情報公開制度について考える

情報公開審査会の答申などを集めて載せています。

神奈川県情報公開審査会答申 第285号 特定の墓地拡張計画に係る理由書一部非公開の件

2005年11月29日 | 法人等に関する情報
答申第285号
平成17年11月29日

神奈川県知事 松 沢 成 文 殿

神奈川県情報公開審査会
会 長 堀 部 政 男

行政文書公開請求拒否処分に関する不服申立てについて(答申)


平成17年3月4日付けで諮問された特定の墓地拡張計画に係る理由書一部非公開の件(諮問第326号)について、次のとおり答申します。

1 審査会の結論
特定の墓地の経営の許可等に関する書類及び拡張計画手続に関する一切の書類のうち、墓地経営許可申請書関係及び墓地等変更計画協議書関係に係る申請等の理由を記載した書類について、実施機関が非公開とした部分は、公開すべきである。

2 不服申立人の主張要旨
(1)不服申立ての趣旨
不服申立ての趣旨は、特定の墓地(以下「本件墓地」という。)の経営の許可等に関する書類及び拡張計画(以下「本件計画」という。)手続に関する一切の書類について、神奈川県知事(以下「知事」という。)が、平成17年1月11日付けで一部非公開とした処分のうち、墓地経営許可申請書関係及び墓地等変更計画協議書関係に係る申請等の理由を記載した書類(以下「申請等理由書」という。)において非公開とされた本件墓地の現状及び必要墓地数(以下「本件非公開情報」と総称する。)の公開を求める、というものである。
(2)不服申立ての理由
不服申立人の主張を総合すると、次のとおりである。
ア 実施機関は、本件非公開情報の公開を拒む理由として、法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとしているが、本件計画に関する許可要件としては、本来、檀家・信徒のための不足墓地の確保が必要であり、一方、本件計画の計画地の近隣住民等にとっては、広く公共の福祉の観点等から、本件非公開情報を知る権利があると考える。
イ 本件非公開情報は、会社や法人一般に義務付けられている株主総会等における報告内容(基本財産、責任役員、社員(会員)数等の基本(変動)事項に属するもの)と同程度のものと考えられ、本件計画において墓地を経営しようとする特定の宗教法人(以下「本件宗教法人」という。)が社会的責任を果たすために公開すべき事項の範囲ではないかと考える。
ウ 本件宗教法人が経営する別の墓地は、その販売実態にあるように、対象者を檀家・信徒に限定せず、広く宗派を問わず経営している現状であり、このことをもってしても、実施機関が、本件非公開情報を、法人に関する情報であって、公開することにより当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものと判断したことは適正ではない。
エ 申請等理由書には、本件計画の理由を布教のためと記載してあるが、本件計画の計画地は、その地理的要因から、自然災害や、交通事故等の人的災害の発生が心配される場所であるので、本件非公開情報は、なぜこれだけ大規模な墓地が、そのような災害の発生が心配される場所に必要なのかを判断するための重要な判断材料であるため、神奈川県情報公開条例(以下「条例」という。)第5条第2号ただし書に該当する。

3 実施機関(保健福祉事務所)の説明要旨
実施機関の説明を総合すると、次のとおりである。
(1)条例第5条第2号該当性について
ア 条例第5条第2号本文は、「法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公開することにより当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」は非公開とすることができると規定している。
イ 本件非公開情報は、本件墓地の現状及び必要墓地数であり、専ら法人等の内部管理の事項に属する情報である。
したがって、本件非公開情報は、条例第5条第2号に規定する法人に関する情報であって、公開することにより当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものと判断し、非公開とした。
ウ 墓地の拡張に当たっては、神奈川県墓地等の経営の許可等に関する条例(以下「墓地条例」という。)の規定により、墓地を経営しようとする者には近隣住民等への説明会の開催と、その内容を知事に報告することが義務付けられている。本件計画においても近隣住民等への説明会(以下「本件説明会」という。)が開催され、その報告書(以下「本件報告書」という。)も知事に提出されている。
本件報告書から判断すると、本件非公開情報の概要は、本件説明会で説明されているようである。しかし、情報公開制度は県民一般を対象にするものであるので、公開の諾否の判断は、本件非公開情報が限定された当事者に説明されているかどうかを根拠にしてなされるのではなく、別の観点からなされるべきである。
エ 本件非公開情報を公開することにより侵害されるおそれのある法人の権利、競争上の地位その他正当な利益については、対象となるのが宗教法人なので、他の法人との競争において、その地位を脅かすおそれはないか、あったとしても極めて少ないと考えている。むしろ、本件非公開情報においては、本件宗教法人の秘密情報を公開することになることが問題である。
オ 本件計画に係る墓地の総区画数や設計書等は公開しており、本件非公開情報である檀信徒数及び墓地の計画数の内訳に関する情報は、人の生命、身体、財産とは関係がないため、条例第5条第2号ただし書に規定する人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、公開することが必要であると認められる情報には当たらない。

4 審査会の判断理由
(1)審査会における審査方法
当審査会は、本諮問案件を審査するに当たり、神奈川県情報公開審査会審議要領第8条の規定に基づき委員を指名し、指名委員は不服申立人から口頭により意見を、また、実施機関の職員から口頭による説明を聴取した。それらの結果も踏まえて、次のとおり判断する。
(2)条例第5条第2号本文該当性について
ア 条例第5条第2号本文は、「法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公開することにより当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」は非公開とすることができると規定している。
イ 墓地条例第5条第2号において、経営許可を受けようとする者は、墓地等経営計画の周知を図るために、当該墓地等の近隣住民等に対して、墓地等経営計画の概要について説明会を開催し、速やかに当該説明会の内容等を知事に報告しなければならない旨規定している。
ウ 神奈川県墓地等の経営の許可等に関する条例施行規則第4条第3項において、墓地条例第5条第2号に定める近隣住民等の範囲を、「墓地等の境界線から水平投影面における最短の距離で110メートル以内」と規定されていることから、本件計画においても、本件宗教法人は、この範囲の近隣住民等に対し本件説明会を開催し、本件報告書を知事に提出しており、本件報告書には、本件非公開情報の大半が本件説明会で近隣住民等に説明された旨記載されていることが認められる。
エ 墓地条例第5条第2号が、当該墓地等の近隣住民等に対して、墓地等経営計画の概要について説明会を開催しなければならないことを規定している趣旨は、墓地の経営が公益性を有すると同時に、近隣住民等の迷惑となる可能性があることから、墓地を経営しようとする者に近隣住民等への説明責任を課したものであると解される。
オ 墓地条例第5条第2号の趣旨から考えると、同号に規定する説明会において説明すべき情報を公開しても、本件宗教法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められないので、本件非公開情報は、条例第5条第2号本文に該当しないと判断する。

5 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。


別 紙
審 査 会 の 処 理 経 過
年 月 日
処 理 内 容
平成17年3月 4日
○ 諮問
3月16日
○ 実施機関に非公開等理由説明書の提出を要求
4月 1日
○ 実施機関から非公開等理由説明書を受理
4月 7日
○ 不服申立人に非公開等理由説明書を送付
5月10日
○ 不服申立人から、非公開等理由説明書に対する意見見書を受理
8月18日
(第45回部会)
○ 審議
9月12日
○ 指名委員により不服申立人から意見を聴取
○ 指名委員により実施機関の職員から非公開等理由説明を聴取
10月20日
(第46回部会)
○ 審議
11月 9日
(第47回部会)
○ 審議

神奈川県情報公開審査会委員名簿
氏 名
現 職
備 考
金 子 正 史
同志社大学教授
会長職務代理者
沢 藤 達 夫
弁護士(横浜弁護士会)
部 会 員
鈴 木 敏 子
横浜国立大学教授
竹 森 裕 子
弁護士(横浜弁護士会)
玉 巻 弘 光
東海大学教授
千 葉 準 一
首都大学東京教授
部 会 員
堀 部 政 男
中央大学教授
会 長
(部会長を兼ねる)
(平成17年11月29日現在)(五十音順)


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。