KADOMIUMTANK ソフビブログ

ヘミングウェイの詩にこんなのがある。
「人生は素晴らしい 戦う価値がある」
後の方は賛成だ byモーガン・フリーマン

ソラノヲト・タケミカヅチ

2010年03月24日 | コミック・アニメーション


「誰かが、セカイはもう終わりだと言っていました。
でも私たちは楽しく暮らしています。
第1121号要塞…この、時告げの砦で…」。



つーわけでソフビ以外の記事もたまには。
「メカ列伝」。
アニメとかロボ系なら通常のソフビ同様に
守備範囲が近い人も居るかと思います。
2日前に終了したアニメノチカラ・「ソラノヲト」。
セカイに10機残ってない、ドックにあるだけで動かない
多脚砲座「タケミカヅチ」がついに
戦場の上空を飛んだのを君は目撃したか!








これ、12話完結なんで動かないメカの起動まで
描けるのかな~と半信半疑だったのだけど
さすが良い意味でマニアあがりの吉野弘幸(脚本)、そこは心得ている。
「紅い眼鏡」のプロテクトギア(一作目)みたいに
「そこに在ることで主人公たちの精神の象徴たる存在」として
決して動かないものと思っていたら9話で台風の中、三角州に取り残された
クレハたちを救う命綱を撃ち込む砲台として機能。そして10話では
いつの間にか脚まで付いた本来あるべき状態となって
最終回の戦争を仕掛けようとするヘルベチアの急進派率いる
多脚砲座たちとの戦いでは砲門が吼え、巨大なアンカー状の脚で
ガンガンドツキ合うガチンコバトルに加え
ホバリング?機能でガシガシ戦場のど真ん中にとんでっちゃうし。

マクロスフロンティアの最終回もそれまでの構成のグダグダが吹っ切れるように
「愛は流れる」越えを目指しゴーストV9まで登場した
超ハイスピード大ドッグファイト&マクロスアタック大会を展開。
それまで「ああ、だめだあ~」とかリアルタイムで
見てたお客(タコ含む)を黙らせたんですが、
本作もお客の「最終局面でこれやるよな?」をきっちり見せたのは好評価。

1月の放送開始以来、
お客の大方の見方は「なんだか色々過去に見たようなものを貼り付けてるけど
ナウシカなんだか、けいおん!なんだかはっきりしろ~」でしたね。

結局昨年のけいおんブームの後に
間髪入れず、「なんとなくそれに見えるアニメ」を送り込んで
きたところにお客が過敏すぎる反応とヒット作品へのブランド信仰から
「いや、そこまでおのぼりじゃねえよオレたち。
元ネタのほうのアニメの消費するのにいそがしいし」と
大方の人々がナチュラルに拒絶していたような感じがあります。
(けいおん!はこの春から第2シーズンがスタートしますしね)
あたかも、パチ怪獣のソフビがおもちゃ屋の軒先に吊ってあって
おばあちゃんが「これ欲しい?」とマゴに聞いたら
マゴがワクワクモードから瞬時に素に返り
「それじゃないの!」つってる感じ。





一兵卒の少女たちがラッパの訓練してたり、
本部からの年に一回の通話確認の電話番で
ひたすら受話器の前に居ておしっこ漏らしそうになったりとか
何も起きない村の警備をし続ける淡々とした物語。

作り手の商魂むき出しな身もふたもないパチモン好きのタコ的には
「ここまでけいおん的なムーブメントに乗ってあざとく搾取をもくろむなどと
パチとしていい根性してんな」と知人が一人二人と視聴を止めていく中
生暖かく見守っていたんですが。

主需要層の昭和世代のお客がどんどん高齢化していく
怪獣市場と違い、企画に美少女を
主人公にするという前提で、下の世代の可処分所得ゲットだぜ!と
まだどうにかもっているのが
アニメ業界の現状。しかしフックとなるキーワードというか
対象が、怪獣でない美少女に代わっただけで
特撮同様に決して潤沢な予算で回っている分野とも思えない。
アニメはDVDが5000本売れればペイとか、よく聞くと思います。
また製作サイドにとっても中間搾取が苛烈で
現場にお金が廻ってきにくい(らしい)市場であるという話。

元々アニメの市場は昨年ヒットしたアニメが一本でると
ほとんどその作品とキャラクター配置か色設定の同じアニメが
翌年のラインナップにはごろごろしている、パチの精神にあふれる
商魂たくましいセカイ。その玉石混交の中から
自分が見て波長が合ったりつくり手の電波の出力の高い
鉱脈を自由な解釈で各人が楽しくサルベージするのが
お客目線としては面白い市場なのかもしれません。
ある意味、過去のアニメは評価も定まっていない
膨大な遺跡のようなものなのかも。

「ソラノヲト」は友人のミリタリーオタのひととか怒ってたなあ
「設定といい話といい中途半端だ!」と。ところが
ただゆるゆると楽器弾いたり、只の軍服少女たちの
日常のドタバタ成長物語ではなかったのがわかったのが7話。
それまでのストーリーと趣を異にして
作品内で描かれる世界が一度「戦争により破壊されすぎて
再生するにはもう終わってる」こと、人類の未来・文明はどんどん先細っていることが
廃墟に転がる死霊のような兵士に告げられ、番組の空気は一変。





7話で登場したのがタケミカヅチの前世代機
らしい多脚砲座「アラクネー」と謎の生物「天使」(これについては後記)の
夕焼けの市街地で繰り広げられる壮絶なアルマゲドン風景。
人類滅亡の宵闇が迫る。ここまでの回でロボットシーン的には
諦め半分だったメカファンも、ほんの数ショットだったけど
「まだ何かやってくれるカモ?」と思えた、気合の入った
CG映像で多脚砲座の小隊がブンブン動くシーン。


やっと設定資料が出周り始めた。
コミック電撃大王付録のソラノヲトノートより
(本誌しか要らないつって友人がくれた、サンクス)
7話で描かれた、初年兵のラッパ卒のサポートとして
多脚砲座に載っていた頃のフィリシアの設定画。







目の前で敵機撃墜のラッパを吹いていた同僚が機体に潰されたのを見て、
憔悴しながら戦場をさまようシーン、
死霊となったミイラの兵士にセカイの終わりを告げられる
場面、そして現在、果物を剥いている時に手をナイフで傷つけた
時に悪夢のような戦場の記憶がフラッシュバックするシーンが
この番組当初からのほのぼのテイストの中にいきなり
カットインされてくるのは強烈。



フィリシア「セカイが終わるなんて!そんなこと言わないでください。
私生きてます!生きていたいです」



上はタケミカヅチのレストアをする天才エンジニア・ノエルとタケミカヅチ
の設定画(脚のない状態)。「けいおんで、綾波なんですよ!」
とプレゼンしているスタッフの声が聞こえてきそうな(幻聴)デザインのノエル。
性格設定も、いかにも綾波風味の無口な壁の花系キャラ。
1121部隊のタケミカヅチはこの設定画の
自走できない砲台状態のままで物語の大半を過ごす。

「その威力は歴史に名を刻むほど」と書いてあるが
作画スタッフもその機動力を映像で見せなくてはならず
その最終回の動きは、ムキになってるのか?と思うくらい
アシダカグモのようにとにかく敏捷に動いてた。




7話で精霊流しをする一同(皆、戦争で
誰かを失っていることがわかる)の中で
ノエルだけが流し船をしなかったのは
最終回で判明する(彼女は流し船がいくつあっても
とても流し切れないのだった)
こうして見ると番組自体、結構伏線も途中で
適度に張っており、最終回で閉じている。
良質なパチといえるのではないか。






上はローマ軍側の多脚砲座。下はかつてヘルベチア側の
「見えない死神」を起動した
戦争の仕掛け人ともいえるホッピー大佐の部隊機。
この作品に登場する多脚砲座は電装部品を搭載したハイテク機のようだが、
近接機同士の連絡は兵士のラッパにて行う。このへんの
ギャップは設定があるのか演出的に狙ったか?




最終回「蒼穹ニ響ケ」。
耳の利くカナタが歩哨に立った時に
「休戦の合図」が聞こえるがすでにローマと
ヘルベチア共和国は開戦寸前。「人類は戦争により進歩する」と
新たな戦争を起こしたい軍人たちの思惑がからみ
セーズの町に迷い込んだローマ兵の少女が撃たれる。
軍靴の響き、味方から銃を向けられ
監視下に置かれる1121城砦メンバー。
休戦を前線で伝える=戦争を止めるるために
睨み合う両軍の多脚砲座群の中に割って入る、
弾痕にまみれ機章も判別しにくいほど傷ついたタケミカヅチ。
カナタのラッパから流れる「アメージング・グレイス」が、
両軍の兵隊たちが向き合い一触即発の戦場に高らかに鳴り響く。




ヘルベチアの皇女としての身分に戻り、ローマ教皇との休戦を取り付け
タケミカヅチを救いにやってきたリオの乗る
赤い機体の多脚砲座。(クシャナっぽいなあ)

友人と話していて「なんだか劇中で描かれる、この先細ったセカイってのは
シュリンク基調なアニメ業界への風刺みたいにも見えるな」
という話で意見が一致した。昨年旧ブログでコミケルポを
した時も書いたのだけど、来年からアニメは番組数が半分になる、と。
ソラノヲトはその最前線に送り込まれたコンテンツ。
過去作品のパッチワーク、ヒット作のテイスト踏襲など
前線でそれらの十字架を背負いつつ作られた、そしてゆえに
同時代の空気をしっかり吸い込んだスタッフが作った
ライブ感のドラマとしても楽しめるのではないか、と。

ところで初期話と11話でクジラみたいな化石、最終回で
その存在が明確に示唆された「天使」ってのが居るんですが、
(セカイの全てを3日で破壊した巨神兵みたいなの、らしい。
途中まで「あいつら」とか複数呼称でしか呼ばれず
結局、終盤明確に存在が浮上する。人為的に作られたのかどうか不明)

ああ、「ソラノヲト」も「レールガン」みたいに
隠れ怪獣モノなんだな。
神の鉄槌みたいな生物なのでセカイを滅ぼした
相当に邪悪で鬼畜でインモラルで忌まわしい存在で、
天使の名のもとにとにかくすさまじいんだろうな。
妄想好きのタコもどんな姿か脳の演算処理がもはや
追いつかないよ。終盤にこんな設定出すなよ~ 怪獣好きとしては
気になってしょうがないだろ。戦争の恐ろしさをイメージした
幻想みたいなものと思ったけど、設定として劇中にきちんと居る存在らしい。
(ただ、この記事を書いた後、聞くところによると
番組の製作時点で設定画とかなさそうな気配だ)



それから天使とは別に居る、究極の生物兵器らしい「見えない死神」。
ノエルが幼い頃にホッピー少佐にそそのかされて
つくっちゃった邪悪な何か。
その威力はノエルが上官に自分がヘルベチアの魔女=
生成に関わった存在であることを仲間の前であかされて、
良心の呵責でヒキツケ起こして一瞬で心が壊れたくらい
(どうもパンデミック系の生物兵器みたいな存在らしいですが)



天使は、見返したら、ほんの3秒程度で
7話の市街戦において廃墟と化したビルの窓に
鳥が羽ばたくような効果音と共に
巨大な黒い羽根のようなものが映りこむ。直後に閃光とともに街と
ヘルベチアの多脚砲座群を地平線まで一瞬で焼き払い、
まがまがしいチカラをアピール。
爆発のタイミングがナウシカの時、庵野くんが作画した
例の巨神兵の口から波動砲のショットまんまなんですけど(わらい)。
その姿はホムンクルスか天使系?

タケミカヅチだけでも「動くの?動かないの?」と
気を持たされ映像としてなんとかケリをつけてくれたが
そんな不在のキャラや設定をさらに出されても~。
「そんなの卑怯よ!」(ウルトラマンネクサスのダダ副隊長風)責任持って
続編かOVAでもあるのならちゃんと描けよな!、と
ここはツンで締めときます。

映像化されてない本家ナウシカ原作版の
巨神兵の復活後(7巻あたり)をうまく本作でパチったら
あれだ、カナタのラッパに天使が同調してとか、そんなの見てえなあ。蛇足か。
ソフビのセカイを見てても思うのだけど、
「パチでしか作れないもの」もありますものな。


3話でリオがカナタに始めて機体から
アメイジング・グレースを聴かせたシーン。
まだジャンクの状態。






9話で台風の下でセーズの街の住民たちに引っ張られて
砦の上に立ち、人命救助に活躍したタケミカヅチ。
ノエルが操縦、フィリシアが砲台に立った。



10話冒頭のレストアがほぼ完了した状態の
タケミカヅチ。クレハとカナタが手伝っている。
本来あるカタチになって感情を表に出さないノエルもうれしそう。






12話の1121小隊出撃シーン。「炎の乙女たちの伝説」通り、
傷ついた死神になぞらえたローマ兵の娘を載せ、
一触即発状態でローマとヘルベチアが睨み合う荒野へと赴く。
フィリシアの「行くわよ、わたしのあなたたち!」は7話の
回想シーンでフィリシアの上官が部下のフィリシアたちに
出撃時、かけた台詞そのままだったりする。
クレハが砲手、カナタがラッパ兵。
過去の呪縛を解き放ったフィリシア、
そしてノエルもレストアが完了したタケミカヅチを操って、
己の過ちを断ち切る=戦争を止めに赴く。きりっとした表情で
主役メカを操縦してるとノエルが主人公に見えるな。



一人も死なさずに戦争を回避させた1121小隊。

タケミカヅチですが、それを模したパチとかでなく版権品の
ソフビが欲しいなー。奇特な、マイナーメカ系に強いメーカー様で
どこかがソフビ化してほしいっす。夏のワンフェスあたりどうです?
痛戦車VER.とかキャラクターのステッカーつけて売ればばっちり。
でも設定どおり、セカイに10機限定販売とか
わけわかんない「大人の事情」ってヤツをかぶせて売るのはカンベンね(笑)。

つ【ソラノヲト 2~11話予告】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm9969361

つ【Anthem / Cryin' Heart】
日本のハードロックバンド・アンセムの4作目に収録。
ジプシーという異色のコンセプトで練られた
スピードナンバーが情感多彩で、今も色あせない。
http://www.youtube.com/watch?v=iGnbavYLsbU&feature=related

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2 コメント

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Unknown (メガたぬき)
2010-03-24 21:40:39
ソラノオトは、
こちらでは今週の金曜日で、
最終回を迎えるのですが、
ザッと振り返ってみても、
悲しいかな、思い出せる回が
少なかったりします(笑)
印象に残っているのが、
タケミカヅチの部品を探しに行く回で、
カナタの音感で部品を
探し当てるお話だったような。
前世紀といっても、あんなスゴい戦車
が倉庫にあるんだから、通信機器もそんな感じかと思えば、黒電話だったり。
そういう、アナログな感じが良いです。
けいおん!を見てない自分としては、
ここまで模した絵でも結構新鮮でしたね。
コミック・ライトノベル原作を
アニメ化という流れが主な中で、
アニメ原作が見れるだけでもありがたい
と思ったりしてます(笑)

チビラくんの実は子役の女の子
を主人公にするお話等、
そういう番組だったの~と
ビックリしました。
チビラくんのキャラクターたちは、動いている映像を見たことがなくても、
不思議とイメージが広がっていく
造型をしていますね。
今日、フィギュア王を
チラッと見てみましたが、
ぶたのはなさんの新作は
モングラーが予定されいるようで、
毎度のことながらリリースが楽しみですね。
そして、マーミットさんからは
あの超獣ゼミストラーが発売とのことです。
Unknown (タコペッティ)
2010-03-24 22:05:04
>金曜日
ああ~まだ最終回のオンエアが先の地域が
あったんだあ。この記事はフライングだわ。
ネタバレどころじゃないなこりゃ。ゴメンナサイ。
真面目にラストはタケミカヅチが動くから、
あまり番組自体、印象に残ってないという
メガたぬさんも女神の飛翔が見れますよ、
きっと。

傑作っていうんじゃないですね。
思ったんですが、これでたぶん
作り手はいっぱいいっぱい
青息吐息なんですよ。でも正直に今の気分で
作ってあるのがとても好感持てたというか。
やはり7話の精霊流しの回が初めて
キャラクターたちの息吹を感じられた
みたいに思えて忘れられないです。
セカイが終わる=お客が大量に作られてる
アニメの一本として印象に残らず通過する
のをせき止めた感じがしましたから。

ラッパとか黒電話とか、ところどころ
アナログで、タケミカヅチの内装のように
先端の電算系メカが片やあるあたりが
意外や現代のわれわれのくらしのようで
面白いですね。あとヨーロッパの山岳地帯
のような場所になぜか精霊流しとか
日本の風習が伝承されてる辺りとか。
空白をわざと作ってるってスタッフの人が
インタビューで答えてましたが。

そう、鋭いですね。
ライトノベル発祥でなくて
アニメオリジナルなんですよこれ。
オリジナル怪獣ソフビみたいなもんですね。
そんなところも応援したくなりますよ。

>チビラくん
モングラー、原型をイベントで見せて
もらったんですけどカワイイですよ。
ゼミストラーは一回原型が発表されて
停まってたみたいですね。楽しみ。
超獣はほかにもマザリュースとか
進行中みたいです。
メガたぬさんも前に自作してたスチール星人も
出ないかな~。

>子役
この話を聞くと、チビラくんて本来
あるべきカタチではなかったんだな、とちょっと
複雑な気持ちになりますね。
当時モノのソフビも高価になってるけど
別に人気があるというわけでもない。
フラットな立ち位置のメーカーさんである
ぶたのはなさんに作られたことで
やっとおもちゃとしてそういう
ストーリーの異質さや周辺のグッズ等に
まつわるプレミアのバイアスから
開放された一面があるように思います。

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