さすらいビトの荒野・中野棄境。。。
逢魔が刻の中野、建物が消えては建ち、建っては所有者が変更されて
存在の帰属が常に書き換えられる、解体と再生とがめまぐるしく行われ
姿を変える町。
いつか見た風景を消滅する前に忘れないよう網膜に焼き付けて
記憶しておかなくてはならない。
手描きの海賊船団が描かれた飲み屋ストリートのカンバン。
何か絵の内容に由来はあるのだろうか。
下の3時を指した時計やケーキとの関連は描いた本人以外には不明なあたりが
下町の自由気ままさをそのまま表現しているかのようだ。
再々開発で消えゆく通り。消えゆく大蜘蛛タランテラの根城。
タランテラも既にこの地を後にしているようだ。
ヒトビトは自分だけの隠れ家,シェルターを求めて爆心地のような場所を漂う。
あたかも自分の夜のあいだ、つかのまの帰属を搜し求めるかのように。
何処から届いた郵送物が地図にない家の紅いポストを満たす。
しかしすでに主は居らず、灯りが灯されることはなく、
家もただ生命力を失ったいきものののように解体の刻まで沈黙している。
中野無常。
解体が終わった更地の真ん中に踏みとどまっている錆に覆われ朽ち果てた家。
元はここも商店だったのだろうか。
再々開発で囲みの塀ができた、なんとも潤いのない通り。
長い通路をまっすぐ歩いて行ってももはや店を選択する余地がなく、
果てにぽつんと立っている一軒の店?に入るしかない。
純粋飲食街、これは定義するなら一種の路上観察物件、トマソンと呼んでいいだろう。
「私は猫ストーカー」という映画があったが、上の純粋飲食ストリートに
佇んでいた猫を追けてみた。
彼の寝床はどうやらここらしい。昔飼っていた猫に、猫の会議が
深夜に行われるか人間は決して覗いたりしてはいけない、と教えられたのを思い出した。
夕刻になるとサブカル系の若者グループがよく吸い込まれていく雑居ビル。
最近アニメカラオケのお店ができて盛況らしい。
古い歓楽ビルも若者向けのコンテンツが入るとにわかに建物全体が活気を帯びるものだ。
この町は雑多なカルチャーが流入しているがゆえ、
昼間から初音ミクの金属的な歌声が流れてくるアニメカラオケと
昭和スタイルの営業である、八代亜紀そっくりのママが居る店も
時には客を取り合うことになる。
さらに中野監督の怪獣が接客する店、大怪獣サロンや
アキバ大手チェーンからの中野エリア前線基地となるメイド喫茶なども
この戦線に加わる、ここは夜の社交の激戦区。
少し前にはジオン軍御用達のコスプレ喫茶もあった。
レコードコレクターの修羅場が見れる場所。ここはソフビではない
もうひとつのVINYL JUNKIEたちの戦場。
昭和的な金物屋の軒先。モルタルの灰色の背景にポリ容器の発色が美しい風景。
中野ブロードウェイの脇の道路で写真を撮っていたら、
路上観察系なのだろう、フットワークの軽そうな元気のいいアンチャンに
「本当に楽しそうに撮ってますね!」と感心された。
彼が「せっかくだからちょっとうんちくたれますよ!」と教えて
くれたところによると、このあたりは
戦後すぐは連れ込み宿が多かったらしい。たしかにそんな色使いの淫靡な
佇まいでヒトの目を引き寄せる、二階建て洋風建築の店が多い。
建物の造りがトタテグモの巣の入口のように近づく虫たちをほのかに誘い込む、
建物としてのフェロモンのようなもの、独特の媚態を放っているのだ。
横浜の有名な黄金町の通りと同じで、下で飲み、
上に客を連れ込んでいたすようなシステムの店が昔は多かった、
その名残りなのだろう。
白昼堂々、緊縛されたアダルトショップの看板。
この町の逢魔が刻に、通りに出されるガチャポンは大人にしか見えない!
1年の厄災=鬼を除けるべく、恵方巻を嗜む季節になりました。
魔境に相応しく、中野ブロードウェイ2階で「ベルセルク」劇場版公開記念
イベント開催中。