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川崎市情報公開・個人情報保護審査会 諮問第139号 不服申立て事件係争中の公文書を廃棄した学校の…

2005年11月14日 | 行政文書該当性/文書の特定/理由付記
【諮問第139号】
17川情個第67号
平成17年11月14日

川崎市教育委員会
委員長 宮田 進 様

川崎市情報公開・個人情報保護審査会
会 長 安 冨 潔

公文書開示請求に対する拒否処分に関する異議申立てについて
(答申)


平成16年12月2日付け16川教指第1519号で諮問のありました公文書開示請求に対する拒否処分に関する異議申立ての件について、次のとおり答申します。

1 審査会の結論
実施機関は本件拒否処分を取消すべきである。

2 異議申立ての趣旨及び経緯
異議申立人は、平成16年10月26日付けで、川崎市情報公開条例(平成13年川崎市条例第1号。以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関川崎市教育委員会(以下「実施機関」という。)に対し、①「不服申立事件係争中の公文書を廃棄した学校の平成15年度から平成16年度の諾否の処分に至るまでの間の職員会議録のすべて」及び②「上記以外の文書で、公文書廃棄問題が記録されている文書のすべて」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
実施機関は、平成16年11月10日付けで、①「不服申立事件係争中の公文書を廃棄した学校の平成15年度から平成16年度の諾否の処分に至るまでの間の職員会議録のすべて」については、該当する学校に確認したが、公文書廃棄問題が記録されている職員会議録は存在しないとし、また②「上記以外の文書で、公文書廃棄問題が記録されている文書のすべて」についても、学校において当該問題が記録されている文書は存在しないとして、本件請求に対し、拒否処分を行った。
異議申立人は、平成16年11月15日付けで、公文書開示請求書記載の請求対象公文書に対する諾否の判断をしていないデタラメな請求拒否であるとして拒否処分の取消しを求めて異議申立てを行った(当審査会諮問第139号事件)。

3 異議申立人の主張要旨
平成17年7月4日付け意見書及び同年7月4日実施の口頭意見陳述聴取によれば、異議申立人の主張の概要は、次のとおりである。

(1) 開示請求の対象公文書のうち、①「不服申立事件係争中の公文書を廃棄した学校の平成15年度から平成16年度の諾否の処分に至るまでの間の職員会議録のすべて」については、その対象学校を不服申立事件係争中の学校と特定し、平成15年度、平成16年度中の諾否処分に関する期間中の職員会議録と限定し、請求したものである。
開示請求の対象公文書のうち、②「上記以外の文書で、公文書廃棄問題が記録されている文書のすべて」については、職員会議録以外の諾否処分に関係する文書のすべてであり、このことは公文書開示請求書に記載のとおり明白である。
しかし、実施機関は対象となる公文書を恣意的に曲解し、この期間中には当該学校の全てが職員会議録を作成していないし、職員会議録以外の文書もすべてないとして文書不存在とした。しかも、その不存在の確認方法は、地方公共団体以外の任意団体である中学校長会に依頼し、さらに各学校別ではなく一括して口頭で調査結果を確認したようである。
これは、請求対象公文書の特定を誤り、その誤った文書に対して行われた諾否処分であり、したがって文書不存在を理由とする本件拒否処分は取消されなければならない。

(2) 本件処分理由は、文書不存在であるというのみで、その不存在の事実経緯や不存在の確認に至る論理的客観的根拠の理由付記なき諾否処分であり、情報公開の原則にしたがい公開処分とすべきである。

(3) 本件諮問は教育委員会の協議の上に諮問されていない。したがって実施機関の諮問手続は誤りである。

4 実施機関の主張要旨
平成17年1月21日付け処分理由説明書及び同年6月13日実施の事情説明聴取によれば、実施機関の主張の概要は、次のとおりである。

(1) 開示請求の対象公文書のうち、①「不服申立事件係争中の公文書を廃棄した学校の平成15年度から平成16年度の諾否の処分に至るまでの間の職員会議録のすべて」は異議申立人が別途係争中の不服申立事件に関する公文書を学校が誤って破棄した件の記録について、対象公文書を当該学校の職員会議録に限定して請求したものであり、②「上記以外の文書で、公文書廃棄問題が記録されている文書のすべて」は同様の記録について、対象公文書を当該学校の職員会議録以外に広げて請求したものである。

(2) 公文書の存在確認の方法としては、①の文書については事前に中学校長会を通じて口頭で調査を依頼し、平成16年11月9日に開催された同校長会の会場で確認し、存在しないことが明らかとなった。また、②の文書についても同様の経過で、その不存在が確認されたものである。
したがって、開示請求の対象となる公文書はそもそも存在しないため、請求を拒否したものである。

5 審査会の判断
(1) 職員会議録の公文書該当性
ア 当審査会における実施機関の説明では本件該当学校の職員会議は単なる事実上の連絡機関にすぎないがごとき説明がなされたので、まず職員会議の性質及び職員会議録の公文書性について判断する。本件該当中学校には学校教育法(昭和22年法律第26号)及び同法施行規則(昭和22年文部省令第11号)が適用されるところ、同法施行規則第23条の2及び同第55条の準用規定によれば、職員会議は設置者が定めるところにより、校長の職務の円滑な執行に資するため、各学校に置くことができるとされている。したがって職員会議は法的に根拠のある機関であり、教育委員会下の各学校の職員会議も実施機関の職員により構成された公的な機関であって、単なる事実上の機関ということはできない。

イ これを前提とすると、職員会議における会議録は、職員が職務上作成し、又は取得した文書等(条例第2条)の公文書にあたることは明らかである。この点については実施機関も従前から、特段、争点としたことはないが、本件においても職員会議録の公文書該当性を前提に判断することとする。

(2) 対象公文書の特定及び存否について
本件における異議申立人(以下、請求人という)の開示請求の対象公文書は、①「不服申立事件係争中の公文書を廃棄した学校の平成15年度から平成16年度の諾否の処分に至るまでの間の職員会議録のすべて」及び②「上記以外の文書で、公文書の廃棄問題が記録されている文書のすべて」というものである。

ア このうち①の係争中の公文書というのは諮問第78号、第79号事件にかかる公文書であり、これらの公文書を廃棄したとされる学校に該当する中学校の職員会議録のうち、平成15年度の職員会議録のすべて、及び平成16年度の諾否の処分のあった日(平成16年11月10日)までの職員会議録のすべてが本件対象公文書の①にあたるということになる。この点は実施機関の処分理由説明書の「異議申立てに至る経過」において上記開示請求を受けた旨の記載があり、実施機関もすでに認めているところである。
しかるに、実施機関の理由説明書によると、①の対象公文書は、「公文書を学校が誤って破棄した件の記録について、対象公文書を当該学校の職員会議録に限定して請求」したものであるとしている。つまり公文書廃棄にかかる職員会議録に限定して特定しているものと認められる。しかしながら、前記処分理由説明書が認めているように、本件請求は単に廃棄問題にかかる職員会議録の開示を求めたものではなく、該当する期間の職員会議録の全てを請求しているのであるから、実施機関は本件対象公文書の特定を誤ったものといわざるをえない。当審査会における実施機関の説明も前記処分理由説明書のとおりであり、この点についての特段の説明はなかったのであるが、請求人の請求がやや複雑なものとはいえ、対象公文書の特定を誤ったことは明らかである。本来、公文書開示請求書の記載のみで対象公文書の範囲が明確でない場合は、実施機関において請求人に対して確認を行い、必要な場合は明示的に補正を求めるなどの手続を行うべきであるが、本件においてはこのような手続が行われていなかったと認められる。したがって、実施機関は本件拒否処分を取消すべきである。なお実施機関は上記の趣旨に則り、改めて特定を行い、諾否の処分をすべきである。

イ さらに、前記②の文書については、当審査会における実施機関の理由説明に際して、審査会より実施機関に関係文書の存否を再度調査するよう要請したところ、当審査会で把握している対象公文書だけでもすでに12件にのぼる対象公文書の存在が明らかになっており、これだけでも対象公文書の不存在を理由とする本件拒否処分に根拠がないことは明らかである。したがって、請求人のその余の請求について判断するまでもなく、実施機関は本件拒否処分を取消すべきである。なお実施機関は上記の趣旨に則り、改めて特定を行い、諾否の処分をすべきである。

以上の次第で、審査会の結論に記載のとおり答申する。

川崎市公文書公開審査会(五十音順)
委 員 小 林 美智子
委 員 鈴 木 庸 夫
委 員  岡 香
委 員 安 冨 潔


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