雨が降った朝、というか夜中に雨が降った形跡があると、朝の空気は違う。
何より樹々がうれしそうで、小鳥たちの囀りもみずみずしい。
昨夜の月は、傘がかかっていたが、それはそれはきれいでしばらく見とれていた。静かに静かに地球は回る。
陽は沈み。陽は昇る。雨は大地を潤し。花は咲き,やがて実をつけ、次の世代へとバトンを渡す。
悪いことが起きると私達はただちにその理由を何らかの人や制度のせいにして犯人探しを始める。
しかし、何でもなくて済んでいることや良かったことについては、あまりその理由を考えない。(中略)
私達が今日まで普通の生活をしてきたのは、自分の力ではなく奇跡だったとはあまり考えないのである。
こう書いたのは、作家の曽野綾子。