じゅんむし日記

心は急いでいる。それなのに、何も思い通りの形にはなっていかない。がまんがまん。とにかく、今できることから始めよう。

「沈まぬ太陽1~5巻」山崎豊子

2014-07-08 | 


日航の御巣鷹山の事故をもとにしていて、
膨大な取材によって書かれた小説であるとのことですが、
どこがノンフィクションで、どこがフィクションなのか、気になるところです。

作者が訴えたいことも大きいでしょうし、
かと言って、事実のまま書いたのでは、小説としておもしろくならないし。
人物設定からはじまり、事実を小説に昇華させるというのは難しい作業なんだろうなーと想像します。

全編通してとても具体的なので、ほとんんどが事実?という印象は受けましたけど。

※注 内容を知りたくない方は、読まないでくださいね)

小説の中では国民航空という名称で出てきます。

国民航空の恩地(おんち・主人公)は、労働組合委員長となって、従業員の待遇改善と空の安全を求め奮闘するが、
報復人事を受け、僻地(イラン、パキスタン、ケニア)へ10年もの長期間にわたり左遷されてしまう。
(第1巻・第2巻)


ケニアでの暮らしぶりは、
事実をもとにしているという証明をとりつけたような位置付けのようにも感じられます。
ハンティングの描写は、興味がわくことでもあるけれど、
この小説に必要?と思い、違和感がありました。

ジャンボ機墜落事故。
本社への配属となっていた恩地は、ご遺族相談室で遺族に寄り添っていた。
(第3巻)


事故の悲惨さ、すさまじさを改めて知りました。
事故原因と対策は、本当に追究されたといえるのか?と考えると、なんともやりきれないですね。

国民航空は、多くの人の命を預かり、安全を第一優先にしなければならない企業であるにも関わらず、
利益ばかりを追求するあまり、空の安全対策がおろそかになっていた。
幹部は政治と癒着し甘い汁を吸い、政治家もそれに乗じて私欲をむさぼっている。
御巣鷹山のジャンボ機墜落事故のあと、上層部を一新。
恩地は、会長室の部長に抜擢された。

多額の裏金作り
先物予約による大損失
政治の腐敗…
経営建て直しのために不正を暴こうとするが、逆に攻撃の対象とされてしまう。
相変わらず、改善されない企業体質。
会長は解任され、恩地はまたしてもケニアに飛ばされる。
(第4巻・第5巻)


これにはギョッとしました。
5巻もあった小説は、サッと幕が閉じられた感じがしました。

内幕を知っていた人物が自殺前に東京地検に密告し、
物語の最後に東京地検特捜部が出てきたところは、小説っぽかったですね。
でもそれだけで、その後の発展があまり書かれてなかったので、
利権を暴いて、腐敗した企業体質をコテンパンにやっつけるところを書いてほしかったなぁと思いました。

あと、人間は「最も凶悪な動物」のエピソードはこころに残りました。
まったく…!
人間は、地球上でもっとも厄介な動物でしょうね。
地球上の生き物に対して、申し訳なさがでてきます。
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