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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

ふるさとの本屋さんで、トーク&サイン会

2019年04月07日 | 本・新聞・雑誌・活字

 

ふるさとである長野県塩尻市の「中島書店」さんが、なんと、トーク&サイン会を開いてくださることになりました。ありがとうございます。

聞き手は、映画館館主で映画コラムニストの合木こずえさん。

お近くの皆さんということになりますが、よかったら、立ち寄ってみてください。(参加費無料、予約不要)

どうぞよろしく、お願いいたします。

 

 

倉本聰、碓井広義 『ドラマへの遺言』

出版記念トーク&サイン会

「脚本家・倉本聰のドラマの世界」

 

 トーク: 碓井広義

聞き手: 合木こずえさん

 

日時: 4月20日(土)14時〜

場所: 中島書店 高原通り店        

塩尻市広丘高出1494-6        

TEL:0263-54-3968

 

 

 

ドラマへの遺言 (新潮新書)
倉本聰、碓井広義
新潮社

 


絶好調だった、テレビ東京の「深夜ドラマ」に拍手!

2019年04月07日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

絶好調だった、

テレビ東京の「深夜ドラマ」に拍手!

1月クールで俄然光っていたのがテレビ東京の深夜ドラマです。『日本ボロ宿紀行』、『フルーツ宅配便』、そして『デザイナー渋井直人の休日』。テレ東じゃなければ出来ない、深夜ならではの名品ばかりでした。

この中の『日本ボロ宿紀行』については、先月、「見ないで終わるのは惜しい、深川麻衣『日本ボロ宿紀行』は奇跡の脱力系深夜ドラマ」と題して書いたので、他の2本について記しておきます。

●濱田岳主演『フルーツ宅配便』

番組タイトルの「フルーツ宅配便」は、咲田真一(濱田岳)が雇われ店長をしているデリヘルの店名でもあります。在籍する女性たちには、みかん(徳永えり)やイチゴ(山下リオ)といったフルーツの名前が付いているのです。

そんなメンバーに加えて、新人が毎回入ってくる。どんな女優が、どんな女性として登場するのか。それがこのドラマの大きな見どころでした。

たとえば、詐欺に引っかかり借金を背負っていたのがモモ(成海璃子)。客に本番をさせておいて後から金をゆする、困ったタイプがサクランボ(筧美和子、好演)です。そしてブルーベリー(中村ゆり)は、一度は逃れた覚醒剤に再び手を出し、自首することを選びました。

咲田は確かに主人公なのですが、彼を軸にドラマが展開されるわけではありません。主体はむしろ嬢たちです。

嬢たちそれぞれが抱えた事情やトラブルの中に、今どきの社会や生(ナマ)の人間の姿がさりげなく映し出されているのです。

また嬢たちは密室で客と向き合うのですが、サービス行為そのもののシーンは映像で見せません。それは鈴木良雄さんの同名原作漫画のスタイルでもあり、その抑制と禁欲ぶりが好ましい。

咲田が付き合っている同級生、えみ(仲里依紗)が所属する悪徳デリヘル店の経営者・沢田(田中哲司)と、フルーツ宅配便のオーナー・ミスジ(松尾スズキ、怪演)の対決も見ものでした。

『ビッグコミックオリジナル』で原作漫画の連載が続いていることもあり、続編も十分期待できそうです。

●光石研主演『デザイナー渋井直人の休日』

主人公はタイトルのまんまで、デザイナーの渋井直人(光石研)。52歳の独身男です。

音楽を聴くのはレコードで、外出時にはダッフルコートがお決まりです。仕事はできるし、それなりにおシャレさん。何より渋井は「心優しき中年おじさん」であります。

美術系を含むサブカルにもくわしくて、自分が好きなものには強いこだわりを持っている。女性に対しては、それなりに意欲も野心もあるけれど、あまりモテない。

そんな渋井の楽しくも、ちょっとほろ苦い日常が淡々と描かれていきました。

インスタで知り合った女性(内田理央)とのデートは店がどこも満員で、ホテルのレストランに誘ったつもりが、結局は誤解されて決裂しちゃいます。その笑える展開は同情に値するほど。

また昔なじみのスタイリスト(臼田あさ美)に呼び出されていい気分になっていたら、実は不倫相手と別れた直後で、単に癒やしを求めていただけでした。それを知ったときの渋井というか、光石さんの、「ちょっと切ないけど、オレは落ち込んだりはしないぞ」という表情がいいんだなあ。

さらに居酒屋で出会ったOLさんであるカモメ(黒木華)は、やや天然でかなりマイペース。だけど翻弄されている渋井は実に嬉しそうでしたね。

個人的には、かつて住んでいた、そして仕事場もあったりした、代々木八幡や代々木上原周辺の映像も楽しめました。

毎回、本当はドキドキしながら、あくまでも“ステキなおじさん”であろうとする渋井は確かに痛い。でも、その痛さがかわいく見えてくるのが、光石研という役者の持ち味であり真骨頂です。

脇役が主役となった快作『バイプレイヤーズ』を思い出させるこのドラマ、光石さんにとって、なんと俳優生活40年で初の「連ドラ単独主演」でした。拍手!


書評した本:『変容するNHK~「忖度」とモラル崩壊の現場』他

2019年04月07日 | 書評した本たち

 

週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。

 

川本裕司

『変容するNHK~「忖度」とモラル崩壊の現場』

祥伝社 1620円

「ETV特集」「ハートネットTV」など“NHKの良心”と呼ばれる番組群を制作する文化・福祉番組部が解体の危機にある。まさに“政権への忖度”だが、なぜこんなことが起きるのか。歴代会長の功罪を含め、ベテラン新聞記者がNHKの過去と現在を総括する。

 

古橋信孝

『ミステリーで読む戦後史

平凡社新書 1015円

ミステリー小説を通じて戦後社会を読み解こうとする試みだ。60年代の松本清張『ゼロの焦点』に見る戦争の影。70年代に戦後社会に異議を唱えた清水一行『動脈列島』。そして小杉健治の『絆』など家族の問題がテーマとなる80年代。ミステリーは優れたうつし鏡だ。 

 

 メグ・ウォリッツァー:著、 浅倉卓弥:訳

『天才作家の妻 40年目の真実』

ハーパーコリンズ・ ジャパン 1000円

グレン・クローズ主演映画の原作だ。偉大な文学賞を受賞した夫とそれを支える妻。そんな図式が吹き飛ぶ衝撃の告白だ。確かに夫婦も他人であり別人格。相手の心の奥底までは知り得ない。それにしても40年分の鬱屈と葛藤の何と根深いものか。秀逸な恐怖小説だ。

(2019年3月28日号)

 

一本木透 

『だから殺せなかった』

東京創元社 1944円

第27回「鮎川哲也賞」優秀賞受賞作だ。連続殺人犯から新聞社に挑戦状が送られてくる。しかも記者の一本木透を指名して。その手口を開陳しながら、自身の殺人哲学を語る犯人。新聞は劇場型犯罪の舞台となっていく。「報道とは何か」を問う秀作ミステリだ。

 

澤山博之:監修・著 

『ミュージック・ライフ 東京で1番売れていたレコード 

1958~1966』

シンコーミュージック・エンタテイメント 2808円

安保闘争で国会突入があった1960年6月、最も売れた洋楽のシングル・レコードはフランキー・レイン「ローハイド」。邦楽は平尾昌晃の「ミヨちゃん」だった。雑誌『ミュージック・ライフ』の独自チャートや記事を完全再現。当時の音楽シーンが甦ってくる。

(2019年3月21日号)

 

 

 

 

変容するNHK――「忖度」とモラル崩壊の現場
川本 裕司
花伝社

 

 

 

ミステリーで読む戦後史 (平凡社新書)
古橋 信孝
平凡社

 

 

天才作家の妻 40年目の真実 (ハーパーBOOKS)
浅倉 卓弥
ハーパーコリンズ・ ジャパン

 

 

だから殺せなかった
一本木 透
東京創元社

 

 

 

ミュージック・ライフ 東京で1番売れていたレコード 1958~1966
澤山 博之
シンコーミュージック