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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

60年後に出会う、獅子文六『娘と私』

2014年12月01日 | 書評した本たち



獅子文六の名前も、『娘と私』のタイトルも知っていたが、読んだことはなかった。

しかし、ちくま文庫の11月の新刊として書店に並んだことで、手に取ってみた。

昭和28年から31年にかけて、「主婦之友」に連載された自伝小説だ。

読み始めると、結構面白くて、止まらない。

フランス人の妻との間に生まれた娘、麻里。

その妻は病気で亡くなってしまい、娘と2人の生活が始まる。

慣れない父親稼業には無理があり、やがて麻里を女学校の寄宿舎に入れる。

だが、今度は麻里が病気になってしまい、しかも自分の再婚も・・・・。

約60年前の小説だが、家族に対する情愛や思いは、時代が移ろうと、そう簡単に変わるものではない。

ちなみに『娘と私』は、昭和36年に放送された、NHK朝ドラ第1作目の原作だ。


今週の「読んで書評を書いた本」は次の通りです。

小川征也 『先生の背中』 作品社 

齋藤 孝 『自伝を読む』 筑摩書房

広瀬隆・後藤克幸 『今夜も肴はビートルズ!』 KTC中央出版

尾崎俊介 『ホールデンの肖像』 新宿書房

木田 元 『哲学散歩』 文藝春秋

* これらの書評は、
  発売中の『週刊新潮』(12月4日号)
  読書欄に掲載されています。


まだ間に合う!?「オトナの男」が見ないのはモッタイナイ秋ドラマ

2014年12月01日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

気がつけば、もう折り返し点を過ぎた秋ドラマ。

いずれも物語は佳境へと差し掛かっています。

連続ドラマを途中から見るのはシンドイと思う人が多いかもしれませんが、このまま見ないでいるのはそれ以上にモッタイナイ。

まだ間に合う!?「オトナの男」のための、秋ドラマ最終案内です。


深夜の贅沢な“しめの一本” 
「深夜食堂3」(TBS系)


買ったばかりの漫画誌「ビッグコミックオリジナル」。最初に読むのは長年の習慣で「釣りバカ日誌」だ。そして最後に開くのが安倍夜郎の「深夜食堂」である。“しめの一杯”という感じがするからだ。

ドラマ「深夜食堂3」(TBS系)の、一見コワモテだが、どこか優しいマスター(小林薫)の佇まいは、シリーズを重ねても変わらない。

また相変わらず、「豚バラトマト巻き」や「紅しょうがの天ぷら」など出てくる料理もうまそうだ。しかも料理とストーリーのマッチングが押しつけがましくないことも嬉しい。

そして、このドラマの魅力の一つがキャスティングだ。たとえば第3話の石橋けい。「有言実行三姉妹シュシュトリアン」や平成のウルトラシリーズ以来の根強いファンを持つ。今回の「婚約者の浮気を知って別れ、興信所の調査員をしている30代独身女性」なんて、まさにハマリ役だった。

第4話で「男前な大阪女」を演じた谷村美月もいいキャスティングだ。強がりと健気さが同居したキャラクターを、NHK「さよなら私」の愛人役とは違ったタッチで見せていた。

演出陣には松岡錠司、山下敦弘、熊切和喜など、映画好きには嬉しい手練れの監督たちが並ぶ。30分の1話完結形式が、そのまま熱い競作の場となっているのだ。いわば、深夜の贅沢な“しめの一本”である。


石原さとみの演技が光る 
「ディア・シスター」(フジテレビ系)


焼酎「ふんわり鏡月」のCMに出ている石原さとみがいい。

夏に流れた「間接キッスしてみ?」も目が離せなかったが、現在放映中の「冬・こたつ編」がまた憎たらしいほど可愛いのだ。

あの独特のユルさ、無防備感が幅広い世代のオトコたちを刺激する。もはや石原の“代表作”と言えるのではないか。

そんな彼女の新作ドラマが「ディア・シスター」(フジテレビ系)だ。

一応、姉役の松下奈緒とダブル主演ということになっている。しかし石原演じる妹が物語の主軸であることは明らかだろう。

真面目で大人しい姉に比べ、勝手気ままで自由奔放な妹だが、実は家族や友達のことを人一倍心配する優しい娘であることも分かってきた。

また石原は妊娠しており、その相手は松下も憧れていた元高校教師(田辺誠一)だ。さらに石原は難病まで抱えている。

普通はこのあたりで「話を盛り過ぎだろう」と言われそうだが、意外や破綻していない。支えているのは、昨年の「ラスト・シンデレラ」(フジテレビ系)で篠原涼子を見事な“おやじ女子”に仕立てた中谷まゆみの脚本であり、かつて演出家のつかこうへいに鍛えられた石原の演技力だ。

美人姉妹の恋愛模様というだけでなく、実は「結婚とは? 家族とは? 命とは?」といったテーマを織り込んだ、なかなか骨太なドラマになっている。