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ジャン・アレチボルトの冒険

ジャンルを問わず、思いついたことを、書いてみます。

機内検疫は過剰対応

2009-05-05 08:52:53 | Weblog
「インフルエンザA(H1N1)」の確認された感染者は、アメリカで245人になり、全世界では19ヶ国、千人以上に達した。

折しも、日本では、ゴールデンウィークが後半に入り、帰国ラッシュを迎えつつある。

新型インフルを「水際」で食い止めるべく、成田などの主要空港では、メキシコ・アメリカ本土・カナダからの到着便に、検疫官が乗り込み、乗客一人一人に対して、検温・問診などの機内検疫を実施している。

だが、一日4万人以上の帰国者である。

検疫官の数が足りず、臨時増員したものの、それでも、働きづめの状態で、乗客は1時間近く機内に留め置かれるらしい。

しかし、この機内検疫、現時点での各国感染状況を考えると、費用対効果を無視した、超過剰な対応と言わざるを得ない。

とくにアメリカ本土・カナダからの便については、間違いなく、税金の無駄遣いだ。

というのも、ほとんど空振りに終わるからである。

アメリカの感染者数は、現在のところ、数百人。人口比で見ると、100万人に1人の割合だ。5万人収容の野球スタジアムでも、感染者には、まず出会わない。

そして、一週間程度短期滞在の日本人旅行者が、これらの感染者に接触して、しかも、感染する確率は、さらに小さくなる。

その確率を1000万分の1とすれば、ゴールデンウィークのアメリカ本土への旅行者3万2千人の中で、運悪く、感染して帰ってくる人の数は0.0032人。ほぼゼロと言っていい。

また、カナダでは感染者の人口比は35万分の1程度。旅行者の感染確率を、350万分の1とすれば、日本人旅行者5000人の中での感染者数期待値は0.0014人。低すぎて話にならない。

つまり、検疫官が、アメリカ本土あるいはカナダからの便内で、感染者に遭遇する可能性は、限りなくゼロに近い。

もちろん、旅行者の滞在地域や行動パターンによっては、感染者が現れないとは、断言出来ない。しかし、これほど低確率で、まず存在しない感染者を探すために、膨大な税金と、人的労力を投入して、全便の機内検疫を続けるのは、どう考えても馬鹿げている。

一方、メキシコからの便は、どうだろう?

その妥当性を見極めるには、アメリカ人旅行者のデータが参考になる。

米国からメキシコへは、月平均200万人ほどが旅行するそうだが、滞在中に感染したアメリカ人の数は100人ほど。

つまり、旅行者の感染確率は、2万分の1程度である。

ただ、現在のメキシコでは、レストランなど公共施設は、軒並み閉鎖状態にある。旅行者の感染確率は、これよりさらに低いと見積もって良いはずだ。

そこで、感染確率を10万分の1とすると、この連休中、メキシコへの日本人旅行者は1000人もいないだろうから、感染人数の期待値は高々0.01人である。

アメリカの場合よりは、高確率であるが、感染者はまず見つからないという点では同じ。メキシコからの便についても、機内検疫を行う必要性は感じない。

数十万の乗客に大きな不便を掛け、多額の税金を使い、多くの検疫官を長時間酷使して、発見出来る感染者の期待人数が、メキシコ便では0.01人、アメリカ便に至っては0.0032人。

そして、万一、感染者が入国したとしても、せいぜい数人。決して、数十人、数百人という数ではなく、国内での発症後にすぐ手を打てば、感染拡大は十分に防げる範囲だ。

しかも、そのウイルスは弱毒性で、発症しても軽症で済む場合がほとんどである。

症状が出ている乗客が居なくても、全便、とにかく強制的に機内検疫というのは、どう考えても、やり過ぎである。

おそらく強毒性の新型鳥インフルエンザを想定した行動計画の一環なのだろうが、我々が直面している状況は、それとは異なるものだ。

このまま、意味の薄い全便機内検疫を続けて、限られた予算と人的資源を、だらだらと浪費するのは、日本政府に、柔軟な危機管理能力が欠けていることを、世界に見せつけているようなものである。

どうやら、麻生首相や舛添大臣、そして厚労相の官僚は、「実効性を科学的に検討する」という視点を、ほとんど持ってないようだ。


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感染力より重症度

2009-05-01 16:29:45 | Weblog
新型インフルエンザの感染者が、米国で、100人を突破した。世界的な感染拡大の一方で、メキシコを除く地域では、ほとんどが軽症患者であり、過剰な反応を戒める声も多い。

日本では、成田空港に到着したロサンゼルス発の航空機内で、乗客を何時間も待機させて検疫したり、カナダから帰国した高校生を、「感染疑い」で、事実上の隔離状態に置いている。

国内へのウイルス侵入と感染拡大を、何としても阻止しようという決意の表れである。

しかし、これらの措置が、「物々しすぎる」という印象を与えるのは、政府が想定していた「新型ウイルス」が、極めて致死率の高い鳥インフルエンザであり、「感染拡大=社会的パニック」という前提に基づいて、行動計画が作成されているからである。

実際には、今回発生した「H1N1 A」は、「感染=命の危険」というほどではない。

では、この新型インフルエンザは、どのくらいの毒性を持っているのだろうか?

この判定こそが、今後の対策の鍵を握っている。

5月1日付朝日新聞朝刊によると、米国では、現在109人の感染者が確認されていて、その内、1人が亡くなっている。ただ、この死亡例は、メキシコで感染した幼児なので、今のところは、108人感染で死亡ゼロと考えていい。

もし、致死率が1%であれば、この100人程度の感染者と、その背後の、病院に行っていない軽症患者を考えれば、そろそろ死亡例が出てもおかしくない。実際、重症の患者が出ているという情報も、未確認だが、あるようだ。

季節性インフルエンザの致死率は、0.1%以下らしいので、もし数日内に、アメリカで死亡例が出たとすれば、かなり危険なインフルエンザであるという可能性が出てくる。

一方、メキシコでは、感染が確定した死者は12人で、疑いを持たれている死亡例は、200人に迫っている。

しかし、かりに感染による死者が200人であっても、軽症者も含めた、メキシコでの全感染者数が20万人であれば、致死率0.1%で、季節性インフルエンザと大差ない。

メキシコの人口は、日本と同じくらいなので、20万人感染という数字は、決して多いということはない。実際、日本では、季節性インフルに1000万人が感染して、1万人が死亡すると言われている。

もちろん、今から、メキシコでの全感染者数を把握するのは、不可能なので、米国内の感染者数と重症例・死亡例の割合が、重要になってくる。

もし、米国での感染者が500人を越えて、それでも重症例・死亡例が出ないようであれば、比較的軽症で済むウイルスと見ていいかもしれない。

その場合は、日本での対策も、大規模イベントの中止といった、強い措置は必要ないだろう。

だが、重症例・死亡例が、今後頻繁に出てくるようであれば、考えなければならない。

いずれにしても、現時点では、この新型ウイルスが、どの程度危険なのか分からない。

派手な記者会見を打って、「水際」や「隔離」に血眼になるのも結構だが、政府は、海外での症例推移をしっかりと分析するべきだ。それは、地味ではあるが、本当に必要な努力である。

それにしても、舛添厚労相は、夜は寝た方がいいと思うな(笑)。

このウイルスとの闘いは、始まったばかりだ。十分な睡眠を取って、健全な判断力を維持するのが、一番大事である。

一人の患者も確認されていないのに、寝不足でカリカリして、横浜市長と喧嘩しているようでは、先が思いやられる。


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