の怪演

猛暑に圧倒されたかのように、全体的に元気がない今期ドラマ。そんな中で思わぬ拾い物のような1本が、この「民王」である。話は何とも破天荒で、時の総理大臣・武藤泰山(遠藤憲一)と、そのバカ息子・翔(菅田将暉)の体が、突然入れ替わってしまうのだ。

2人は周囲に悟られないよう誤魔化しながら、回復を待とうとする。だが、泰山の姿形となった翔は秘書官が書いた答弁を棒読み。しかも、まともに漢字が読めないため、野党からも失笑を買う。一方、見た目は翔だが傲岸無礼なままの泰山も、就活で訪れた会社で面接官を罵倒し、説教までしてしまう。

“入れ替わり”という設定はこれまでにもあった。大林宣彦監督作品「転校生」の幼なじみ男女や、「さよなら私」(NHK)の親友同士のアラフォー女性などだ。しかし総理大臣父子は秀逸で、政治や権力をめぐるドタバタコメディでありながら、一種の風刺劇にもなっている。

また、遠藤憲一と菅田将暉のテンションの高さが尋常ではない。2人はさだまさしの自伝ドラマ「ちゃんぽん食べたか」(NHK)でも父子を演じているが、まるで別人だ。ワニ顔を千変万化させる遠藤はもちろん、奮闘するダメ息子を演じる菅田の怪演も一見の価値あり。同じ池井戸潤の原作だが、黙ってないのは花咲舞だけではない。

(日刊ゲンダイ 2015.07.28)

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