昌栄薬品
渡辺武著 わかりやすい漢方薬
第二章 漢方薬はどう診断するか
5 肝腎の解毒と利尿作用
酒は温泉である
酒といえば、〝酒の神様〟である坂口謹一郎先生を思い出します。ある高齢な会社の社長さんを連れて、
「この人をもっと長生きさせる薬はないか」
と相談に来られました。ところが、よく見ると、肝心な先生の方が、じんましんが出て悩んでおられるのです。
そこで先生にも、ショウガの入った気剤を処方したところ、
「おれはショウガはダメだ。うけつけないんだ」
といわれる。
聞くと先生は好物のお酒を召し上がっているときは調子がよい。
結局、ショウガと同じ気剤である酒を、朝に夕に、少しずつ飲んでいれば、皮膚からの発散を助けて、じんましんは退散するという話で一致しました。
酒は〝百薬の長〟といわれるくらい、体内の水分を発散してくれる特効薬なのです。
ヨーロッパでは、葡萄酒は食前酒として、食事の受入れ体制を整える飲物になっていますが、酒は言いかえればスパイスと同じ役割をしています。
血液の循環を良くし、夏の暑い盛りなどは、皮膚ばかりに流れている血液を、胃や腸に集中させてくれます。
しかし、肝臓はアルコールの解毒をしているわけですから、酒も過剰に飲むと負担がかかってくるのです。
ただ、過剰といっても、人によっては一升飲んでも平気な人もいれば、盃一杯で一人で酒を飲んだ如く真っ赤になる人もいます。
赤くなる人を肝臓の機能がすぐれているようにいう人がいますが、事実は逆で、肝臓が鋭敏で解毒作用が少ないから赤くなるのです。
酒は人それぞれに適量がありますが、適量の酒は血行を良くして、冷えのぼせを正常にしてくれます。
ちょうど、温泉に入って血行を良くするのと同じことです。
冷えのぼせの正常化ということは、女性の男性化、男性の女性化の体内的な状態―女性が頭に血が上っている、男性は頭に血が上らない―という逆現象を正常化してくれるのです。
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辛味は肺・鼻・皮毛・大腸に作用しこの臓腑の働きを強めています。
辛味は刺激物ではなく、重要な薬味なのです。
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