人生にロマンスとミステリを

小説を読むのも書くのも大好きな実務翻訳者です。ミステリと恋愛小説が特に好き。仕事のこと、日々のことを綴ります。

似鳥鶏『叙述トリック短編集』

2024-04-15 21:51:21 | 読書記録(紙書籍のみ)
似鳥鶏著『叙述トリック短編集』

もぉぉおおおおおおううううう! ぐやじい! 騙された! ずるい! やられた!

そんな感じです。字面でさっと読んじゃう癖が悪い方に作用しました。
叙述トリックってちょっとした引っかかりや、違和感と言えないほどの小さな
何かがヒントになるんやんね。ん?と思ったのに、見事に引っかかってしまった。
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呉勝浩『道徳の時間』

2024-02-19 15:54:41 | 読書記録(紙書籍のみ)
呉勝浩著『道徳の時間』

第61回江戸川乱歩賞受賞作、ということを解説で知った。

失意のどん底のビデオジャーナリスト、伏見が妻と長男のいる関西のT県鳴川町に戻って来た。
仕事をする気になれず、無為に過ごしていると、友人から、かつて町で起きた殺人事件
(向晴人という苦労人大学生が、小学生と保護者含む300人の目撃者の前で恩師を刺殺)の
ドキュメンタリー映画のカメラの仕事を紹介される。監督は訳ありっぽいクールすぎる美女・越智。

一方、町では連続イタズラ事件(イタズラと同時に「〇〇の時間を始めます」と
書かれた張り紙が残される)が起きているなか、かつての著名陶芸家が死亡。現場には、
『道徳の時間を始めます。殺したのはだれ?』という落書きが。陶芸家は自殺と
思われたが、落書きのせいでイタズラ事件との関連が疑われる。

越智の正体については想像できたけど、なんというか過去の殺人の動機が怖い。
晴人と晴人の妹・美幸の両親がクズ過ぎる。誰か何とか手を差し伸べてあげられなかったのか。
いくら閉鎖的な町なのだとしても悲しすぎる。

でも、いろいろ考えさせられる。未来に絶望しかないとわかった者の目とか、
カメラを向けることで人を殴っているとか。

いろいろと重いセリフがあった。でも、イタズラ事件の子どもたちは、殺人事件の
子どもたちとは違ったことが少しの救いなのかもしれない。先に読んだ『爆弾』
は釈然としない感じが残ったけど、こっちは胸に重いものが残る。
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呉勝浩『爆弾』

2024-02-01 17:58:35 | 読書記録(紙書籍のみ)
呉勝浩著『爆弾』

1ページ開いたら終わりです。おもしろすぎてページをめくる手が止められなくなります。
がっつり寝不足になりました(笑)。

お酒を買いに来たのにお金がなくて腹が立ち、自販機を蹴って店主を殴ったとして、
中年男が野方署に連行された。示談金(?)を払って終わり、の事件に思われたけど、
スズキタゴサクと名乗ったその男は、取り調べの最中に「10時に秋葉原で爆発がある」と予言する。
直後、秋葉原の廃ビルで爆発が。スズキタゴサクはそれからも爆発を予言(予告)するが、
それがなんだか質の悪いクイズのようななぞなぞのような。

最初は誰も死ななくて、あまり警戒せずに読んでいたら、次の東京ドームの近くでの爆発では
人が死んでしまった。一気につらく悲しくなって、それまではとぼけた男だな、くらいの
認識しかなかったのに、残酷な事件を起こしながらも、とぼけているのがすごく許せなくなる。

あれこれ伏線があって、気になって次々ページをめくってしまうけど、
スズキタゴサクは最後までスズキタゴサク。本名も、いったいどういう人間で、どうしてそんなことを
するようになったのかも、わからないまま。

そして、最後の1文が恐ろしい。
「最後の爆弾は見つかっていない。(P425)」
世の中には理不尽も不条理もある。それはわかる。でも、そういう怖さを認識して生きていくのはしんどすぎるから。
私は最後の爆弾のことを忘れて生きたい、と思う。
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S・J・ベネット『エリザベス女王の事件簿 ウィンザー城の殺人』

2024-01-24 20:03:40 | 読書記録(紙書籍のみ)
S・J・ベネット著、芹澤恵翻訳『エリザベス女王の事件簿 ウィンザー城の殺人』

SNSで見かけて気になって購入してから、ずっと積読だったんです。
だって、帯に「容疑者は50名」って書いてあって、え、私、50人分も
名前覚えられへん……ってなってしまって(笑)。

でも、実際に女王陛下が50人に事情聴取するわけもなく、女王の代わりに
事件を調べる秘書官補が50人に話を聞くわけでもなく……。

ウィンザー城で若いロシア人男性のピアニストが、クロゼットの中で遺体で発見される。
自殺に見せかけた殺人だとすぐにわかるけど、MI5の「すっとこどっこいのうすらとんちき」
長官が、スリーパー(潜入してから、ひたすら本国からの指示を待っていたスパイ)の
仕業だと言い出し、お城で働いていた人たちをスパイだと疑い始める。

でも、家族みたいな人たちがそんなことをするわけない、ということで、
女王が推理をする……けど、公務がつまってるので、みんなを集めて
「犯人はあなたね!」をするわけではない。

MI5の「うすのろまぬけ」長官が、ふふん俺が解決した、みたいになってるのが
腹立たしいんやけど、そこが他者の領域を守る女王陛下のやり方なのだそう。

とにもかくにも女王が愛すべき、そして愛情あふれた人であることが
伝わってきて、そんなふうに描写されるくらい愛されているんだなぁというのが
感想でした。

表紙イラストが超かわいいです。
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ステフ・ブロードリブ著『殺人は太陽の下で フロリダ・シニア探偵クラブ』

2023-12-04 08:53:30 | 読書記録(紙書籍のみ)
ステフ・ブロードリブ著、安達眞弓訳『殺人は太陽の下で フロリダ・シニア探偵クラブ』

タイトルから、リタイアしたシニアたちが和気あいあいわちゃわちゃしつつ
事件を解決する感じかなぁと思ったら、登場人物それぞれに過去があって、
事件を追いつつ、それぞれの過去と向き合う、というなかなかシリアスな内容。

フロリダにある高齢者向け住宅で第二の人生を新たに歩もうとしている
元刑事たち4人。そのうち3人はイギリス出身。イギリスからアメリカへ
移住、みたいなこともよくあるのかな。わかんないけど。

主人公の1人モイラは58歳、元ロンドン市警潜入捜査官。最後に担当した事件のせいで
パニック障害に悩んでいる。彼女がプールで若い女性の死体を発見した
ことで物語が始まる。現地警察官がムカつくやつ。やる気ないし、主人公たちを
邪険に扱って、読んでてムカムカ。主人公たちも、こんなやつに任せておけんってな
感じで独自に調査を開始。元テムズバレー署科学捜査官のリジーが捜査キットを使って
分析したり、スマホを分解して直したり、とかっこいい。唯一のアメリカ人で
元麻薬捜査官のリックは犯人と対決して撃たれるし、みんな穏やかな第二の人生とは
程遠くなってしまう(笑)。

リジーと夫のフィリップ(元主任警部)がぎくしゃくしたまま終わり、
モイラとリック(妻を亡くした)との間にほんのりしたものが芽生え……
どうなるのかなと思ったら、4作目まで出ているそう。

年齢を感じさせない4人に、そういえば今のお年寄りもみんなお元気だよね、と
思った。
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