『感性創房』kansei-souboh

《修活》は脱TVによる読書を中心に、音楽・映画・SPEECH等動画、ラジオ、囲碁を少々:花雅美秀理 2020.4.7

・日本人はなぜ赤レンガの建物が好きなのか?

2014年08月28日 00時02分11秒 | ■文化小論

 

   「赤煉瓦好き」は日本人だけ?!

   「表題」は、「毎日新聞」朝刊(8月25日)の「余禄」というコラムの「テーマ」。それによれば、建築史家の鈴木博之氏(故人)は、次の「二つ」を “その理由” としている。

   「一つ」は、日本人が縄文土器以来、土を焼く行為を延々と続けており、「焼き物」も「煉瓦(レンガ)」も生活の原風景にあり、「煉瓦」にも心休まるものがあるという。

   「二つ」には、日本の「煉瓦建築」は英国にルーツを持つものが少なくなく、近代日本人の英国への思いが、愛着の背景にあるのではと。それを受けて「余禄子」は、その代表的な日本人として、英国留学の経験を持つ夏目漱石を挙げた。

       ☆

    しかし有史以来、およそ “人類” は共通の生活文化として、“土を焼く” という作業を引き継いで来た。「日本人」だけが特に「焼き物」を作り、またそのことに “特別な愛着” を持っているわけでもないと思う。

   二つ目の理由にしても、「英国」との特別な関わりを持ったごく少数の人々はそうかもしれない。しかし、圧倒的多数の「日本人」は、おそらく “そのような意識” はほとんどないような気がする。いや “意識” 以前に、そもそもそういう “予備知識(=情報)” を持っていなかったのではないだろうか。 

   筆者には、以上のような「インテレクチャルな理由」よりも、もっと「プリミティブな理由」があるように思えてならない。

       ☆

 

   赤煉瓦の色合いと風合い

   思うに、《人が赤煉瓦を好む》のは、まず「赤煉瓦」独特の「赤さ」すなわち「深みある赤茶けた色合い」にあるように思う。“赤味の色合い” は、「鉄分」を含んだ土を焼くことによって “自然” に産み出される。

   つまり、「赤煉瓦」の “色合い” と、素焼きによる素朴な “風合い” とがもたらす親しみやすさとでも言うべきだろうか。表面の微妙な “ざらつき” 具合や、しっとりと伝わってくる “温もり” も、煉瓦独特の重厚な質感に貢献している。その証拠に、モルタル(セメント)で作られた「灰ネズミ色」の無機質的な色調が、「赤煉瓦」のように話題となることはない。

   だが「赤煉瓦」の最大の魅力は、何といっても「自然の緑」つまりは生い茂った樹木や草花といったものとの “取り合わせ” の魅力だろう。「赤茶けた色」と「深い緑や薄緑」とのカラーコーディネーションが素晴らしいのであり、対極的な “色調と質感” とが、お互いの存在を引き立て合っていることにある。つまりは “コントラストの妙” といえよう。

   それにしても、赤煉瓦の色合いと樹木の緑は、抜群の相性と言える。赤煉瓦の深みある赤茶色によって自然の緑が映え、その緑が豊かであればあるほど、赤煉瓦がいっそう落ち着いた存在感を発揮するような気がする。

       ☆

   人類はすでに4千年以上前に「煉瓦」を作って建築材料として来た。「粘土」に「砂」や「苆(すさ)」(または藁)などを混ぜて型枠に入れ、日に干して作り上げるいわゆる「日干し煉瓦」だ。映画『十戎』の中で、エジプトの王子から奴隷へと転落した主人公(モーゼ)が、多くの奴隷と共に、足で泥濘を踏みこなすシーンがある。これこそまさしく「日干し煉瓦」造りだ。この「日干し煉瓦」を焼くことによって、基本的には「焼き物としての煉瓦」ができる。

   「ギザ」をはじめ、多くのピラミッドは「石造」だが、「日干し煉瓦」のものもあるという。降雨が少ないエジプトならではであり、「日干し煉瓦」は崩れたり廃棄されたりしても、いつでもリサイクルできる。もっとも、「焼き物」となった「煉瓦」も、最近とみに再利用されてはいるが。

       ☆

   筆者の母校「西南学院高等学校」も、「チャペル(礼拝堂)」と「外塀」が「赤煉瓦」で有名だった。その後、高校校舎は西南学院大学の校舎に建て替えられたものの、外塀は以前の「赤煉瓦」の雰囲気を残し、また建物の一部に筆者が高校時代の赤煉瓦が使われているという。

   “赤煉瓦よ! 永遠なれ!”

       ★   ★   ★

 

  ◆日本の赤煉瓦建築

  福岡市赤煉瓦文化館(旧日本生命九州支店)、佐賀市・築地反射炉(日新小学校内)、兵庫県・姫路市立美術館、旧奈良県監獄署(奈良少年刑務所)、福井県・敦賀港駅ランプ小屋、広島呉鎮守府(海上自衛隊呉地方総監部)、山口県立山口博物館、中之島公会堂(大阪)、北海道道庁、その他。

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ・気品の聖性/『日本の美し... | トップ | ・『エゴ・サーチ』/福岡県... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

■文化小論」カテゴリの最新記事