碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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産経WESTで、出演者の「番組降板&出演自粛」について解説

2017年06月22日 | メディアでのコメント・論評



【豊田昌継の甘辛テレビ】
“小出恵介問題”とどこが違う? 
番組降板&出演自粛の境界線は…
「ぷいぷい」だけじゃない放送業界のモヤモヤ感


“文春砲”も小出騒動の影に隠れ…

MBSテレビの看板番組「ちちんぷいぷい」(月~金曜午後1時55分)でニュース解説を担当する、同局の“ニュースのおっちゃん”こと石田英司さん(57)が、5億円の私的流用を国税局から指摘されたNPO法人会長への過度な取材便宜や不倫を、8日発売の「週刊文春」で報じられました。

MBSは同日放送分で便宜を否定。石田さんは不倫に関しては「不徳の致すところです」と、事実上認め謝罪したものの、番組降板などはなく、現在も出演し続けています。

このニュース、関西ローカルで、しかも、俳優の小出恵介さんの未成年女性との飲酒&淫行で無期限活動停止という話題と日が重なったこともあり、メディアで取り上げられることはほとんどありませんでした。今でも多くの人が「そんなことがあったの?」といった感じでしょう。

ただ、知っている人の中には「えっ、謝罪だけ?」と違和感を持った人もいるのではないでしょうか。実際、ネット上には〈降板すべき〉など批判の声が一時は少なからず寄せられたようです。そこで、今回は寝かかっている子を起こすようなテーマ「番組降板&出演自粛の境界線」について触れたいと思います。

あの人も、この人も

今回、NPO団体会長への便宜については同局の社内調査の結果を尊重したいと思います。ただ、降板などにならなかった点に関して内外で聞いた話を総合すると、こんな背景が浮かび上がってきました。

〈昨年6月、元MBSアナウンサーで、同ラジオの情報番組のメインパーソナリティーを務める子守康範さんが週刊誌で「不倫」が報じられたが、番組打ち切りは免れた〉

さらに-。

〈平成24年には、読売テレビ系「情報ライブ ミヤネ屋」の司会を務める宮根誠司さんがやはり週刊誌で「隠し子」が報じられたが、このときもほぼ無傷で乗り切った〉

だから-。

いささか強引かもしれませんが、前例からそう筋立てても決して不思議ではないと思います。

僕はあの日、豪快なキャラクターの石田さんなら思い切った発言があるかもしれないと注目していただけに非常に残念でした。ただ一方で、こうして指摘・批判して降板や出演自粛に追い込むだけでいいのか。そんなモヤモヤ感も僕の中には充満しています。

そこで、小欄でもおなじみ、元MBSプロデューサーの影山貴彦同志社女子大教授(メディアエンターテインメント論)を直撃しました。

身内に甘い放送業界

影山教授は「報道に携わる者だけに、局が降板させるべき」としたうえで、「不祥事の対応は以前よりも迅速になったが、事件ならアウトで、それ以外なら謝罪と反省で一丁上がりみたいな風潮はやがて組織の信用を失う。外へ出てよく分かるが、放送業界は身内に甘い体質がある。一方で視聴者の業界を見る眼は日々厳しくなっている。襟を正すことはやはり大事だと思う」。

非常に厳しい意見で、古巣への思い入れの強さが伝わってきます。

もう一人、碓井広義上智大教授(メディア文化論)にも意見を聞きました。東京から俯瞰(ふかん)で見ていただきたいと思ったのです。

碓井教授は、降板や出演自粛の境界線として、(1)その人が何をしたか(犯罪や反社会的行為から、今回のような倫理観、さらに人としての失敗に至るまで)(2)当事者の人物像やランク付け、キャラクターなど複合的要素でジャッジされる-としたうえで、こんな見解を示してくれました。

いろんな矢が飛んでくる“1億総文句言い”時代

「以前なら、それらをメディアが自分たちで判断していました。ところが、現代のような『1億総文句言い』の時代になると、降板させるさせないのどちらに判断してもいろんな矢が飛んでくる。なかなかきれいに裁けない。となると、最も影響力のある『ネット世論』を横目に、あいまいなままおずおずと模様眺めするしかない。でも、それはメディアだけではなく、政界や経済界でも同じことが言えます。豊田さんがいわれる『モヤモヤ感』とは、そんなところじゃないでしょうか」


なるほど。見事に言い当ててくれました。「ぷいぷい」は4年前の小欄スタートの際、いの一番に取材した、僕にとっても思い入れのある番組。「聖人君子たれ」と奇麗事は言いませんが、報道の世界に身を置く以上、覚悟を持って仕事に臨みたいものです。自戒も込めて。【豊田昌継】

(産経WEST 2017.6.19)

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