マンスフィールドの作品は視覚に訴えるのが一番の特徴といえる。読んでいると情景が眼に浮かんでくる。そしてそれは正に小津監督の映画作品に他ならない。二人の作品の共通点について私なりの考えを披露すると、
共通点 1 話の筋がない。
両作品とも極普通の人の日常がえがかれている。波乱万丈、どんでん返しなどとはほど遠い誰もが経験する日々の出来事がテーマになっている。
共通点 2 意識の流れ
話の本質は登場人物の「意識の流れ」もしくは「心の動き」である。日常のなかで次から次に起きてしまうことへの喜怒哀楽が繊細に表現されている。
共通点 3 カットの切れ味
小津監督は「カットの切れ味」を大切にした。代表的な例をあげると、「秋刀魚の味」の終盤の婚礼の当日のシーン、花嫁衣裳をまとった岩下志麻が父親役の笠知衆に挨拶をしてから家族一同式場へ向う。ここでカット。次はもう式は終わり、親友の中村伸郎の家で酒を飲み交わす場面に移る。観客は一瞬戸惑うのではないか、また期待した新郎の姿もなく肩透かしをくらうことになる。マンスフィールドの作品にもこのようなカットが多用されている。
共通点 4 微笑ましい子役の登場
二人とも子供の描写が巧い。マンスフィールドの"At The Bay"や"Marriage a la mode"の子供が遊ぶ場面には心奪われる。小津作品の「麦秋」と「東京物語」でも微笑ましい子役の演技がみられる。
共通点 5 同じ名前の人物がいくつもの作品に登場
後期の小津映画には中心となる人物として「平山公一」の名前が何度も登場する。全く同様にマンスフィールド作品では"Stanley Burnell"の名前が使われている。
小津作品を観終わるとマンスフィールドの代表作 "The Garden Party" (園遊会)のラスト・シーンを私は思い浮かべてしまう。
画像は小津作品のスチール写真。
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