新型インフルの感染者数は、昨日も30人以上増えて、200人に迫る勢いである。
兵庫と大阪での流行が、近畿他県そして関東に広がれば、日本の国別感染者数が、現在500人のカナダを抜いて、世界第3位になる事態も絵空事ではなくなってきた。
日本における、今回の感染者急増は、軽症者も含めて、広範かつ迅速に感染の有無をチェック出来る、充実した検査体制の結果、という意見がある。
これは、正しい指摘だと思う。
しかし、一番の問題は、感染者の数ではない。
今になっても、感染ルートが分からないという点である。
アメリカやカナダなど、メキシコと地続きの国を除けば、日本以外の国では、多くの患者について、その感染ルートが判明している。
どこの国へ渡航して一次感染し、帰国後、国内のどこで二次感染が起こり、云々といった具合にである。
しかし、兵庫と大阪での大規模感染については、感染源が一つかどうかも含めて、よく分からない。
なぜ、日本では、分からないのだろう?
現在までの感染者分布を考えると、ゴールデンウィーク中に、最初の感染者が海外から日本に入って、神戸か大阪北部で二次感染を起こした、とするのが自然な見方だ。
そして、その人は、保健所の発熱相談センターに電話することなく、検査を受けることもなく、病気が治ってしまったと思われる。
二次感染は、その海外渡航者もしくは旅行者の周辺で起こるのだから、誰かが、この病気は、新型インフルではないかと考えた可能性は高い。
実際、他の国で感染者が発見されるのは、大抵、この段階である。
もちろん、発見するのは、診察に当たる地元の医師である。渡航歴や症状だけでなく、過去の病歴、友人や家族の症状、地域でのインフル流行状況など、判断材料を豊富に持っているからだ。
だが、日本では、保健所も、地域の病院も、誰も発見出来なかった。
二次感染者が相談センターへ電話しても、「渡航歴なし」の一点で、除外された可能性が高い。そもそも、数分間の電話質問で、判断を下すこと自体に、無理がある。
また、地元の医師は、感染疑い者を診察しないし、診察する場合は、最初から季節性インフルエンザと決めつけている。新型は管轄外という意識だ。
つまり、制度そのものが、初期感染者の発見を妨げている。
こうなると、本人や家族の強い訴えが頼みの綱となる。
しかし、折しも、カナダへ短期留学した高校生と引率の教師が、成田の機内検疫で陽性とされ、50人近い同乗者が、症状も出てないのに、一週間ホテルに閉じこめられて、毎日毎日、抗ウイルス薬を飲まされていた。
連日、気分の滅入る、このニュースが流される中、最初の感染者も、渡航歴のない二次感染者も、そして周囲の人々も、無意識のうちに感染への疑念を排除していき、関西での大規模感染の出発点は、解けない謎になったのかもしれない。
昨日、舛添厚労相は、機内検疫の段階的縮小を発表した。
しかし、アメリカやカナダでは、依然として、インフルAの流行が続いている。
強制的な検温や問診がなくなる以上、体調を崩している乗客には、積極的に名乗り出てもらうことが、有効な「水際」対策になる。
だが、もし陽性となった場合、どういう扱いを受けるのか、世界の旅行者はよく知っている。成田のホテルに缶詰にされた人の中には、アメリカ人も含まれていた。
従って、入国者の協力は期待出来ない。また、発熱した人も、重症でなければ、センターに電話したがらない。そして、地元の病院は患者を診察しない。
このままでは、かりに関西での流行が落ち着いても、今後も、ルート不明の大規模感染が、各地で発生する可能性は、高いと言わざるを得ない。
全便の機内検疫、感染者の強制入院、濃厚接触者の強制隔離、発熱外来への一本化、一般病院からの感染者排除。
政府の非科学的な過剰対応が、新型インフルへの恐怖感を煽り立て、感染者を排除する空気を作り出し、却って、感染拡大の初期抑制を難しくしている。
こういった非現実的な施策の背後に、病人を管理すべき対象としか見ない、高圧的な医療行政思想が見え隠れしている。
ハンセン氏病患者への無意味な隔離政策と同じ発想である。
日本が世界最大のインフルA流行国になりつつあるのは、決して偶然ではなく、医療行政が脈々と受け継いできた、この時代遅れの思想を、今の厚労省が、捨て去っていないからではないか。
だとすれば、それは、新型インフル以上に、克服するべき問題である。
WHOが今注視しているのは、感染者数以上に、日本政府の能力かもしれない。
SARSの流行で判明したように、前近代的医療行政システムがはびこる、政治的後進国での伝染病大規模発生は、そのまま人類への脅威、すなわち、フェーズ6となるからだ。
兵庫と大阪での流行が、近畿他県そして関東に広がれば、日本の国別感染者数が、現在500人のカナダを抜いて、世界第3位になる事態も絵空事ではなくなってきた。
日本における、今回の感染者急増は、軽症者も含めて、広範かつ迅速に感染の有無をチェック出来る、充実した検査体制の結果、という意見がある。
これは、正しい指摘だと思う。
しかし、一番の問題は、感染者の数ではない。
今になっても、感染ルートが分からないという点である。
アメリカやカナダなど、メキシコと地続きの国を除けば、日本以外の国では、多くの患者について、その感染ルートが判明している。
どこの国へ渡航して一次感染し、帰国後、国内のどこで二次感染が起こり、云々といった具合にである。
しかし、兵庫と大阪での大規模感染については、感染源が一つかどうかも含めて、よく分からない。
なぜ、日本では、分からないのだろう?
現在までの感染者分布を考えると、ゴールデンウィーク中に、最初の感染者が海外から日本に入って、神戸か大阪北部で二次感染を起こした、とするのが自然な見方だ。
そして、その人は、保健所の発熱相談センターに電話することなく、検査を受けることもなく、病気が治ってしまったと思われる。
二次感染は、その海外渡航者もしくは旅行者の周辺で起こるのだから、誰かが、この病気は、新型インフルではないかと考えた可能性は高い。
実際、他の国で感染者が発見されるのは、大抵、この段階である。
もちろん、発見するのは、診察に当たる地元の医師である。渡航歴や症状だけでなく、過去の病歴、友人や家族の症状、地域でのインフル流行状況など、判断材料を豊富に持っているからだ。
だが、日本では、保健所も、地域の病院も、誰も発見出来なかった。
二次感染者が相談センターへ電話しても、「渡航歴なし」の一点で、除外された可能性が高い。そもそも、数分間の電話質問で、判断を下すこと自体に、無理がある。
また、地元の医師は、感染疑い者を診察しないし、診察する場合は、最初から季節性インフルエンザと決めつけている。新型は管轄外という意識だ。
つまり、制度そのものが、初期感染者の発見を妨げている。
こうなると、本人や家族の強い訴えが頼みの綱となる。
しかし、折しも、カナダへ短期留学した高校生と引率の教師が、成田の機内検疫で陽性とされ、50人近い同乗者が、症状も出てないのに、一週間ホテルに閉じこめられて、毎日毎日、抗ウイルス薬を飲まされていた。
連日、気分の滅入る、このニュースが流される中、最初の感染者も、渡航歴のない二次感染者も、そして周囲の人々も、無意識のうちに感染への疑念を排除していき、関西での大規模感染の出発点は、解けない謎になったのかもしれない。
昨日、舛添厚労相は、機内検疫の段階的縮小を発表した。
しかし、アメリカやカナダでは、依然として、インフルAの流行が続いている。
強制的な検温や問診がなくなる以上、体調を崩している乗客には、積極的に名乗り出てもらうことが、有効な「水際」対策になる。
だが、もし陽性となった場合、どういう扱いを受けるのか、世界の旅行者はよく知っている。成田のホテルに缶詰にされた人の中には、アメリカ人も含まれていた。
従って、入国者の協力は期待出来ない。また、発熱した人も、重症でなければ、センターに電話したがらない。そして、地元の病院は患者を診察しない。
このままでは、かりに関西での流行が落ち着いても、今後も、ルート不明の大規模感染が、各地で発生する可能性は、高いと言わざるを得ない。
全便の機内検疫、感染者の強制入院、濃厚接触者の強制隔離、発熱外来への一本化、一般病院からの感染者排除。
政府の非科学的な過剰対応が、新型インフルへの恐怖感を煽り立て、感染者を排除する空気を作り出し、却って、感染拡大の初期抑制を難しくしている。
こういった非現実的な施策の背後に、病人を管理すべき対象としか見ない、高圧的な医療行政思想が見え隠れしている。
ハンセン氏病患者への無意味な隔離政策と同じ発想である。
日本が世界最大のインフルA流行国になりつつあるのは、決して偶然ではなく、医療行政が脈々と受け継いできた、この時代遅れの思想を、今の厚労省が、捨て去っていないからではないか。
だとすれば、それは、新型インフル以上に、克服するべき問題である。
WHOが今注視しているのは、感染者数以上に、日本政府の能力かもしれない。
SARSの流行で判明したように、前近代的医療行政システムがはびこる、政治的後進国での伝染病大規模発生は、そのまま人類への脅威、すなわち、フェーズ6となるからだ。