『忘れられた皇軍』(1963)
大島渚監督。ドキュメンタリー作品。
【作品概要】
日本テレビの「ノンフィクション劇場」で放送された約30分間の映像だ。日本軍に従軍し戦傷を負いながら、戦後、韓国籍となり社会保障制度からはじかれた元兵士を追う。
戦争で失った両目からこぼれる涙をカメラはアップでとらえる。大島監督は「カメラは加害者」と話し、怒りや悲しみなど、戦傷者が感情をあらわにした瞬間を容赦なくアップで撮影。電車内や海水浴場など東京五輪前年で盛り上がる街と白装束で募金活動する姿の対比を映し出す。最後は「日本人よ、私たちはこれでいいのだろうか」というナレーションで締めくくっている。
(朝日新聞デジタルより)
【感想レビュー】
今回、このDVD化もされていない幻の作品が観れたのは、“NNNドキュメント'14”という番組のおかげです。映画ではなく、当時放映されていた日本テレビのノンフィクション劇場という番組の作品です。このブログは、映画ブログなのですが、この衝撃を残したいと思い、メモする事にしました。
↓↓↓
「反骨のドキュメンタリスト」(日本テレビ系列で13日午前0時50分(12日深夜)、BS日テレで19日午前11時)で放送予定。「忘れられた皇軍」全編のほか、関係者が当時の制作秘話を語る。(江戸川夏樹)(朝日新聞デジタルより)
冒頭、戦後18年が経ち、人々は終戦の日の事を忘れつつある、というようなナレーションが入ります。そこからして深いショックを受けました…。戦後18年目で…‼
カメラは、七三分けに決めた白シャツにネクタイのシャープなサラリーマンや、カールの決まった髪型にオシャレなワンピースやハンドバッグを持った女性を捉えます。
そこに、日本軍に従軍し戦傷を負った在日韓国人の方達が白装束で登場します。
街を行き交う人々の、戸惑いの表情や眉を顰める感じを、カメラは執拗に捉えます。戦争の忌まわしい記憶よりも、高度経済成長に高揚したい空気がそこからは感じられます。
彼らは、日本の為に戦ったのにも関わらず、自分達には戦後の補償も無く不公平だと、日本政府に対して訴えているのです。
国会議事堂前のデモの場面、BGMはアート・ブレイキーの『チュニジアの夜』。これがピッタリとマッチするのも驚きでした。今にも壊れそうに危ういギリギリのジャズ音楽と、身と心に深い戦傷を負った皆さん…。社会的に虐げられてきた境遇が重なるからでしょうか…。
大島渚監督の『カメラは加害者だ』という言葉が忘れられなくなりました。当時のカメラマンは、監督にもっと寄れ、寄りで撮れっ!!と指示されたそうです。
あんなに寄りで撮れたのは、監督がそこに映る皆さんと同じように怒っていたからだと、当時のカメラマンは言います。その怒りとその緊張感は、時を経た今も、痛烈に訴えかけてきます。
国家は、加害者なのだ。
それでは、国民はあの戦争の被害者なのか?
いや、加害者でもあるのだ、と。
尖閣諸島や竹島の問題以降、ふと気付くと、いつの間にかナショナリズムの空気が高まっています。その空気を感じ取った時、私は胃の底がヒンヤリしました。
その時、連日放送されるテレビの情報やコメンテーターの論調が、何か空虚で信用出来ないと思いました。
自分で、調べて考えなければダメだ!その時、確かにそう思ったのです。
こんな時だからこそ、この作品を取り上げた「反骨のドキュメンタリスト」は凄いなぁ!と思いました。
観る事が出来て、本当に良かったです。
【追記】2014.1.14
観て一日が経ち、思った事が溢れてきました。追記として、メモしたいと思います。
ドキュメンタリーが、作意的に作られるのは、当然ある事です。
もっと言えば、ニュースですら、何をどのように放送し、何を放送しないのか、などの取捨選択がされている訳ですから、作意的であると思います。
だからこそ、視聴者は、メディアの賢い見方をしなければならないし、多角的な視点を養わなければならないと思います。
『忘れられた皇軍』は、大島渚監督の意志、考えが、言葉と映像でハッキリと示された上で、皆さんはどう考えますか?と問いかけています。
何となくの事実を並べただけで、貴方ならどう思いますか?というタイプのドキュメンタリーとは、一線を画すのです。
作り手の意志が明確だからこそ、活発な議論になるのでしょうし、享受するだけではなく、作品を観た一人一人が自ら考える作業をするキッカケとなると思うのです。
観て終了するのではなく、観たところから始まる、そういうドキュメンタリー作品は、素晴らしいと思います。
そういう意味において、『忘れられた皇軍』は、衝撃的でした。
ナショナリズムに傾く空気が、現在の日本にある中で、国家や周りに流されない為に、一人一人が判断材料をたくさん持つしかないと思います。大きい事は言えませんが、絶えず興味を持ち、アンテナを張って了見を深めていきたい、そんな風に思っています。
大島渚監督。ドキュメンタリー作品。
【作品概要】
日本テレビの「ノンフィクション劇場」で放送された約30分間の映像だ。日本軍に従軍し戦傷を負いながら、戦後、韓国籍となり社会保障制度からはじかれた元兵士を追う。
戦争で失った両目からこぼれる涙をカメラはアップでとらえる。大島監督は「カメラは加害者」と話し、怒りや悲しみなど、戦傷者が感情をあらわにした瞬間を容赦なくアップで撮影。電車内や海水浴場など東京五輪前年で盛り上がる街と白装束で募金活動する姿の対比を映し出す。最後は「日本人よ、私たちはこれでいいのだろうか」というナレーションで締めくくっている。
(朝日新聞デジタルより)
【感想レビュー】
今回、このDVD化もされていない幻の作品が観れたのは、“NNNドキュメント'14”という番組のおかげです。映画ではなく、当時放映されていた日本テレビのノンフィクション劇場という番組の作品です。このブログは、映画ブログなのですが、この衝撃を残したいと思い、メモする事にしました。
↓↓↓
「反骨のドキュメンタリスト」(日本テレビ系列で13日午前0時50分(12日深夜)、BS日テレで19日午前11時)で放送予定。「忘れられた皇軍」全編のほか、関係者が当時の制作秘話を語る。(江戸川夏樹)(朝日新聞デジタルより)
冒頭、戦後18年が経ち、人々は終戦の日の事を忘れつつある、というようなナレーションが入ります。そこからして深いショックを受けました…。戦後18年目で…‼
カメラは、七三分けに決めた白シャツにネクタイのシャープなサラリーマンや、カールの決まった髪型にオシャレなワンピースやハンドバッグを持った女性を捉えます。
そこに、日本軍に従軍し戦傷を負った在日韓国人の方達が白装束で登場します。
街を行き交う人々の、戸惑いの表情や眉を顰める感じを、カメラは執拗に捉えます。戦争の忌まわしい記憶よりも、高度経済成長に高揚したい空気がそこからは感じられます。
彼らは、日本の為に戦ったのにも関わらず、自分達には戦後の補償も無く不公平だと、日本政府に対して訴えているのです。
国会議事堂前のデモの場面、BGMはアート・ブレイキーの『チュニジアの夜』。これがピッタリとマッチするのも驚きでした。今にも壊れそうに危ういギリギリのジャズ音楽と、身と心に深い戦傷を負った皆さん…。社会的に虐げられてきた境遇が重なるからでしょうか…。
大島渚監督の『カメラは加害者だ』という言葉が忘れられなくなりました。当時のカメラマンは、監督にもっと寄れ、寄りで撮れっ!!と指示されたそうです。
あんなに寄りで撮れたのは、監督がそこに映る皆さんと同じように怒っていたからだと、当時のカメラマンは言います。その怒りとその緊張感は、時を経た今も、痛烈に訴えかけてきます。
国家は、加害者なのだ。
それでは、国民はあの戦争の被害者なのか?
いや、加害者でもあるのだ、と。
尖閣諸島や竹島の問題以降、ふと気付くと、いつの間にかナショナリズムの空気が高まっています。その空気を感じ取った時、私は胃の底がヒンヤリしました。
その時、連日放送されるテレビの情報やコメンテーターの論調が、何か空虚で信用出来ないと思いました。
自分で、調べて考えなければダメだ!その時、確かにそう思ったのです。
こんな時だからこそ、この作品を取り上げた「反骨のドキュメンタリスト」は凄いなぁ!と思いました。
観る事が出来て、本当に良かったです。
【追記】2014.1.14
観て一日が経ち、思った事が溢れてきました。追記として、メモしたいと思います。
ドキュメンタリーが、作意的に作られるのは、当然ある事です。
もっと言えば、ニュースですら、何をどのように放送し、何を放送しないのか、などの取捨選択がされている訳ですから、作意的であると思います。
だからこそ、視聴者は、メディアの賢い見方をしなければならないし、多角的な視点を養わなければならないと思います。
『忘れられた皇軍』は、大島渚監督の意志、考えが、言葉と映像でハッキリと示された上で、皆さんはどう考えますか?と問いかけています。
何となくの事実を並べただけで、貴方ならどう思いますか?というタイプのドキュメンタリーとは、一線を画すのです。
作り手の意志が明確だからこそ、活発な議論になるのでしょうし、享受するだけではなく、作品を観た一人一人が自ら考える作業をするキッカケとなると思うのです。
観て終了するのではなく、観たところから始まる、そういうドキュメンタリー作品は、素晴らしいと思います。
そういう意味において、『忘れられた皇軍』は、衝撃的でした。
ナショナリズムに傾く空気が、現在の日本にある中で、国家や周りに流されない為に、一人一人が判断材料をたくさん持つしかないと思います。大きい事は言えませんが、絶えず興味を持ち、アンテナを張って了見を深めていきたい、そんな風に思っています。
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