村上龍 平成26年 幻冬舎文庫版
ひさしぶりに村上龍を読んでみたくなって、ことしの8月ころだったか買った文庫。
買う前から、買ったあとしばらくしてようやく読み始めるまで、タイトルを誤認してた、「ハローワーク」ぢゃなかったのね。
てっきり、職業とかセカンドライフとかについての人生論的エッセイかルポだとばっかり思い込んでたら、ちがった、連作小説集だった。
『13歳のハローワーク』のタイトルだけセルフカバーというかもじりで小説にするとは、なかなか凝ったことで。
主人公たちは、だいたい55歳過ぎたくらいで、著者あとがきによれば、“何とか「再出発」を果たそうとする”“「普通の人々」”ってことになる。
読んでて、うわー村上龍がこういう人物に起こるこういう出来事について書くんだー、と、ちょっと意外に思った、だって基本泳いでないと死んぢゃうサメのようなキャラを書くようなイメージあったから。
「結婚相談所」
54歳のとき離婚した中米志津子さんは、マネキンさんと呼ばれるスーパーの試食販売の仕事をしてたが、主に経済的な理由で結婚相談所に登録して再婚相手を探し中。
「自分の人生を自分で選べる人って、限られていますよね」なんて考えをもつ彼女は、何人かの男性と会ってみて、自分が求めてるのは変化なんぢゃないかと気づくんだが。
んー、「55歳からの~」ってタイトルで、しょっぱなを男ぢゃなくて女性を主人公にたててきたのは、意表をつかれた。
「空を飛ぶ夢をもう一度」
因藤茂雄は6年前54歳のとき小さな出版社をリストラされて、以来地元の新座市には仕事はなく、派遣登録して主に都内の道路工事の交通誘導員を腰痛と戦いながら仕事にしてた。
いつのころからかホームレスをみかけると、とても不安な気分になるようになったんだが、あるとき工事現場で中学のときの同級生と偶然会う。
そいつは最初自分からは明かさなかったけど、家を飛び出してホームレスになってたらしい。
山谷の旅館の料金が一律2200円なのは生活保護の住居費が月額66,000円だからって、ホントかどうか知らんが、リアルな情報でそういうのは勉強になるなあ。
「キャンピングカー」
富裕太郎は早期退職制度に応じて定年になり、家のローンは完済、息子も娘も働いていて、なんの不安もなかった。
ところが、かねて計画してた1000万くらいのキャンピングカーを買って妻と日本全国を好きなように旅しようって話を持ち出したら、家族の賛同は得られなかった。
いろいろ考えて再就職のために動き出したが、家具メーカーの営業職だった定年の男には、かつての取引先にも取りあってくれるところはなかった。
「ペットロス」
高巻淑子は6年前に定年退職した夫とともに川崎と横浜の境にある4LDKのマンションに住んでいる。
夫は退職以降は書斎でパソコンに向かいっぱなし、30歳過ぎた息子は結婚してすぐベトナムに転勤で行ってしまった。
淑子はかねてからの夢であった柴犬を飼うことにして、河川敷あたりを散歩させてるうちに犬つながりで新しい知りあいもできた。
「トラベルヘルパー」
下総源一は三重県で海女の祖母に育てられたときからおしゃべりな男になった。
両親の離婚後ほとんど会ってない父親と同じトラックドライバーという職についたが、60歳で会社から切られた。
退職になってからは、金のかからない趣味として家で本を読むようになったが、ある日のこと古本屋で、歳のころは五十そこそこ、派手さはないが、細面できゃしゃな体つき、清楚でソプラノの声の持ち主の女性客にホレてしまった。
どうでもいいが、現役ばりばりの80年代、長距離を大型で走るのに「大好きな荻野目洋子のカセットを大音量で鳴らしながら」だったってのは、いい趣味だ。
ひさしぶりに村上龍を読んでみたくなって、ことしの8月ころだったか買った文庫。
買う前から、買ったあとしばらくしてようやく読み始めるまで、タイトルを誤認してた、「ハローワーク」ぢゃなかったのね。
てっきり、職業とかセカンドライフとかについての人生論的エッセイかルポだとばっかり思い込んでたら、ちがった、連作小説集だった。
『13歳のハローワーク』のタイトルだけセルフカバーというかもじりで小説にするとは、なかなか凝ったことで。
主人公たちは、だいたい55歳過ぎたくらいで、著者あとがきによれば、“何とか「再出発」を果たそうとする”“「普通の人々」”ってことになる。
読んでて、うわー村上龍がこういう人物に起こるこういう出来事について書くんだー、と、ちょっと意外に思った、だって基本泳いでないと死んぢゃうサメのようなキャラを書くようなイメージあったから。
「結婚相談所」
54歳のとき離婚した中米志津子さんは、マネキンさんと呼ばれるスーパーの試食販売の仕事をしてたが、主に経済的な理由で結婚相談所に登録して再婚相手を探し中。
「自分の人生を自分で選べる人って、限られていますよね」なんて考えをもつ彼女は、何人かの男性と会ってみて、自分が求めてるのは変化なんぢゃないかと気づくんだが。
んー、「55歳からの~」ってタイトルで、しょっぱなを男ぢゃなくて女性を主人公にたててきたのは、意表をつかれた。
「空を飛ぶ夢をもう一度」
因藤茂雄は6年前54歳のとき小さな出版社をリストラされて、以来地元の新座市には仕事はなく、派遣登録して主に都内の道路工事の交通誘導員を腰痛と戦いながら仕事にしてた。
いつのころからかホームレスをみかけると、とても不安な気分になるようになったんだが、あるとき工事現場で中学のときの同級生と偶然会う。
そいつは最初自分からは明かさなかったけど、家を飛び出してホームレスになってたらしい。
山谷の旅館の料金が一律2200円なのは生活保護の住居費が月額66,000円だからって、ホントかどうか知らんが、リアルな情報でそういうのは勉強になるなあ。
「キャンピングカー」
富裕太郎は早期退職制度に応じて定年になり、家のローンは完済、息子も娘も働いていて、なんの不安もなかった。
ところが、かねて計画してた1000万くらいのキャンピングカーを買って妻と日本全国を好きなように旅しようって話を持ち出したら、家族の賛同は得られなかった。
いろいろ考えて再就職のために動き出したが、家具メーカーの営業職だった定年の男には、かつての取引先にも取りあってくれるところはなかった。
「ペットロス」
高巻淑子は6年前に定年退職した夫とともに川崎と横浜の境にある4LDKのマンションに住んでいる。
夫は退職以降は書斎でパソコンに向かいっぱなし、30歳過ぎた息子は結婚してすぐベトナムに転勤で行ってしまった。
淑子はかねてからの夢であった柴犬を飼うことにして、河川敷あたりを散歩させてるうちに犬つながりで新しい知りあいもできた。
「トラベルヘルパー」
下総源一は三重県で海女の祖母に育てられたときからおしゃべりな男になった。
両親の離婚後ほとんど会ってない父親と同じトラックドライバーという職についたが、60歳で会社から切られた。
退職になってからは、金のかからない趣味として家で本を読むようになったが、ある日のこと古本屋で、歳のころは五十そこそこ、派手さはないが、細面できゃしゃな体つき、清楚でソプラノの声の持ち主の女性客にホレてしまった。
どうでもいいが、現役ばりばりの80年代、長距離を大型で走るのに「大好きな荻野目洋子のカセットを大音量で鳴らしながら」だったってのは、いい趣味だ。