情報公開制度について考える

情報公開審査会の答申などを集めて載せています。

東京都情報公開審査会 答申第488号 「大橋地区土地鑑定評価委託の土地鑑定書(3社分)」ほか23件

2010年06月03日 | 法人等に関する情報
答 申
1 審査会の結論
「大橋地区土地鑑定評価委託の土地鑑定書(3社分)」ほか23件の一部開示決定において非開示とした部分のうち、別表に掲げる部分は開示すべきであるが、その他の部分は非開示が妥当である。

2 異議申立ての内容
(略)


3 異議申立てに対する実施機関の説明要旨
(略)


4 審査会の判断
(1)審議の経過
(略)


(2)審査会の判断
審査会は、異議申立ての対象となった公文書並びに実施機関及び異議申立人の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。
ア 本件対象公文書について
市街地再開発事業は主に民間施行の権利変換方式による第一種市街地再開発事業と、公共団体施行の用地買収(管理処分)方式による第二種市街地再開発事業とに分類されるが、本件異議申立てに係る市街地再開発事業は、東京都を施行者とする東京都市計画事業大橋地区第二種市街地再開発事業(以下「本件再開発事業」という。)である。
第二種市街地再開発事業は、都市再開発法(昭和44年法律第38号)に基づき、事業区域等の項目につき都市計画決定を受けた後、建築する建物の設計、資金計画、施行規程等を定めた事業計画について国土交通大臣から認可を受け、その後、当該地区内の土地・建物に関する権利が、施設建築物にどのように移し変えられるかについて定めた管理処分計画を作成・決定し、その作成の際に算定した土地評価金額に基づいて各用地の買収折衝に臨むという流れで行われている。また、土地評価金額は、不動産鑑定業者に対し、東京都が指定する特定の土地に係る鑑定評価を依頼し、その結果を参考にして算定されている。
本件再開発事業のうち、異議申立人が行った開示請求に対して実施機関が対象公文書として特定したのは、「大橋地区土地鑑定書(計14社分)」(以下「本件対象公文書1」という。)、「大橋地区土地鑑定評価委託請書及び請求書(計14社分)」(以下「本件対象公文書2」という。)、「第一工区管理処分計画(平成20年2月)及び第二工区管理処分計画(平成20年1月)」(以下「本件対象公文書3」という。)、「首都高速中央環状新宿線の大橋ジャンクション整備に伴う工事借地方式に替わる大橋地区第二種市街地再開発事業による用地取得に関する費用負担協定書」(以下「本件対象公文書4」という。)、「土地及び建築物売買契約書」(以下「本件対象公文書5」という。)及び「区分所有建物とその敷地等の売買契約書」(以下「本件対象公文書6」という。)であり、当該事業区域内における各土地又は建物所有者の権利関係の詳細、土地評価金額の算定及びその土地の買収折衝に係る公文書である。

(ア)本件対象公文書1及び2について
本件対象公文書1及び2は、本件再開発事業における区域内の土地の取得にあたり、土地評価金額を算定する上での参考とするため、実施機関が計14社に依頼して取得した土地鑑定評価書並びに土地鑑定委託に伴う請書及び請求書である。当該土地鑑定評価書並びに請書及び請求書の中には、対象地の土地鑑定価格やその評価の判定の際に参考とされた取引事例地に係る情報等が記載されている。

(イ)本件対象公文書3について
本件対象公文書3は、建築施設の部分(床)について譲受け希望の申出をした者又は施設建築物の一部について賃借りの申出をした者が、当該事業で施行する再開発ビル(施設建築物)にどのような床を取得するかを従前・従後の資産状況等の比較として記載したものであり、「管理処分計画書」、「室内仕上表」及び「配置設計図」から構成されている。

(ウ)本件対象公文書4について
本件対象公文書4は、首都高速中央環状新宿線の事業者である首都高速道路株式会社が用地取得を行うこととなっている区域内の一部の土地及び建築物に関し、首都高速道路株式会社に代わり、当該再開発事業の事業者である東京都が権利を取得し、その権利取得費用を首都高速道路株式会社が負担する旨を定めた協定書である。当該公文書には、当該土地及び建築物の権利者名、建物所在地、従前資産額、区分地上権設定費用及び今回費用負担額が記載されている。

(エ)本件対象公文書5及び6について
本件対象公文書5及び6は、本件再開発事業における区域内の土地及び建築物について、実施機関と土地及び建築物所有者との間で交わされた売買契約書である。当該公文書には契約対象地の売買価格、建築物の補償金額、契約内容、土地所有者名、土地・建築物の所在及び地番、地目、契約年月日・地積に関する情報等が記載されている。

イ 審査会の判断事項について
異議申立人は、異議申立書において、「印影」以外の部分についての開示を求める旨主張していると認められることから、審査会は、本件対象公文書中の「印影」を除いた部分を非開示としたことの妥当性について判断する。

ウ 条例7条2号及び3号該当性について
条例7条2号本文は、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」を非開示情報として規定し、同号ただし書において、「イ 法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」、「ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」、「ハ 当該個人が公務員等…である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」のいずれかに該当する情報については、同号本文に該当するものであっても開示しなければならない旨規定している。
条例7条3号本文は、「法人(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれると認められるもの」を非開示情報として規定している。また、同号ただし書は、「イ 事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある危害から人の生命又は健康を保護するために、公にすることが必要であると認められる情報」、「ロ 違法若しくは不当な事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある支障から人の生活を保護するために、公にすることが必要であると認められる情報」、「ハ 事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある侵害から消費生活その他都民の生活を保護するために、公にすることが必要であると認められる情報」のいずれかに該当する情報については、同号本文に該当するものであっても開示しなければならない旨規定している。

(ア)本件対象公文書1及び2について
本件対象公文書1及び2のうち、実施機関が条例7条2号又は3号に該当するとして非開示とした情報は以下のとおりである。
a 取引事例地のうち所在・地番、地積、事例年月日、単価、取引総額とその内

b 街路条件の一部、接近条件の一部
c 振込先金融機関名、預金種別及び口座番号
これらのうち、aとbに掲げる情報については、不動産鑑定士が任意に選定した、再開発事業地区外の土地の取引事例に係る情報であって、当該取引の相手方が個人の場合には、これらの情報を開示すると特定個人の土地取引の情報が明らかとなり、また、不動産登記簿と照合することにより、その取引を行った特定の個人を識別できるので、条例7条2号本文に該当すると認められる。
また、どの取引事例を使用したか及び取引の詳細については、法令等の規定により又は慣行として公にされている情報とはいえず、同号ただし書イに該当しないほか、その内容及び性質から同号ただし書ロ及びハにも該当せず、非開示が妥当である。
そして、当該取引の相手方が法人等の場合には、これらの情報を開示すると当該取引事例地の所有者である法人等が識別されるほか、法人等の資産情報である取引価格が明らかとなる。これら財産管理上の情報は、経営方針等の事業活動を行う上での内部管理に属する事項に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等の事業運営上の地位が損なわれると認められることから、上記非開示情報は条例7条3号本文に該当し、その内容及び性質から同号ただし書のいずれにも該当しないので、非開示が妥当である。
また、cに掲げる情報は、当該不動産鑑定業者が使用する銀行口座に関する情報であり、これらの情報は、取引先等の限られた一定範囲の者のみに明らかにしている内部管理情報であることから、公にすることにより、当該不動産鑑定業者の競争上の地位又は事業運営上の地位が損なわれると認められるため、条例7条3号本文に該当し、その内容及び性質から同号ただし書のいずれにも該当しないので、非開示が妥当である。

(イ)本件対象公文書3について
以下、本件対象公文書3において、実施機関が条例7条2号又は3号に該当するとして非開示とした情報について検討する。

a 「譲受け希望の申出をした者で建築施設の部分を譲り受けることとなるもの」の氏名及び「建築施設の部分を譲り受けることとなる者」の氏名又は名称について
これらの情報は、再開発事業施行区域内の宅地の所有者、借地権者及び建物所有者(以下「所有者等」という。)のうち、譲受け希望を申し出た者で建築施設の部分を譲り受ける者(以下「譲受け予定者」という。)の氏名又は名称である。
実施機関においては、地番を指定した土地売買契約書の開示請求に対し、不動産登記簿で公示されていることを理由に、当該契約書における所有者等の氏名を開示している。また、当該契約書の内容から譲受け予定者が明らかになることから、所有者等のうち誰が譲受け予定者であるかについても判明することとなる。したがって、譲受け希望の申出をした者で建築施設の部分を譲り受けることとなるものの氏名及び建築施設の部分を譲り受けることとなる者の氏名又は名称(以下「譲受け予定者の氏名等」という。)は、公にされている情報であると認められる。
以上のことを踏まえ、譲受け予定者が個人の場合についてみると、譲受け予定者の氏名等は、個人に関する情報で特定の個人を識別できるものであることから、条例7条2号本文に該当すると認められるが、上記のとおり公にされている情報であることから、同号ただし書イに該当し、開示すべきである。
次に、譲受け予定者が法人である場合についてみると、譲受け予定者の氏名等は公にされている情報であることから、開示したとしても当該法人の競争上又は事業運営上の地位を損なうとは認められず、条例7条3号本文に該当しないことから、開示すべきである。

b 「建築施設の部分を譲り受けることとなる者」の住所について
この情報は、譲受け予定者の住所であり、譲受け予定者が個人の場合には、個人に関する情報で、特定の個人を識別できるものであることから、条例7条2号本文に該当する。次に同号ただし書該当性を検討すると、審査会が本件対象公文書と不動産登記簿を照合したところ、不動産登記簿で公示されている住所と公示されていない住所があることが認められた。したがって、公示されている住所については、法令により公にされているものと認められ、同号ただし書イに該当することから開示すべきである。しかしながら、不動産登記簿で公示されていない住所は、同号ただし書イには該当せず、その内容及び性質から同号ただし書ロ及びハのいずれにも該当しないので非開示が妥当である。
また、譲受け予定者が法人である場合には、建築施設の部分を譲り受けることとなる者の住所は、全て不動産登記簿で公示されており、公にしたとしても当該法人の競争上又は事業運営上の地位を損なうとは認められず、条例7条3号本文に該当しないことから、開示すべきである。

c 「賃借り希望の申出をした者で施設建築物の一部を賃借りすることとなるものに関する事項」の氏名及び「施設建築物の一部を賃借りすることとなる者」の氏名又は名称及び住所について
これらの情報は、譲受け予定者から施設建築物の一部を賃借りする者の氏名及び住所であり、賃借りする者が個人の場合は、特定の個人を識別できるものであり、条例7条2号本文に該当すると認められ、不動産登記簿で公示されているものではなく、一般には公にされていないことから、同号ただし書イに該当せず、その内容及び性質から同号ただし書ロ及びハにも該当しないので、非開示が妥当である。
また、賃借りする者が法人の場合には、これらの情報を開示すると、一般には公にされていない当該法人の事業を行う上での内部管理情報が明らかになり、競争上又は事業運営上の地位を損なうものであることから、条例7条3号本文に該当すると認められ、その内容及び性質から同号ただし書のいずれにも該当しないので、非開示が妥当である。

d 「施設建築物の一部の専用部分」の欄の「階」、「番号」、「床面積」及び「用途」について
これらの情報は、譲受け予定者が譲り受ける資産の情報であり、譲受け予定者が個人の場合には、譲受け予定者の氏名等が開示されることから、特定の個人を識別できるものであり、条例7条2号本文に該当すると認められ、また、不動産登記簿で公示されているものではなく、一般には公にされていないことから同号ただし書イに該当せず、その内容及び性質から同号ただし書ロ及びハにも該当しないので非開示が妥当である。
また、譲受け予定者が法人の場合には、これらの情報を開示すると、一般には公にされていない当該法人の財産状況が明らかになり、競争上又は事業運営上の地位を損なうものであることから、条例7条3号本文に該当すると認められ、その内容及び性質から同号ただし書のいずれにも該当しないので非開示が妥当である。

e 「施設建築物の一部の共用部分の共有持分」及び「施設建築敷地の共有持分」について「施設建築物の一部の共用部分の共有持分」は、施設建築物の一部を譲り受ける又は賃借りする施設建築物の共有部分の廊下、階段、昇降機、その他の持分割合であり、「施設建築敷地の共有持分」は、譲受け予定者が譲り受ける予定の敷地の共有持分の割合で、いずれも専用部分の床面積の割合により決まるものである。したがって、譲受け予定者が個人の場合には、これらを公にすると特定個人の資産規模など財産状況が明らかになり、譲受け予定者の氏名等が開示されることから、特定の個人を識別でき、条例7条2号本文に該当すると認められ、これは、不動産登記簿で公示されているものではなく、一般には公にされていないことから、同号ただし書イに該当せず、その内容及び性質から同号ただし書ロ及びハにも該当しないので非開示が妥当である。
また、譲受け予定者が法人の場合には、これらの情報を開示すると、一般には公にされていない当該法人の財産状況が明らかになり、競争上又は事業運営上の地位を損なうものであることから、条例7条3号本文に該当すると認められ、その内容及び性質から同号ただし書のいずれにも該当しないので非開示が妥当である。

f 「建築施設の部分の概算額」について
(略)


g 「建築施設の部分を譲り受けることとなる者の宅地、借地権若しくは建築物又は施設建築物の一部を賃借りすることとなる者の借家権の目的となっている建築物」の「宅地の所在及び地番、宅地の地目、地積及び持分」、「借地権の目的となっている宅地の所在及び地番並びに借地権の目的となっている宅地の面積」及び「建築物の所在、用途、家屋番号、構造の概要及び延べ面積」について
これらの情報は、譲受け予定者が従前に所有していた宅地と建築物、借地権の目的となっている宅地及び借家権の目的となっている建築物に関するものである。なお、本件では、譲受け予定者のうち法人のみが借地権の目的となっている宅地を有していることから、「借地権の目的となっている宅地の所在及び地番並びに借地権の目的となっている宅地の面積」については、条例7条3号該当性のみを判断する。
はじめに、譲受け予定者が個人の場合についてみると、「宅地の所在及び地番、宅地の地目、地積及び持分」並びに「建築物の所在、用途、家屋番号、構造の概要及び延べ面積」は、特定個人の財産に関する情報で、譲受け予定者の氏名等が開示されることから、特定の個人を識別でき、条例7条2号本文に該当する。次に同号ただし書該当性を検討すると、これらの情報は、「宅地の地積」を除き不動産登記簿で公示されているものであることから、法令により公にされているものと認められ、同号ただし書イに該当し、開示すべきである。しかし、「宅地の地積」は不動産登記簿で公示されている数値ではなく実測値であり、同号ただし書イに該当せず、その内容及び性質から同号ただし書ロ及びハにも該当しない。
次に、譲受け予定者が法人の場合についてみると、上記で述べたとおり「宅地の地積」を除いた情報は不動産登記簿で公示されており、これらを公にしたとしても、当該法人の競争上又は事業運営上の地位を損なうとは認められず、条例7条3号本文に該当しないことから開示すべきである。しかし「宅地の地積」については、実測値であり公示されている情報ではなく、これを公にすると当該法人の財産状況が明らかになり、競争上又は事業運営上の地位を損なうことから、条例7条3号本文に該当すると認められ、その内容及び性質から同号ただし書のいずれにも該当しない。また「借地権の目的となっている宅地の所在及び地番並びに借地権の目的となっている宅地の面積」について検討すると、審査会が本件対象公文書と不動産登記簿を突合したところ、「借地権の目的となっている宅地の所在及び地番」は、不動産登記簿で公示されていることが判明したことから、これを公にしても当該法人の競争上又は事業運営上の地位を損なうとは認められず、条例7条3号本文に該当しないことから、開示すべきである。しかし、「借地権の目的となっている宅地の面積」は、不動産登記簿で公示されている数値ではなく実測値であり、これを公にすると一般には明らかにされていない当該法人の財産状況が判明し、競争上又は事業運営上の地位を損なうことから、条例7条3号本文に該当すると認められ、その内容及び性質から同号ただし書のいずれにも該当しないので非開示が妥当である。

h 「宅地、借地権又は建築物の見積額の部分」について
これらの情報は、譲受け予定者が従前に所有していた宅地及び建築物並びに借地権の目的となっている宅地及び借家権の目的となっている建築物の見積額とそれらの合計額である。なお、本件では、譲受け予定者のうち法人のみが借地権の目的となっている宅地を有していることから、借地権の見積額については、条例7条3号該当性のみを判断する。
はじめに、譲受け予定者が個人の場合についてみると、宅地の見積額は、特定個人の財産に関する情報であり、譲受け予定者の氏名等が開示されることから、特定の個人を識別でき、条例7条2号本文に該当する。次に同号ただし書該当性について検討すると、第二種再開発事業における用地の取得は、任意買収を原則としているが、任意買収が困難な場合には土地収用法(昭和26年法律第219号)の収用手続による土地取得が認められていることから、地価公示法(昭和44年法律第49号)9条が適用になり、当該土地の取得価格を定めるときは、公示価格を規準としなければならないとされている。すなわち、本件における宅地の見積額は、近傍類似地の取引事例価格を基にして公示価格等との均衡を図りながら鑑定評価格等を参考に決定されているものであることから、売買当事者間の自由な価格交渉により決定されるものではなく、一般人であればおおよその見当をつけることができる一定の範囲の客観的な価格であると言える。したがって、宅地の見積額は、慣行として公にされることが予定されているものと言うことができ、条例7条2号ただし書イに該当し、開示すべきである。また、建築物の見積額についてみると、これは、建物の構造や内装などのグレード、工作物、動産、植栽などの状況を専門のコンサルタントに委託した調査結果を基に個別に算定されているもので、公にされることが予定されている情報とは認められない。したがって、建築物の見積額は、特定個人の財産状況に関する情報であり、譲受け予定者の氏名等が開示されることから、特定の個人を識別でき、条例7条2号本文に該当すると認められ、その内容及び性質から同号ただし書のいずれにも該当しない。さらに、宅地、借地権及び建築物の見積額の計についてみると、個人の譲受け予定者で借地権の目的となっている土地を有している者はいないため、この計を公にすると、上記で非開示と判断した建築物の見積額が明らかになることから、条例7条2号本文に該当し、その内容及び性質から同号ただし書のいずれにも該当しないので非開示が妥当である。
次に、譲受け予定者が法人の場合についてみると、上記のとおり宅地の見積額は公にされることが予定されているものであり、これを開示したとしても、当該法人の競争上又は事業運営上の地位を損なうとは認められず、条例7条3号本文に該当しないことから開示すべきである。しかし、借地権の見積額は、地主と借地人との合意による額を基準とした取分の割合により決まる額であり、公にされることが予定されている情報とは認められない。したがって、これを開示すると、借地権者との取分に係る当該法人の内部管理情報が明らかになり、競争上又は事業運営上の地位を損なうと認められ、条例7条3号本文に該当し、その内容及び性質から同号ただし書のいずれにも該当しないので非開示が妥当である。
建築物の見積額は、専門家による調査結果を基に損失補償基準に従い算定した適正な価格であることから、これを開示したとしても、当該法人の競争上又は事業運営上の地位が損なわれるとは認められないことから、条例7条3号本文には該当せず、開示すべきである。
宅地、借地権及び建築物の見積額の計は、借地権の対象となっている宅地を有している法人については、これを公にすると上記で非開示妥当と判断した借地権の見積額を明らかにしてしまうことから、条例7条3号本文に該当し、その内容及び性質から同号ただし書のいずれにも該当しない。しかし、借地権の目的となっている土地を有していない法人については、上記のとおり宅地と建築物の見積額を開示すべきと判断しており、さらに法人が当該土地を有しているか否かは既に開示されていることからすると、この計を公にしたとしても、開示となる情報の合計が明らかになるのみであることから、条例7条3号本文に該当せず、開示すべきである。

i 別紙「配置設計図」の氏名又は名称について
(略)


(ウ)本件対象公文書4について
(略)


(エ)本件対象公文書5及び6について
(略)


エ 条例7条6号該当性について
(略)


よって、「1 審査会の結論」のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
秋山 收、浅田 登美子、神橋 一彦、隅田 憲平

別表


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。