折にふれて

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国宝のある風景 西明寺

2022-05-24 | 近江憧憬

深緑の風景を求め、湖東三山、西明寺へ。

  
  滋賀県甲良町 2022.05.28 8:52 Sony α7S2  Planar 50㎜ F1.4 ZA SSM (f/5.6 , 1/80sec , ISO100) 

 

三重塔、そして本堂と堂々たる古刹ぶりに圧倒された.

それもそのはず、いずれも国宝、しかも三重塔は指定第一号と知って

ますますその風景に納得した次第だ。

鎌倉時代の建築だから、やがて八百年、

そのままの姿を現在に伝えていることになる。

しかし、その歴史は平たんではなかったと思う。

最大の危機は織田信長が比叡山を焼き討ちにした折。

比叡山傘下にあった西明寺も焼き討ちの標的となったらしいが

本堂周辺は山深く位置しているため、からくも焼失を免れたとのことだ。

とかく、歴史的建造物は戦禍はもちろん、天災や失火など消失のリスクを抱えているから、

この創建当時の姿は奇跡の光景と言える。

 

さて、この景色に圧倒されたのにはもうひとつ理由がある。

見せ方の「しかけ」にやられたのだ。

寺院は本堂や塔、講堂といった建物で構成されていて、参詣の起点は山門となる。

ところが、だ。

西明寺には、ふたつある国宝にも劣らない重要文化財の二天門がある。

それにもかかわらず、本堂への参詣はその門を通らせない。

参詣客は蓬莱庭という名勝庭園を回遊した後、わき道から山を登り、

本堂の左手から、うっそうとした木々の中を通り抜けてこの景色に至る。

つまりは、突然に景色が開けて、三重塔が現れるのだ。

「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった」でもないが、

これは、感動を増幅する「しかけ」として、建築や風景の設計でよく使われる手法だ。

それにまんまとやられたというわけである。

寺院関係の方が狙って仕掛けたものか、単なる偶然なのか

そこまではわからないが、この光景が強い印象として残ったことは確かだ。

 

この日は終日小雨模様。時には大粒の雨が落ちてくることもあった。

そんな中、カメラ機材をかばいながらも、湖東三山すべてを巡ることができたのは

最初にこの光景にであったからこそではなかったか、と思ったりもしたのである。


深緑の季節。

この日、車中で聴いていたのが、

ジェシ・コリン・ヤングのさわやかなファルセット。

 
  Sunlight    Jesse Colin Young

 

 

 

 

 

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