碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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最も旬な「助演女優」西田尚美さん

2011年08月30日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載している番組時評のタイトルが、今週から変わりました。

題して、「TV 見るべきものは!!」

テレビに対する愛情をベースに、いいものはいい、ダメなものはダメと(笑)、これまで以上にしっかり書いていきたいと思っています。

この連載も、どうぞよろしくお願いいたします。

第一回目として、NHKの向田邦子ドラマ「胡桃の部屋」を取り上げました。


昭和の女を好演する西田尚美は
最も旬な助演女優だ


家族は最も近くにいる他者だ。

しかし近いとはいえ互いの全てを知っているわけではない。

各人が思わぬ秘密を抱えており、何かのきっかけにそれが噴出する様子はまさにドラマ的だ。

今週最終回を迎えるNHK向田邦子ドラマ「胡桃の部屋」(火曜22時)の三田村一家も結構大変なことになっている。

実直なはずの父は突然家を出て女と暮らし始めた。

嫁いだ長女は夫の浮気を発見。

次女は逆に妻子ある男と交際している。

三女は家庭の実態を隠してセレブ男と交際し、それがバレて大騒ぎとなる。

それぞれは善人なのに誰かを傷つけ、自らも傷つきながら生きているのだ。

物語の軸は父親に代わって一家を支える次女で、松下奈緒が「ゲゲゲの女房」以上に好演している。

舞台はバブル前の東京だが、ケータイもメールもない時代のもどかしい不倫模様がけなげだ。

このもどかしさこそ昭和であり、何もかもがむき出しになる平成との違いだろう。

そして“昭和感”において松下に負けずいい味を出しているのが、父親(蟹江敬三)と暮らすおでん屋の女・西田尚美だ。

一緒にいて欲しいと思いながらも、男はいつかいなくなると覚悟を決めて過ごす日々。

わざと憎まれ口をたたく時の切ない目の表情など絶品だ。

テレ東「IS~男でも女でもない性」の母親役も含め、今最も旬な“助演女優”である。

(日刊ゲンダイ 2011.08.29)

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