折にふれて

季節の話題、写真など…。
音楽とともに、折にふれてあれこれ。

向春の記

2020-02-13 | 折にふれて

やがて冬も終わろうというこの時期に

決まって訪れる場所がある。

 

加賀市 鴨池。

 

1.5ヘクタールばかりの池とそれを取り囲む湿地で

ガンやカモなど数千羽の水鳥が越冬する。

地図上では見落としてしまうような小さな湿地帯でしかないが、

実は、水鳥が生息する湿地を保全する国際条約、

ラムサール条約に登録される日本有数の地。

水鳥たちにとってはまさに聖域、サンクチュアリだ。

 

 

その鴨池で憩う鳥たちを目当てに訪れるのだが、

実のことろは鳥オンチ。

学芸員が待ち構えていて、

鳥の名前や生態をていねいに教えてくれるのだが

せっかくだがそれぞれの鳥には興味がない。

だから鳥たちを写真に収めることもしない。

鳥たちが寛ぐ長閑さに惹かれ

その景色を、時間を気にせずぼんやりと、ただ眺めていたいだけなのだ。

思うに、自分なりの歳時記のようなもので

やがて北に向け飛び立つ鳥たちに

近づく春の足音を重ねているのかもしれない。

 

 

その日はもうひとつ決まりがあって

それから、5分ほど車を走らせて片野海岸へ向かった。

 

そこには海を見下ろすように立つカフェがあって、

一杯、一杯、引きたての豆で

新鮮でやさしい味がするコーヒーを淹れてくれる。

 

 

そのコーヒーをゆっくりと味わい、

そして、寒々とした海を意味もなく眺める。

いや、自分の中ではちゃんと意味はあった。

外は時折り小雪が舞い、最高気温も5℃に満たない。

しかし、そんな真冬の寒さであっても、

海の向こうからやって来る春の気配をじゅうぶんに感じていたからだ。

 


折にふれるか、ふれないか...

この日の気分を振り返っていたら、

ふと、グレン・フライのバラードを聞きたくなった。

 
 Glenn Frey - I Did It For Your Love

 

Comments (10)