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ジャン・アレチボルトの冒険

ジャンルを問わず、思いついたことを、書いてみます。

新型インフルより恐いのは

2009-05-12 03:21:22 | Weblog
新型インフルの初めての感染患者は、学校の研修旅行で、カナダへ行った高校生だった。

このニュースを聞いたとき、正直、驚いた。

WHOの「Situation Update」というサイトによると、カナダでは、ここのところ、4日で約100人のペースで、新たな感染者が報告されている。

先進国では、タミフルを使えるから、大抵の場合、4日もあれば病気は治る。従って、100人程度が、現在の確認患者数となる。

実際の感染者が、この十倍だとすれば、1000人。カナダの人口は3千万人なので、3万人に1人の割合で、新型インフルが流行している計算である。

この研修旅行では、カナダの家庭にホームステイしたり、交流相手の高校で授業を受けたりしたそうで、現地の人と接触する機会は、通常の旅行よりは、はるかに多かったのだろう。

しかし、それにしても、3万分の1の確率に当たったのは、運が悪かったという他ない。

事実、日本での感染確認を聞いて、相手高校の父兄らは、驚いているらしい。おそらく、彼らの周りで、新型インフルに感染したという話は、ほとんどなかったのだと思う。

また、世界的に見ても、カナダからの帰国者が感染というのは、あまり聞いたことがない。どこの国でも、大抵は、メキシコからの帰国者であり、アメリカからの人が少数という感じだと思う。

ゴールデンウィーク中の短期海外旅行者のように、現地の人との接触が希薄であれば、感染確率は3万分の1より、さらに低くなる。実際、連休中にアメリカ・カナダに行った旅行者で、感染が確認された人は、一人もいない。これは、前回のブログで計算した通りだった。

従って、日本人旅行者全員を、症状も出ていないのに、機内検疫するのは、これまでも、そして、今後も過剰対応である。今回の発見もそうだったが、機内で高熱を出している人がいる場合だけで十分だ。

実は、感染者がいる可能性が高いのは、アメリカ人の入国者である。

アメリカでの確認感染者数は、どんどん上昇していて、最近では、1600人/4日程度になっている。感染者がこの十倍とすれば、1万6千人で、アメリカの人口を考えると、2万人に1人の割合である。

日本への入国者は、月に8万人程度だそうなので、単純計算で、4人の感染者が含まれていてもおかしくない。

アメリカでの感染拡大が終息しなければ、感染者の入国は、時間の問題である。これは、運悪く感染した大阪の高校生の場合と違って、統計的に自然な現象である。

だが、考えてみれば、毎日毎日、大量の出入国者がある、このグローバル化した日本で、水際作戦にいくら税金をつぎ込んでも、新型インフルの侵入を食い止めるのは、まず不可能である。

いずれは、国内で感染者が出るのは、避けようがない。

むしろ、感染者が出たときに、ヒステリックにならないことが、一番重要なことだ。

感染者を出した高校の校長は、記者に取り囲まれて、「なぜ現地でマスクをさせなかった」などと、つまらない質問をぶつけられて、集中砲火を浴びている。

飛行機に同乗した乗客は、全く症状が出ていないのに、成田のホテルに何日も軟禁されて、周辺を警官がパトロールしている。

感染者や周りの接触者を、まるで悪いことをした人物のように扱っていると、いざ本格的な流行が始まったとき、熱のある人が、病院へ行くのをためらうようになって、感染拡大を助長するおそれがある。

さらに、医療機関の診察拒否が増えて、患者が右往左往している間に、一層感染者を増やす危険もある。

こうなると、社会的パニック状態が出現するかもしれない。新型インフルの流行より、よっぽど恐ろしい事態である。

新型インフルであれ、何であれ、患者は患者であって、犯罪者ではない。

そのことだけは、肝に銘じておきたいものである。


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