碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「しょせん他人事ですから」中島健人のコメディセンス

2024年08月14日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

見る側を和ませる

中島健人のコメディセンス

「しょせん他人事(ひとごと)ですから

~とある弁護士の本音の仕事~」

 

弁護士が活躍するリーガルドラマは数えきれないほど作られてきた。

今期の「しょせん他人事ですから~とある弁護士の本音の仕事~」(テレビ東京系)は、主人公の保田理(中島健人)が「ネットトラブル」専門の弁護士であることが新鮮だ。

最初の依頼人は人気の主婦ブロガー(志田未来)。人妻風俗勤務という事実無根の噂を広められて炎上した。

また兄妹2人組のアーティスト(野村周平・平祐奈)は、身に覚えのない「中学時代のいじめ動画」が拡散されて炎上。物心両面で大きな被害を受けた。

このドラマの見所は、ネットトラブルへの具体的な対処法がわかることだ。書き込みやサイトを消す「削除請求」や、書き込んだ者を特定する「情報開示請求」などの流れが物語の形で示される。

さらに問題となる書き込みをした側の顛末も描かれる。主婦ブロガーを中傷していたのは同じマンションに住む主婦(足立梨花)だった。

そしてアーティストの偽情報を広めたのは広告会社の部長(小出伸也)だ。どちらも「ちょっとつぶやいただけ」という認識だが、リツイートであっても責任を負う場合がある。

自分が扱う案件を「他人事」と言い切る保田は変わり者に見える。

だが、一歩引いた全体の俯瞰と、第三者としての冷静な対応は見事で、弁護士として優秀だ。演じる中島のコメディセンスが見る側を和ませてくれる。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2024.08.13)


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