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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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自分への問いかけ 生きてるうちに何がしたいか?

2022年04月02日 | 「北海道新聞」連載の放送時評

 

 

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自分への問いかけ 

生きてるうちに何がしたいか?

3月27日、特番「生きてるうちにしたい100のこと。-2022晩冬-」(HTB)が放送された。

出演は「水曜どうでしょう」(同)の鈴井貴之と、「イチオシ!!」(同)の司会を長年務めたヒロ福地。初共演だという彼らが、肩を並べて会いに行ったのは脚本家・倉本聰だ。現在87歳の倉本が「生きてるうちにしたいこと」とは何なのか。

倉本が挙げたのは7つだ。1つ目は、何と「プーチン暗殺をゴルゴ13に依頼すること」。しかし、漫画家のさいとう・たかをが亡くなり、果たせなかったと本気で悔しがる。

次が「北海道を1960年代の貧しいが倖(しあわ)せな哲学を持った共和国として独立させる」。原発その他、化石エネルギーの使用を禁じ、人間が本来体の中に持っているエネルギーだけで生きていける「島」に戻したいと言うのだ。

3つ目は「20~30代の愛人を2~3人持つ」。これには鈴井も福地も驚いていた。だが、「脚本は女優へのラブレター」が信条の倉本だ。まだまだ脚本を書き続けたいという意欲の表明なのである。

続いて「安楽死法案を成立させ、イヤになったらいつでも楽に死ねる国家にする」。安楽死や尊厳死について、長年考えてきた倉本。それはドラマにも反映されている。あらためて、医学の役目は患者を苦しみから救うことだと主張した。

5番目は「おふざけタレントをテレビ界から放逐する」。ある大物芸人が、長くテレビに君臨し続けることに対する異議だ。倉本は彼の俳優としての演技もあまり評価していない。その名前はピー音で消されていたが、87歳の愛すべき過激さに驚かされる。

さらに「自由に煙草(たばこ)の喫える社会に戻す」も飛び出した。何しろ倉本によれば、ドラマ「北の国から」は「46万本のマイルド・ラークと1400本のジャック・ダニエルが書かせた」のだから。

そして最後、7番目のしたいことが「時速40キロ以上のスピードを全て禁止する」だ。人は急ぐことで、たくさんのものを見失ってきた。今こそ文明とスピードの関係を検証する必要がありそうだ。

この番組、50代の鈴井と福地が、80代の倉本に敬意を込めて迫ったことで化学反応が生まれた。人生の「残り時間」とその「使い方」に関して、より切実であるはずの倉本が自由に跳ねたのだ。しかも、そこには衰えを知らぬ反骨とユーモアの精神があった。

今回の3人にならって、「これから何がしたいか?」と自分に問いかけてみる。それは悪くない時間の使い方かもしれない。

(北海道新聞 2022.04.02)


言葉の備忘録273 四月は・・・

2022年04月02日 | 言葉の備忘録

 

 

 

四月は

何となく「使命感」が

芽生える月だ。

 

 

桜木紫乃『おばんでございます』