「バリバラ」が残したもの
当たり前に障害者と向き合う
13日、NHKEテレのバリアフリー・バラエティー番組「バリバラ」が幕を閉じた。放送開始は2010年4月。「生きづらさを抱える全てのマイノリティー」にとってのバリアーをなくそうという姿勢は最後まで貫かれた。
15年の歴史の中で注目すべき回がある。16年8月28日の「検証!『障害者×感動』の方程式」だ。実はこの日、「バリバラ」と横並びで放送されていたのが、「24時間テレビ39 愛は地球を救う」(日本テレビ系)だった。
そこでは障害のある人たちのさまざまな「挑戦」が披露された。「富士登山をする両足マヒの少年」「佐渡海峡40キロを遠泳リレーする片腕の少女」「本田圭佑選手と交流する義足のサッカー少年」などだ。
この時の「バリバラ」が秀逸だったのは、障害のあるコメディアンでジャーナリストだったステラ・ヤングさん(1982~2014年)が生前に行った講演を紹介したことだ。
彼女は、安易に障害者を扱った映像を健常者が見れば、「自分の人生は最悪だが、下には下がいる。彼らよりはマシだと思うでしょう」と指摘する。障害者が「健常者に勇気や感動を与えるための道具」となっている状態を「感動ポルノ」と名付け、その弊害を訴えていた。
さらに「バリバラ」では、テレビが「障害者の感動ドキュメント」を仕立て上げる過程をユーモラスに解説していく。まず障害者の「大変な日常」を見せる。
次に「過去の栄光」と「障害という悲劇」を描く。そして最後に、「仲間の支え」によって「ポジティブに生きる」現在の姿を紹介する。
番組では、この仕掛けを「不幸で可哀そうな障害者×頑張る=感動」という方程式で示していた。テレビの作り手だけでなく、見る側の心の中にもこの「感動の方程式」を受け入れる素地があるなら、それは一種の“共犯関係”だ。
放送後、「バリバラが24時間テレビを批判」といった形で話題になったが、これは“批判”ではない。テレビというメディアが生み出す、障害や障害者に対する固定化したイメージを、作り手も受け手も自己検証してみませんかという“提案”だったのだ。
ステラさんは「障害は悪ではないし、私たち障害者は悪に打ち勝ったヒーローではない」と語っていた。それは、「バリバラ」が標ぼうしてきた「障害は個性だ」という視点とも重なっている。
感動のためではなく、ごく普通に生きている障害者とごく当たり前に、日常的に向き合う。それが「バリバラ」という番組だった。
(毎日新聞 2025.03.22 夕刊)