シリル・ヘアー/佐藤弓生訳 1995年 国書刊行会・世界探偵小説全集6
前に読んだ「自殺じゃない!」がたいそうおもしろかったので、もう一冊読んでみたシリル・ヘアー。
(それにしても、いちばん読んでみたい「法の悲劇」はまだ見かけたこともない、困ったもんだ。)
今回は古本で買ったんだけど、同時に一カ所で3冊も見つけるとは、あるときにはあるもんだ、というかみんなどれだけ買ってどれだけ手放しちゃうタイプの本なのって、ちょっと心配になった。
この、原題「An English Murder」は1951年の作品。作中の時代は第二次大戦のすぐ後くらいらしい。
舞台は、都会からはすこしはなれたあたりにあるらしい古い家柄の屋敷であるウォーベック邸。
主のトーマス・ウォーベック卿は病気でだいぶ弱っているが、いつものようにクリスマスに親族の一部を邸に招く。
息子のロバート・ウォーベックは、なにやら過激な右寄りの思想をもつ政治団体に参加してる。
従弟のサー・ジューリアス・ウォーベックは現役の大蔵大臣。
ロジャーズ巡査部長は大臣の護衛としてついてきたロンドン警視庁の刑事。
レイディ・カミラ・プレンダガストは、卿の亡くなった奥方の初めの夫の姪にあたるとか。
カーステアズ夫人は、屋敷のある教区の牧師を父にもち、いまは次期大蔵大臣を狙おうかという政治家の妻という立場にもある。
そして外国人のボトウィンク博士は、屋敷に残る古文書で十八世紀の英国政治を研究しにきてる歴史学者。
これだけの面々がそろったところで、事件は起きる。
クリスマスの午前零時になった瞬間、これらゲストがそろってるなかで、ひとりがばったり倒れて殺される。
さらに二人がつづけて死ぬことになるが、折しも大雪で屋敷は近所からも孤立してるなかでのことだから、犯人はこのなかにいるということになる。
それにつけても、このテのイギリスの小説に味わいぶかさを加えてるのは、執事って人物の存在である。
本作にでてくるブリッグズという執事も、発言やふるまいがうやうやしくて、いかにもって感じでいい。
無粋そうなロジャーズ巡査部長に、手にしたワインについて「これは最後の一本です。一八七八年ものの一つでしてね。」って言うときは、上から目線っぽいんだけど、相手が「フィロキセラ大発生以前の品じゃないですか」なんて物を知ってる答えをすると、「ワインをデカンターに移すのをお手伝いいただけそうですね」なんて敬意をとたんに表したりする。
それはそうと、タイトルについて、というか本作のテーマみたいなものなんだけど、第一の殺人のあと、登場人物のひとりが「昨夜我々が目撃した不幸な事件、あれは、英国の生活習慣とは無縁ですからな。」と強い調子で憤慨して、異例の悲劇だと主張するんだが。
最後にきて、謎を解き明かす役を担ったひとは、「これは英国でのみ起きうる事件なのです。むしろ、本質的に英国風の犯罪と言えるでしょう。」と演説をする。
ちょっとした英語の表現に敏感に反応したとこから手掛りを引き寄せてくるのは、展開としてホーっと思わされるとこあった。トリックどうこうぢゃなくて、読みものとして面白いやね。
前に読んだ「自殺じゃない!」がたいそうおもしろかったので、もう一冊読んでみたシリル・ヘアー。
(それにしても、いちばん読んでみたい「法の悲劇」はまだ見かけたこともない、困ったもんだ。)
今回は古本で買ったんだけど、同時に一カ所で3冊も見つけるとは、あるときにはあるもんだ、というかみんなどれだけ買ってどれだけ手放しちゃうタイプの本なのって、ちょっと心配になった。
この、原題「An English Murder」は1951年の作品。作中の時代は第二次大戦のすぐ後くらいらしい。
舞台は、都会からはすこしはなれたあたりにあるらしい古い家柄の屋敷であるウォーベック邸。
主のトーマス・ウォーベック卿は病気でだいぶ弱っているが、いつものようにクリスマスに親族の一部を邸に招く。
息子のロバート・ウォーベックは、なにやら過激な右寄りの思想をもつ政治団体に参加してる。
従弟のサー・ジューリアス・ウォーベックは現役の大蔵大臣。
ロジャーズ巡査部長は大臣の護衛としてついてきたロンドン警視庁の刑事。
レイディ・カミラ・プレンダガストは、卿の亡くなった奥方の初めの夫の姪にあたるとか。
カーステアズ夫人は、屋敷のある教区の牧師を父にもち、いまは次期大蔵大臣を狙おうかという政治家の妻という立場にもある。
そして外国人のボトウィンク博士は、屋敷に残る古文書で十八世紀の英国政治を研究しにきてる歴史学者。
これだけの面々がそろったところで、事件は起きる。
クリスマスの午前零時になった瞬間、これらゲストがそろってるなかで、ひとりがばったり倒れて殺される。
さらに二人がつづけて死ぬことになるが、折しも大雪で屋敷は近所からも孤立してるなかでのことだから、犯人はこのなかにいるということになる。
それにつけても、このテのイギリスの小説に味わいぶかさを加えてるのは、執事って人物の存在である。
本作にでてくるブリッグズという執事も、発言やふるまいがうやうやしくて、いかにもって感じでいい。
無粋そうなロジャーズ巡査部長に、手にしたワインについて「これは最後の一本です。一八七八年ものの一つでしてね。」って言うときは、上から目線っぽいんだけど、相手が「フィロキセラ大発生以前の品じゃないですか」なんて物を知ってる答えをすると、「ワインをデカンターに移すのをお手伝いいただけそうですね」なんて敬意をとたんに表したりする。
それはそうと、タイトルについて、というか本作のテーマみたいなものなんだけど、第一の殺人のあと、登場人物のひとりが「昨夜我々が目撃した不幸な事件、あれは、英国の生活習慣とは無縁ですからな。」と強い調子で憤慨して、異例の悲劇だと主張するんだが。
最後にきて、謎を解き明かす役を担ったひとは、「これは英国でのみ起きうる事件なのです。むしろ、本質的に英国風の犯罪と言えるでしょう。」と演説をする。
ちょっとした英語の表現に敏感に反応したとこから手掛りを引き寄せてくるのは、展開としてホーっと思わされるとこあった。トリックどうこうぢゃなくて、読みものとして面白いやね。
