彼方の春
北陸の冬、今年は暖冬ということで、昨年に比べると穏やかな日が続いている。
だが、穏やかといっても、それは積雪が少ないということだけであって、
冷たい雨や雪を降らせる鉛色の空が何日も続く冬に変わりはない。
そして、その冬もすでに2か月。
さすがに嫌気がしてくるのだが、そんな時、訪れるのがこの場所だ。
片野海岸 カフェ うみぼうず
Sony α99 Planar 50㎜ (f/5.6 , 1/320sec , ISO100)
もう何年も前になるが、ちょうど今頃のある日のこと。
横殴りの雪が降る、ことさら荒れた日にこの店を訪れたのだが、
店に入ったとたん、寒さでこわばった体とこころが、
暖かさとコーヒーの香りで、一瞬にほころんだことを印象深く覚えている。
さらに、ちょうどその時、雲の切れ間から陽が射しこんで、
テーブルにできた陽だまりを眺めていたら、
春がすぐそこまで来ている──。
突然、そう思えてきたのだった。
以来、長い冬にめげそうになった時、ここを訪れるようになったというわけである。
Sony α99 Planar 50㎜ (f/5.6 , 1/25sec , ISO100)
ところで。
「うみぼうず」という茶目っけたっぷりの店名、おそらくはマスターの風貌から名づけたものだと思う。
その風貌には似合わない(失礼!)ソフトな口調が印象的だったが、
なにか、マスターの体に変調があったのか、一年以上休業していた。
したがって、ここを訪れるのは2年ぶりとなる。
上客ではないのでおこがましいが、
営業再開がうれしく、さらにずっと、冬の日の癒しの場であってほしいと願うのである。
(他のシーズンは混雑しているので、冬限定ということで...。 勝手な言い分、ごめんなさい!)
さて、今日は節分。そして、明日はいよいよ立春。
あくまでも暦の上でのことだが、
この言葉を口にするだけで、今朝のこころはあたたかい。
なぜそう思うのか、覚えていないのだが...。
冬も終わりごろとなると思い出す曲のひとつが、バッドフィンガーのウイズ・アウト・ユー。
Badfinger - Without You
ニルソンの代表曲として覚えている人も多いと思うが、
オリジナルはこの人たちである。
ビートルズの弟分というふれ込みで鮮烈なデビューを果たし、
数々のヒットも飛ばしたが、中心人物、ピート・ハムとトム・エヴァンスの早世など、
悲運のバンドとしての印象が強い。
あらためて聴いて、そして思ったのだが...。
少ない音で語られる、この「ウイズ・アウト・ユー」にしみじみとした趣きを感じるのは、
このバンドの行く末を知っているからかもしれない。