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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

ブラウン神父の知恵

2020-08-23 19:05:18 | 読んだ本

G・K・チェスタトン/中村保男訳 1982年初版・2017年新版 創元推理文庫版
丸谷才一が「大人の童話」って評するもんだから読んでみることにした、ブラウン神父もの、その第2短編集。
原題「THE WISDOM OF FATHER BROWN」は1914年の刊行、100年以上読まれてるってのはすごいやね、私は今月になってこの新版とやらの文庫を中古で買ったんだけど。
本書の最初の短編「グラス氏の失踪」を読んで、すぐ思い出した、これって高校の英語の教科書に載ってた話だ。
この話が、いったいなんぢゃこりゃ、って感じのものだったんで、私はその後ほかのミステリーを読むようになっても、著名なブラウン神父ものには手を出さないでいたんぢゃないかと。
ロープに縛られて、口にはスカーフをかまされてる男、部屋の中にはトランプが散乱してたり、割れたグラスやナイフが落ちてて争ったあとのような現場に踏み込んだのは、ブラウン神父と高名な犯罪学者。
家のひとが部屋のなかから「ミスター・グラス!」って声がときどき聞こえてたというが、そのグラス氏の姿はどこにもない。
犯罪学者は虫眼鏡をとりだして残されたシルクハットを観察し、グラス氏は背が高くて力が強い年配の人物だとか推論を述べたりする、消えたグラス氏というのは強請屋にちがいないとか。
それに対して神父は「あなたは偉大な詩人ですな! あなたは無から前代未聞の物語を創造なされた」なんて調子で、真実はちがうよと説明する、これって、なんかシャーロック・ホームズをモデルにしてバカにしてんぢゃないかと。
あと犯罪学者のセリフのなかには「(略)死体は庭に埋められているか、煙突のなかにでも押しこめられていることでしょう」なんてのもあるが、煙突うんぬんってえのは『モルグ街の殺人』への皮肉かなとも思われる。
なにがバカにしてるとか皮肉かっていうと、この密室暴行現場の真相というのが、そんな理屈づけアリかよってくらいあっけないもので、しかもそこダジャレかよってオチも付いてるんで、探偵小説へのアンチテーゼとしか思えない一品だからである。
ほかのもミステリーっていうより、私としてはショートショートみたいなつもりで読んでった、帯の紹介文風にいえば「諷刺とユーモア」ってことになるんだろうけど、あんまりマジメに謎を考えたりしないで、どんな仕掛けみせてくれんのよと楽しめばいいものだと思うんで。
一読したなかで気に入ったのは、エクスムア公爵が一族の遺伝としての片方だけ大きい耳を隠すために紫色の鬘をかぶっているんだが、なんでそんなことをしているかってことをとりあげた「紫の鬘」かな。
コンテンツは以下のとおり。
グラス氏の失踪
泥棒天国
イルシュ博士の決闘
通路の人影
機械のあやまち
シーザーの頭
紫の鬘
ペンドラゴン一族の滅亡
銅鑼の神
クレイ大佐のサラダ
ジョン・ブルワノの珍犯罪
ブラウン神父のお伽話

コメント
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