宇陀、室生寺。
ごつごつとした石段を昇ってゆくと
うっそうとした木々の間から次々と伽藍が現れる。
いずれも斜面を切り開いた小さな平地に建造されたれたもので、
この山中の寺が修行の場であったことを物語っている。
真偽はともかく、役行者(えんのぎょうじゃ)や空海が創建したとの伝承にも頷けるというものだ。
この時期、紅葉には少し早かったが、
木洩れ日が織り成す風景は見応え充分だった。
自然と一体となった境内の佇まいからは四季折々の美しさも想像できるが、
そんな色とりどりの季節よりも興味を曳くのは厳冬だと思った。
雪に埋もれ色を失った光景から苦行の厳しさが
雰囲気として伝わって来るのでは、と想像したからだ。
そんな室生寺を胸に描きつつ、次に訪れるとしたら冬だな、と思った次第だ。