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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

ブロンドの鉱脈

2021-10-30 18:28:41 | 読んだ本

E・S・ガードナー/高橋豊訳 昭和六十一年 ハヤカワ・ミステリ文庫版
新しい(自分にとって新しい)ミステリを仕入れる気力がわかないので、むかし読んだペリイ・メイスンシリーズをひさしぶりに出してきた。
もうなんも考えずにサラサラ読むのには適してるしね、このシリーズは、立ち止まって考えたりしないでページめくる。
原題「THE CASE OF THE BLONDE BONANZA」は1962年の作品。
ペリイ・メイスンの秘書デラ・ストリートがめずらしく二週間の休暇を叔母と一緒にとっていて、そのおしまいの週末にメイスン自身もボレロ・ビーチというところに合流するところから始まる。
デラが、この海辺で見つけたミステリを紹介してあげると、メイスンに言うんだが、昼時に金髪できれいな脚の女性がやってくるのを見つける。
野外ランチルームで通路をへだてた席に座っている金髪女を観察していると、焼きたてのステーキとフライドポテトとサラダとアップルパイ・アラモードと二本のキャンディ・バーを食べている、すごい量だ。
ところがデラによると、金髪女はさらに4時になるとお茶を飲みにここへきて、チョコレート・サンデーとケーキを食べてチョコレート入りの麦芽乳を飲むんだという、店のウェートレスへの聞き込みによると、すでに二週間ほどそんなこと続けているらしい。
好奇心の強いメイスンは当然興味をもつんだが、デラの叔母のつてでその金髪女ダイアンと知り合いになることができる。
それでダイアンのいうには、むちゃくちゃ食べてるのには目的があって、ちょっと前に声をかけられて、新しいタイプのモデルになることをすすめられた、今のファッション界はやせてるモデル主流だが、世の女性のためにそうぢゃないもうちょっと体重ある体形のモデルをつくって売り出すのだという。
ヘンな話だ、ダイアンからそのモデルスカウト社とやらとの契約書の写しをみせてもらったメイスンは、「これほどひどい契約書は読んだことがない」という。
それによると、ダイアンは10週間のうちに体重を12ポンド増やすこととし、勤めていた法律事務所の秘書の年俸5200ドルの仕事をやめる、その代わり毎週100ドルの収入をこの契約により保証される。
それで、今後ダイアンが年額5200ドルを越える金額の総収入があれば、それを使用者側と均等に分けなきゃならない、契約は二年間で、さらに二年間ずつ追加更新してく権利が使用者側にある。
あやしいねえ、シャーロック・ホームズの「赤髪組合」(赤毛連盟)ぢゃないですか、それ。(前にもそんなのなかったっけって気がしたら「五人目のブルネット」という話あった。)
メイスンの思いついた解釈はこうだ、モデルスカウトの男は、ある風変わりな大金持ちと懇意である、その大金持ちは特定のタイプの体形の金髪の美人に惚れやすい性質である、ダイアンを体重を増やさせたところでその大金持ちに紹介する、ダイアンと大金持ちが結婚すれば、モデルスカウトはこの契約をたてにダイアンの財産の半分を手に入れる、さらに近々大金持ちが死んだら遺産相続したダイアンからその半分を分け前として取り立てる。
そうこうしているうちに、ダイアンのところへはモデルスカウト社から手紙がきて、気まぐれなスポンサーが降りたので、新しいファッションの話は頓挫した、あなたに毎週100ドル払うことはもうできない、って通告される、うーん赤毛連盟。
もとの仕事にはもどれないし、体重は増えちゃったし、途方にくれるダイアンのために、メイスンは予約料1ドルという料金でダイアンの代理をつとめることにする。
示談交渉していくらかでも補償をとってやろうとするメイスンは、相手のボーリングという男と面会などしたあとに、あの契約は擬装にすぎないって考えるようになる。
体重を増やした曲線美の金髪女ってのは見せかけで、新たな見込みは、行方不明の相続人を狙った詐欺事件だと直感する、ダイアンが相続するべき財産がどこかから出てきて、その半分を手に入れるための手口だと。
ぢゃあなんで契約を打ち切ってダイアンを手放してしまったのか、そりゃもっと大きな利益をあげられる別の方法を見つけたからだろう、きっと「ゆすり」だ、と推察する。
このあやしいボーリングって男に、さっそくおなじみのドレイク探偵社をつかって尾行をつけたりして、戦闘態勢に入ったときの、メイスンがデラに盛大に夕食をとろうって、
>なぜかぼくはお祝いをしたい気分なんだ。あらゆる人がほかのあらゆる人を裏切ろうとしている状況の中に首をつっこむのが、ぼくは好きなんでね(P.91)
みたいな言い方をするのが、なんともおもしろい。
そのあとは、どうせいつものように、関係者の誰かが死体になって、メイスンの依頼人に容疑がかかるんだろうなって予想すると、まあだいたいそういうことになる。
過去の経歴不詳の大金持ちと、その後妻と、その後妻の連れ子が順に、被害者の滞在している部屋を訪れたが、そのあと最後にその現場に行ったのがメイスンの依頼人ダイアンということで容疑者になる。
予備審問が開かれるが、なにかがおかしい、時間的要素に整合性がない、誰かがウソをついているって考えたメイスンによって、事件の真相は解明されるけど、個人的感想としては、え、その犯人ってあり? って感じが残った。


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