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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

読者は踊る

2021-08-22 19:08:48 | 読んだ本

斎藤美奈子 2001年 文春文庫版
これは、米原万里さんの書評集で、日本の新聞・雑誌に載る書評ってのはホメるのが基本でケナしてはいけないもんなんだけど、
>二五三冊もの本を次々に情け容赦なく滅多切りにしていく書評本なのだが、その類い希なる毒舌の才と芸が冴え渡っていて、(略)まことに見事な、貶す書評の鑑というべき本なのだ。
と絶賛されてたので、読んでみようと先々月ころ古本を買い求めたもの。
単行本は1998年で、初出は「鳩よ!」の連載コラムだったらしいが、そのときのタイトルは「本とうの話」だそうで。
読者は踊るってのは何かっていうと、冒頭に「本書をお読みになる前に」というまえがきがあって、そこに、
>・空いた時間を書店でつぶすことがある。
>・書店に入ったら、新刊書のコーナーを見る。(略)
>・世の中にはくだらない本が多すぎると思う。
といった20項目の例があって、10個以上該当したひとは「踊る読者」、話題の本ってのに踊らされちゃう、その状態から脱却するため本書を参考にしてちょうだいって問題提起。
私としては書評集ってのは、やっぱ貶すよりは面白がりようを書いてあったほうが読んでてたのしいんだが。
(貶しはたまにあるとよいが、そういうのばっか並んでると、なんか食傷気味なもの感じる。)
>結論からいおう。この二冊は(よほど暇な人以外は)読まなくていいです。(p.222「文科系の読者をたぶらかす複雑系本の複雑怪奇」)
みたいな潔いまでにわかりやすい言い方はいいですけどね。
たとえば、天然記念物の図鑑をとりあつかった回では、
>が、肝心の各指定種の記載は、それぞれ専門研究者が執筆しているわりに、おざなりの感がぬぐえない。(略)絶滅が危ぶまれる、保護の必要がある等の「一般論」を説いておしまい。(略)
>そりゃそうでしょうけれどもね、もっときっぱりとした提言はできないのだろうか。この範囲を保護区に指定せよとか。あそこのあの工事をやめさせろとか。(p.171-172「盆栽鑑賞式の天然記念物図鑑が自然保護とは笑わせる」)
みたいに切り込んでるんだけど、そういうのが米原さんのいう「今の時代の本と本をめぐる日本人の精神の有りよう」への批評になってるんぢゃないかなって、参考になります。
というわけで、読んでみたくなる本ってのを見つけにくいんだが、飴屋法水『キミは動物と暮らせるか?』っていうのには興味あるなあ。
コンテンツは以下のとおり。
カラオケ化する文学
 ・消えゆく私小説の伝統はタレント本に継承されていた
 ・字さえ書ければ、なるほど人はだれでも作家になれる
 ・芥川賞は就職試験、選考委員会はカイシャの人事部
 ・夏休みの課題図書は「じじばば文学」の巣窟だった
 ・身内の自慢話が「だれも悪くいわない本」に化ける条件
ニッポンという異国
 ・胃袋で突撃残飯ルポが書けるなら世話はない
 ・大阪がコテコテだなんて、いつだれが決めたんや
 ・日本列島は世界の縮図説から国内植民地問題を考える
 ・「ばかけんちく」が林立する九〇年代日本の風景
 ・安くてうまい本はどれだ。辛口「料理店批評」批評
 ・会社を辞めた若者たちが西へビンボー旅行に出る理由
文化遺産のなれのはて
 ・マニアなのかマヌケなのか。クラシック音楽批評の怪
 ・おとぎ話のパロディだけが流通している不思議の国
 ・汝、驚くなかれ。いまどきの聖書の日本語訳(教会訳編)
 ・汝、驚くなかれ。いまどきの聖書の日本語訳(個人訳編)
 ・死海文書よりミステリアスな死海文書本の攻防戦
 ・豊かな縄文文化の象徴はヘソ出しルックの縄文ギャルか
野生の王国
 ・敵は手強い。幻想の館に秘められた意外な事実
 ・盆栽鑑賞式の天然記念物図鑑が自然保護とは笑わせる
 ・猫語と犬語の違いは、お育ちの差か飼い主の差か
 ・まともな神経では溺れ死ぬ。イルカ&クジラ本が泳ぐ海
 ・ポケモンは生き物採集の代用品となりうるか
科学音頭に浮かれて
 ・マルチメディアの未来をにらんで怒る人、笑う人
 ・地震対策の障害は建造物よりアタマの固い地震学者だ
 ・暴走する利己的遺伝子の陰謀にだまされてはいけない
 ・文科系の読者をたぶらかす複雑系本の複雑怪奇
 ・環境ホルモン狂騒曲に男社会が泡くう構図
おんな子どもの昨日今日
 ・女子高生ルポの商品価値はナマ写真ならぬナマ言説
 ・下半身じゃなく大脳を刺激する「高級猥談」の妙味
 ・アダルト・チルドレン人口をそんなに増やしてどうするの
 ・知らぬはオヤジばかりなり。フェミニズム本の二〇年
 ・学校のスリム化で得をするのは親か子どもかお役所か
 ・三〇年後も男の子を魅了する友里アンヌ隊員の謎
歴史はこうしてつくられる
 ・死ぬまでやってなさい。全共闘二五年目の同窓会
 ・ひめゆりの塔の乙女たちは沖縄戦の広告塔か
 ・「すわ震災」のチャンスを即興芸で語った人たち
 ・隣は何を書く人ぞ。新語事典の中のオウムとノモ
 ・薬害エイズ訴訟に見るチャンバラ時代劇の構造
 ・みんなひれ伏す「在日のアウトロー」という物語
 ・近代史音痴の国で起こったお笑い歴史教科書論争
知ったかぶりたい私たち
 ・哲学ブームの底にあるのは知的大衆のスケベ根性だ
 ・お子様用の学習まんがで手っとりばやくお勉強
 ・源氏物語(のアンチョコ)で春のうららを雅びにすごす
 ・言葉で失敗したくない方はこちらの国語辞典をどうぞ
 ・学問は人の上に人を造る。超勉強本は疑似出世読本だ

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