82秒間が物語る“差別の真実”
以下は巻末〔参考〕欄に再アップした◆【動画A】の進行を追いながら、「82秒間の真実」を再検証したものです。筆者個人の感想を交えています。
「▶0:00~」は、【動画】の「進行time」を指しています。
▶0:00~:【動画】のスタートは、メダル授与者のⒶ女が、「少女④」にメダルを掛け終えた瞬間を映し出しています。Ⓐ女は次の瞬間、メダルを掛けるべき「黒人の少女⑤」をちらっと見ただけでスル―しました。しかしこの時、何か「ひと言」告げたのかもしれません。
Ⓐ女が少女⑥にメダルを掛けている間、少女⑤は、前傾姿勢のⒶ女の陰となって見えません(0:08頃)。しかし次に少女⑤の姿が見えたとき、「自分をスル―された」と悟った少女⑤は、Ⓐ女を見詰めています。
▶0:12~:❖少女④は少女⑤に「メダルが掛けられていない事」に気付き、戸惑いの表情を見せています。『え? 何でこの子はメダルを掛けてもらっていないの? どうして?』とでも言いたげです。これ以降少女④の小さな胸のうちには、「メダルを授与しなかったⒶ女への疑念や不信」とともに、「メダルを掛けてもらえなかった少女⑤の恥辱や哀しみ」といったものが、駆け巡っていたことでしょう。
この0:12頃、左手より「カメラマンのⒷ男」が画面に入り、以降、左画面への出入りを繰り返し、1:06頃に左画面に消えて行きます。この間彼は、少女⑤を全く無視しています。というより、「ことさら他の少女たちの撮影を強調するオーバーな動作」が顕著です。あえて少女⑤に見せ付けるような意図が感じらるのは筆者だけでしょうか。
彼が少女⑤の置かれた立場と「その張り裂けるような胸の内」を少しでも気遣う気持があれば、間違ってもあのような行動を取るはずはないと思うのですが……。しかもそれが「MEDIAカメラマン」というのですから。
❖0:30~の少女④に特に注目。
一方その間、Ⓐ女は少女⑦の前に歩み寄ってメダルを掛けています(0:15頃)。このときⒶ女は少女⑤の方にちょっと顔を向け、何か言葉を発したような気がします。後ろ向きのために顔も口元も見えませんが、ひょっとしたら少女⑤から「何か声がかけられた」のかも知れません。そのような雰囲気が感じられます。画面の少女⑤は正面を向いて苦笑いを浮かべているだけです。
▶0:22~:Ⓐ女は薄紫色のレオタードを着た少女⑧にメダルを掛けています。少女⑤は何とも言えない表情のまま、ただ立っています。
❖このとき少女④は、少女⑤のそのような様子を特に気に掛けているようです。
▶0:28~:Ⓐ女が少女⑨にメダルを掛け、次の少女⑩にメダルを掛け終えたとき(0:32頃)、ご覧のようにⒶ女の手元のメダルがなくなり、彼女は「足りなくなったメダル」を取りに画面の右端に消えて行きます(0:42~)。
▶0:30~:❖少女④が、少女⑤に何やら語りかけています。周りの喧噪のために、少女⑤は少女④の口元に耳を近付け、聞き終えたときⒶ女の方に視線をやっています。しかしこの時、少女⑩にメダルを渡し終えていたⒶ女は、「足りなくなったメダルを取りに、画面右手に消えていました。
▶0:43~:Ⓐ女が画面に戻ってきた時、少女⑤は一歩前に進み出て両手を身体の前で軽く揃え、あたかも「メダルを掛けてもらう」ために気持を整え、準備をしているようかな雰囲気が感じられます。
しかしⒶ女はそういう少女⑤のことなど完全に無視しています。というより、少女⑤が自分に「メダルを要求する事」を察知し、いっそう無視しているかのようです。
その証拠に、できるだけ少女⑤に近付かないようにするためでしょうか。メダルを掛ける順序を、画面右端の少女⑫から少女⑪と逆転させ、ほんの一瞬見えた少女⑬にもメダルを掛けたような雰囲気が感じられます。それを終えたⒶ女は、“そそくさ”と画面右へと消え去ったのです(0:53頃)。
▶1:04~:ポニーテールのⓒ女が左端から画面中央に現れ、右足を何かの上の載せて靴の紐を結び直しているようです。それを終えて真っすぐ立ち上がった彼女は、並んでいる少女たちの様子をさりげなく窺(うかが)うような素振り(そぶり)を見せています。とりわけ少女⑤をそれとなく気にしているような雰囲気が感じられます。
といってそれは、少女⑤に対する好意的な想いではなく、メダル授与をスル―された少女⑤と少女④の様子を、より近い位置から確認するかのような意図が感じられます。ⓒ女はあくまでも、“メダル授与スルーに無関心さを装っています。しかし、ⓒ女が首を傾げてポニーテールの髪を振り払うような仕草に、筆者は少女⑤に対する“突き放したような冷ややかさ”を感じたのですが……。
なぜなら、もしⓒ女が少女⑤や少女④に好意的であれば、彼女はここで“何らかの行動”を起こしていたでしょう。たとえば少女⑤に、『大丈夫、心配しなくていいのよ。メダルは必ず貰えるからね。』とか『よく頑張ったわね。偉いわ……。』『あとで私と一緒に、メダルを貰いに行きましょうね。』など……語りかけることはできたのではないでしょうか。
もしⓒ女が、前回筆者が推測したように、「GI」すなわち「アイルランド体操協会」のスタッフとするなら、彼女は問題解決へ向けた「キーパーソン」となっていたかもしれません。
しかし、そうならなかったのは、残念ながら「GI」と言う組織の体質にあるのでしょう。
▶1:12~:少女⑦が「手を振った相手」と思われるⒹ女が、「COACH」のロゴを背中にして現れ、スマホで少女⑦を撮影してます。
そこへⒹ男が現れ(1:19~)、同じようにスマホで撮影をしています。彼の背中の「ロゴ」は(正面でないため)、正確に読み取ることができませんが、「COACH」のような気がします。雰囲気からして、やはりⒹ女と同じ「体操クラブ」ではないでしょうか。
「人種差別意識」を実証する「大人たち」の「不作為」
それでは以上「82秒間の真実」から明らかになった「いくつかの事実」を整理してみたいと思います。といっても、もちろん筆者の「個人的な所見」にすぎませんが。
(1)Ⓐ女のメダルスルー事件によって、「もっとみんなで喜び合っている」はずの「メダルの少女たち」が、少女⑤への気遣いのために「受賞の歓びやその誇らしさ」を抑えている。
それでもごく一部の少女は、ほんのちょっと「歓びを全身で表現したり、隣の子と喜び合ったり」という行動は見られたものの、やはり明らかに「抑え気味」となっている。
(2)少女⑤のために「ただ一人真剣に気遣って何かをささやいた少女④」の存在と、その精いっぱいの行動に救いが感じられる。
(3)「MEDIAカメラマンのⒷ男、ⓒ女、COACHのⒹ女、その仲間のⒺ男」大人4人各氏による、「人種差別意識を実証する不作為」に驚かされる。それとともに、「姿は見えなく」とも「画面左に居ると思われる大人たち」からの「リアクション」が見られなかったことにも驚かされる。
それにしても「少女③④⑤」の「家族」をはじめ、所属「体操クラブ」のコーチや関係者たちは、どこで何をしているのでしょうか。少なくとも「そのうちの一人か二人の大人」は、メダルの授与を見ていると思われるのですが。はてさて、あの場面とその周辺で、一体何が起きていたのでしょうか。「それらの大人たち」は、どこで何をしていたのでしょうか。どうしたと言うのでしょうか……。
少女⑤の家族の方々は居ないようですね、もしあの場に居れば、当然、何らかのリアクションがあったはずです。少女⑤の様子からも、家族の存在を感じさせるものは一切ありません。
(4)以上⑴⑵⑶によって、おそらく「少女⑤」の「恥辱や悔しさ」は倍加されたことでしょう。そのような「痛みや苦しみ」の中で、少女⑤はどう対応してよいのか解らないまま、終始落ち着かない様子です。
ことに他の何人かの少女が、喜びを表現している姿を目にしただけに、その対比は残酷としか言いようがありません。思いもよらない「孤立と不安」を抱え込んだ少女⑤の「戸惑いと哀しみ」とが、痛いほどよく伝わって来ます。
『何が起きているのだろうか? なぜ私だけが?』……と。しかし、彼女を理解し、庇(かば)おうとする大人は一人としていないようです。「メディア・カメラマン」や「他のクラブのコーチ」等も、少女⑤のすぐ傍を出入りしていると言うのに。
次回は、Ⓐ女に「メダルの表彰授与」を任せた「GI」すなわち「アイルランド体操協会」という組織に触れたいと思います。
(続く)
〔参考〕
◆【動画A】黒人少女だけにメダルを渡さない女性。それを指摘しようともしないメディア・カメラマンやコーチ等(1:22=82秒)