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情報公開・個人情報保護審査会 平成22年度(行情)答申第75号 防衛大学校防衛学館図書室が所蔵する…

2010年06月21日 | 行政文書該当性/文書の特定/理由付記
諮問庁:防衛大臣
諮問日:平成21年11月4日(平成21年(行情)諮問第494号)
答申日:平成22年6月21日(平成22年度(行情)答申第75号)
事件名:防衛大学校防衛学館図書室が所蔵する自衛隊員を構成員とする私的な団体の出版物に該当する文書の不開示決定(不存在)に関する件

答 申 書


第1 審査会の結論
「防衛大学校防衛学館図書室が所蔵する「自衛隊員を構成員とする私的な団体の出版物」(「部外に対する意見発表の際の手続の実施について(通知)」(官広第2917号 21.3.12))に該当するもの(単行本,パンフレットのたぐいを除く)のうち最も古い号と最新号。」(以下「本件対象文書」という。)につき,これを保有していないとして不開示とした決定については,これを取り消し,「幹部学校記事」,「陸戦研究」,「波濤」,「鵬友」及び「富士」(以下「幹部学校記事等」という。)並びにその他の本件対象文書について改めて探索,特定した上,開示決定等をすべきである。

第2 異議申立人の主張の要旨
1 異議申立ての趣旨
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく本件対象文書の開示請求に対し,平成21年7月29日付け防官文第9087号により防衛大臣が行った不開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。

2 異議申立ての理由
(1) 異議申立書
防衛大学校防衛学館図書室には『幹部学校記事』が所蔵されており,これについては本件対象文書に該当するものと考えられる。

(2)意見書
諮問庁は,対象文書を防衛大学校防衛学館図書室に所蔵している事実は認めたが,これを行政文書として所有している事実は確認できないと主張する。諮問庁が主張する「行政文書として所有」とはどういう意味なのか,「所蔵」と「所有」はどう違うのか,まずはその定義を明らかにすべきである。諮問庁の主張はき弁に近くこのような主張を認めると,「所蔵」しているが,「所有」していないため開示対象でないという主張が広く認められることになり,法が骨抜きになるおそれがある。

第3 諮問庁の説明の要旨
1 経緯
本件開示請求は,「防衛大学校防衛学館図書室が所蔵する「自衛隊員を構成員とする私的な団体の出版物」(「部外に対する意見発表の際の手続の実施について(通知)」(官広第2917号 21.3.12))に該当するもの(単行本,パンフレットのたぐいを除く)のうち最も古い号と最新号。」の開示を求めるものであるが,これに該当する行政文書を保有していないため,文書不存在につき,原処分を行ったものである。

2 本件対象文書の保有の有無について
防衛大学校内において本件対象文書を保有している部署がないか探索を行ったが,私的サークルの会員として個人的に所有している事実及び防衛大学校防衛学館図書室が所蔵している事実は確認されたものの,行政文書として所有している事実は確認できなかったため,不存在であると判断したものである。

3 異議申立人の主張について
異議申立人は,「防衛大学校防衛学館図書室には『幹部学校記事』が所蔵されており,これについては本件対象文書に該当するものと考えられる。」として原処分の取消しを主張するが,上記2で述べたとおり,行政文書として保有している事実が確認できなかったため,異議申立人の主張は当たらない。

第4 調査審議の経過
当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

① 平成21年11月4日  諮問の受理
② 同日          諮問庁から理由説明書を収受
③ 同月27日       異議申立人から意見書を収受
④ 平成22年5月20日  審議
⑤ 同年6月17日     審議

第5 審査会の判断の理由
1 本件対象文書について
本件対象文書は,「「防衛大学校防衛学館図書室が所蔵する「自衛隊員を構成員とする私的な団体の出版物」(「部外に対する意見発表の際の手続の実施について(通知)」(官広第2917号 21.3.12))に該当するもの(単行本,パンフレットのたぐいを除く。)のうち最も古い号と最新号。」に係る行政文書」である。
諮問庁は,本件対象文書を保有していないため,不開示としたと説明していることから,以下,本件対象文書の保有の有無について検討する。

2 本件対象文書の保有の有無について
(1)諮問庁の説明によれば,防衛大学校内において本件対象文書を保有している部署がないか探索を行ったが,私的サークルの会員として個人的に所有している事実及び防衛大学校防衛学館図書室が所蔵している事実は確認されたものの,行政文書として所有している事実は確認できなかったとのことである。

(2)当審査会事務局職員をして諮問庁に確認させたところ,上記(1)において防衛大学校防衛学館図書室が所蔵している事実が確認されたとする出版物としては,少なくとも幹部学校記事等を所蔵しているとのことであり,また,「防衛大学校防衛学館図書室」とは,異議申立人の使用した文言によったもので,幹部学校記事等を所蔵しているのは防衛大学校総合情報図書館(平成21年4月からこの名称となった。以下「総合情報図書館」という。)であり,それとは別に防衛大学校防衛学館図書室があるものではないとのことであった。

3 総合情報図書館が所蔵する幹部学校記事等について
(1)総合情報図書館が所蔵する幹部学校記事等が行政文書に該当しないと諮問庁が主張する理由及び幹部学校記事等の受入・管理状況につき,当審査会事務局職員をして諮問庁に確認させたところ,以下のとおりであった。

ア 幹部学校記事等が行政文書に該当しないとする理由は,①部外者でも申請を行えば閲覧が可能であり,②取得から廃棄に至るまで防衛省の図書管理に関する訓令(以下「訓令」という。)に基づき図書として管理していることから,法2条が定義する行政文書には該当しないとの認識の下,情報公開請求の対象から除くものとして整理してきた。

イ 幹部学校記事等の受入・管理状況は,寄贈され又は防衛大学校の各学科等の購入希望により調達し,納入されたものは訓令に基づき書庫において物品として管理しており,行政文書としての取扱いをしていない。

(2)しかし,総合情報図書館が所蔵する幹部学校記事等は,少なくとも本件開示請求に関しては,行政文書に該当するものであると認められる。その理由は次のとおりである。

ア 法2条2項が定義する行政文書とは,①行政機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図画及び電磁的記録であり,②当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして,③当該行政機関が保有しているものである。ただし,④官報,白書,新聞,雑誌,書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの,又は⑤行政機関の保有する情報の公開に関する法律施行令(以下「政令」という。)3条で定める公文書館その他の機関において,政令で定めるところにより,歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別な管理がされているものは行政文書に該当しないものとして除外される。

イ 上記(1)の諮問庁の主張について,法2条2項に基づき検討すると,幹部学校記事等は,行政機関である諮問庁に設置された施設等機関である防衛大学校における教育・研究その他の利用に供するために,その内部組織である総合情報図書館が寄贈を受け,あるいは調達して取得した文書であり,当該図書館において同校学生を含む職員の業務の参考に資するために閲覧等利用可能な状態に置かれており,現に訓令に基づき当該図書館の書庫において保管されているものであると認められる。

また,当審査会事務局職員をして諮問庁に確認させたところ,幹部学校記事等は,私的サークルの会員相互の親睦や自己研さんなど個人利用を目的として刊行されているものであり,不特定多数の者に販売することを目的として発行されたものではないとのことであった。さらに,当該図書館は平成22年4月1日付け総務省告示第139号により,政令で定める公文書館その他の機関に指定されていることが認められるが,開示請求時(平成21年6月9日),原処分時(同年7月29日)はもとより,本件諮問時(同年11月4日)においても指定されていなかった。

ウ したがって,総合情報図書館が所蔵する幹部学校記事等は,少なくとも本件開示請求との関係においては,法2条2項の定める行政文書に該当する。

平成22年4月1日に当該図書館が政令で定める公文書館その他の機関に指定されたことは,開示請求時においては指定されていなかったことに照らし,その余の要件を検討するまでもなく,上記の判断を左右するものではない。

4 諮問庁の対応についての付言
諮問庁は,本件諮問に当たって提出した理由説明書において,本件対象文書の不存在の理由として,「防衛大学校内において本件対象文書を保有している部署がないか探索を行ったが,私的サークルの会員として個人的に所有している事実及び防衛大学校防衛学館図書室が所蔵している事実は確認されたものの,行政文書として所有している事実は確認できなかったため,不存在であると判断した。」と説明し,当審査会事務局職員からの確認に対し,所蔵しているのは「陸戦研究」を含む上記幹部学校記事等であることを明らかにした。

しかしながら,平成21年度(行情)答申第96号に係る諮問についての当審査会での審議の過程における当審査会事務局職員からの確認に対し,当該事案の対象文書である「陸戦研究」平成18年4月号ないし同年8月号につき,防衛大学校において対象文書を探索したが,対象文書は確認されなかった旨,及び同案件の異議申立人が陸上自衛隊幹部学校,防衛大学校及び防衛研究所については改めて探索すべきである旨主張していたことから,当該機関においては,特に念入りに書棚やキャビネット等の探索を行ったが,その結果,いずれの部署においても対象文書は保有していないことが確認された旨説明していた(同案件の異議申立人は,異議申立ての理由において,防衛大学校図書館にあるはずである旨主張していた。)。

そうすると,平成21年度(行情)答申第96号における諮問庁の説明は事実を隠ぺいしようとしたものと外部から疑われても仕方のない不適切又は不十分なものであったと言わざるを得ず,極めて遺憾である。

今後は当審査会からの確認に対してはもとより,開示請求に対する手続全般において,事実を隠ぺいしようとしたとの疑いを抱かれることのないよう事実に即した的確な対応をすべきである。

5 本件不開示決定の妥当性について
以上のことから,本件対象文書につき,これを保有していないとして不開示とした決定については,防衛省において,少なくとも幹部学校記事等を保有していると認められるので,原処分を取り消し,幹部学校記事等及びその他の本件対象文書について探索,特定の上,改めて開示決定等をすべきであると判断した。

(第4部会)
委員 西田美昭,委員 園 マリ,委員 藤原静雄


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