『日刊ゲンダイ』に連載している番組時評のタイトルが、今週から変わりました。
題して、「TV 見るべきものは!!」
テレビに対する愛情をベースに、いいものはいい、ダメなものはダメと(笑)、これまで以上にしっかり書いていきたいと思っています。
この連載も、どうぞよろしくお願いいたします。
第一回目として、NHKの向田邦子ドラマ「胡桃の部屋」を取り上げました。
昭和の女を好演する西田尚美は
最も旬な助演女優だ
最も旬な助演女優だ
家族は最も近くにいる他者だ。
しかし近いとはいえ互いの全てを知っているわけではない。
各人が思わぬ秘密を抱えており、何かのきっかけにそれが噴出する様子はまさにドラマ的だ。
今週最終回を迎えるNHK向田邦子ドラマ「胡桃の部屋」(火曜22時)の三田村一家も結構大変なことになっている。
実直なはずの父は突然家を出て女と暮らし始めた。
嫁いだ長女は夫の浮気を発見。
次女は逆に妻子ある男と交際している。
三女は家庭の実態を隠してセレブ男と交際し、それがバレて大騒ぎとなる。
それぞれは善人なのに誰かを傷つけ、自らも傷つきながら生きているのだ。
物語の軸は父親に代わって一家を支える次女で、松下奈緒が「ゲゲゲの女房」以上に好演している。
舞台はバブル前の東京だが、ケータイもメールもない時代のもどかしい不倫模様がけなげだ。
このもどかしさこそ昭和であり、何もかもがむき出しになる平成との違いだろう。
そして“昭和感”において松下に負けずいい味を出しているのが、父親(蟹江敬三)と暮らすおでん屋の女・西田尚美だ。
一緒にいて欲しいと思いながらも、男はいつかいなくなると覚悟を決めて過ごす日々。
わざと憎まれ口をたたく時の切ない目の表情など絶品だ。
テレ東「IS~男でも女でもない性」の母親役も含め、今最も旬な“助演女優”である。
(日刊ゲンダイ 2011.08.29)