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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

口のなかの小鳥たち

2015-07-21 18:42:17 | 読んだ本
サマンタ・シュウェブリン/松本健二訳 2014年 東宣出版
きのうから何か妖怪つながりはないかと思ったけど見当たらないので、「日常空間に見え隠れする幻想と現実」(←カバー袖の紹介による)が描かれた短編集にしてみよう、“ちょっと気味悪い”つながりってとこだ。
「はじめて出逢う世界のおはなし」シリーズの、アルゼンチン編。
同じシリーズのイタリア編である『逃げてゆく水平線』を探すときに、だいぶ苦労したんで、そのとき、その横に並んでた本書をいっしょに買ってみた。
どうせ後で欲しくなるんだったら、その場でゲットしちゃったほうがよい。
片一方もまだ全然読んでない段階では、勇気のある決断だったけど、まあ本に関してはそんなカン外れないだろうし、ムダにはならない。
で、たしかもう一冊あったと思うんだけど、なんつってもアルゼンチンってのが気になったんで、本書を選んだ。
だから買ったのは3月ころかな、読んだのはもうちょっとあとになったと思うけど。
さてさて、ところが読んでみたら、ずいぶんイタリア編とはおもむきが違った。
児童文学とか童話って類ぢゃないよ、これ。
なんかモヤっとしてるし、後味がわるい。
読まなきゃよかった、とすら思わされるようなものもいくつか。
(そこがいいんだけど。オチがあってとかハッピーエンドでとかってだけぢゃ物語はつまらない。)
たとえば表題作「口の中の小鳥たち」。
別居してた妻シルビアが娘サラのことで話があるといって、夫はそっちの家まで引っ張って連れてかれる。
ひさしぶりに再会したサラは、前より顔色がよくて健康そうに見えた。
「いいこと、これから起きることを落ち着いて受け止めなきゃだめよ(略)あなたにその目で見てもらいたいの」なんて妻は言う。
で、やおら、雀を一羽、鳥かごに入れて、娘に与えるんだけど。
>サラは私たちに背を向けたまま、つま先立ちになってかごの扉を開けると、雀をつかみ出した。娘がなにをしたかは見えなかった。(略)
>サラが私たちのほうへ振り返ったとき、先ほどの雀はもういなかった。サラの口、鼻、顎、両手はどこも血まみれになっていた。(略)
あまりの光景に、父親はその場を逃げ出して、トイレで嘔吐しちゃう。
妻は「あなたのところへ連れて行ってちょうだいね(略)もう私には無理」と宣告する。
これだけでも、非常に、きもちわるい、救いがない。
(しかし、なんだね、こういうのホントに諸星大二郎の画で見てみたいよねって気がしてきた、いま突然。)
それで終わりならいいんだけど。(パンチのあるホラー、ってだけで終わればね。)こんどは父と娘ふたりでの生活が始まるんだ、これが。
そんなおはなし。
その他、コンテンツは以下のとおり。「穴掘り男」なんてえのもいいねえ、意味わかんないとこが不気味さとして引っ掛かる。
「イルマン」
「蝶」
「保存期間」
「穴掘り男」
「サンタがうちで寝ている」
「口のなかの小鳥たち」
「最後の一周」
「人魚男」
「疫病のごとく」
「ものごとの尺度」
「弟のバルテル」
「地の底」
「アスファルトに頭を叩きつけろ」
「スピードを失って」
「草原地帯」
コメント
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