情報公開制度について考える

情報公開審査会の答申などを集めて載せています。

東京都情報公開審査会 答申第563号 「指定確認検査機関指定申請書」ほか2件

2012年03月01日 | 法人等に関する情報
別紙
諮問第644号
答 申


1 審査会の結論
「指定確認検査機関指定申請書」ほか2件の一部開示決定において非開示とした部分のうち、別表に掲げる部分は開示すべきであるが、その他の部分は非開示が妥当である。

2 異議申立ての内容
(1)異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号。以下「条例」という。)に基づき、異議申立人が行った「財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターについて(1)指定確認検査機関指定申請書、並びに、添付書類のうち役員及び確認検査員の氏名及び略歴を記載した書類 (2)同センターによる確認処分が○○区建築審査会で取り消された事件について、同センターに報告を求めた文書、及び、同センターから受けた文書(決裁文書、供覧文書を含む。)」の開示請求に対し、東京都知事が平成22年10月28日付けで行った一部開示決定について、その取消しを求めるというものである。

(2)異議申立ての理由
異議申立人が、異議申立書及び意見書で主張している異議申立ての主な理由は、次のように要約される。

ア 情報公開条例の前文では、条例における解釈及び運用の基本原則として、「新たな時代に向けて地方分権が進展する中で、公正で透明な都政の推進と都民による都政への参加の促進により、開かれた都政を実現し、日本国憲法が保障する地方自治を確立していくことが求められている。情報公開制度は、このような開かれた都政を推進していく上でなくてはならない仕組みとして発展してきたものである。東京都は、都民の『知る権利』が情報公開の制度化に大きな役割を果たしてきたことを十分に認識し、都民がその知ろうとする東京都の保有する情報を得られるよう、情報の公開を一層進めていかなければならない。このような考え方に立って、この条例を制定する。」と定めている。情報公開を原則として認め、行政の透明性を確保することにより適正な権力の執行を担保することが、条例の趣旨であると考えられる。

イ 財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターは、建築基準法に基づき東京都知事が指定した指定確認検査機関であり、東京都の全域において東京都や特別区、多摩地区の市など特定行政庁の確認検査の業務を代行している。東京都知事には、東京都知事が指定した指定確認検査機関において確認検査が適正かつ公正に実施されているかどうか、都民に対して十分に説明する義務がある。

ウ 建築基準法93条の2では、特定行政庁は「建築計画概要書」の閲覧請求があった場合には閲覧させなければならないと規定している。閲覧を請求できる者は限定されていない。誰でも特定行政庁に請求すれば、建築主、設計者、施工者、建築敷地の地名地番、建築計画の概要等の情報を得ることができる制度として運用されている。他自治体の情報公開審査会答申において、建築計画概要書に記載されている情報を開示しても、法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害することにはならないとの判断が示されている。

エ 最高裁判所平成17年(受)第702号損害賠償請求事件(平成19年7月6日判決)では、「建物は、そこに居住する者、そこで働く者、そこを訪問する者等の様々な者によって利用されるとともに、当該建物の周辺には他の建物や道路等が存在しているから、建物は、これらの建物利用者や隣人、通行人等(以下、併せて「居住者等」という。)の生命、身体又は財産を危険にさらすことがないような安全性を備えていなければならず、このような安全性は、建物としての基本的な安全性というべきである。そうすると、建物の建築に携わる設計者、施工者及び工事監理者は、建物の建築に当たり、契約関係にない居住者等に対する関係でも、当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負うと解するのが相当である。」と判示している。
特に、多数の者が利用する建築物において、建築計画が建築基準法の規定に適合しているかどうか、建物利用者や隣人、通行人等の生命、身体又は財産を危険にさらすことがないような安全性を備えているかどうかを検証して、責任の所在を明確にすることには公益性があると考える。

オ 建築基準法の規定は、建築主に対して、建築基準関係規定(建築基準法6条1項)に適合した建築物にすることを義務付けている。建築主が個人の場合であっても、建築基準法89条や93条の2などの規定で建築主の氏名を公にしているのは、建築主に責任があるからである。建築基準関係規定に適合しない建築物を建築した責任は建築主にあり、その責任について明確にすることが求められると考える。

カ 建築基準法93条の2の規定により、建築計画概要書は公にされている。本件マンションの建築計画概要書(建築確認取消後)の第二面には、本件マンションの建築確認について再取得が求められる状況が起きたことが示されている。また、本件マンションの建築計画概要書(建築確認取消前)には、処分取消しが○○区建築審査会の裁決によることが明記されている。
また、○○区は、本件マンションの建築確認が○○区建築審査会の裁決により取り消されたことを、国土交通省に報告している。国土交通省は、その報告文書の情報公開に応じており、建築主や設計者の情報を開示している。

キ これまで、実施機関では、建築基準法違反事例について、建築主の情報を開示している。本件マンションについて、これまでの開示決定と異なる事情があるならば、理由においてその事情を具体的に記載するべきと考える。

ク 本件マンションが分譲される際には、建築基準法に適合した建築計画となっているはずであり、建築主が風評被害を受けるとは考えられない。むしろ、分譲される際に、工事を中断していたこと及び中断していた理由を、個人消費者の権利保護のため公にするべきと考える。

3 異議申立てに対する実施機関の説明要旨
実施機関が、理由説明書及び口頭による説明において主張している内容は、次のとおりである。

(1)情報公開の原則について
「情報公開を原則として認め、行政の透明性を確保することにより、適正な権力の執行を担保することが、情報公開条例の趣旨である」という異議申立人の主張は、実施機関の見解と一致するものである。

(2)都民への説明義務について
「知事には、知事指定の指定確認検査機関が確認検査を適正かつ公正に実施しているか、都民に対して説明義務がある」という異議申立人の主張は、実施機関の見解と一致するものである。

(3)建築計画概要書の建築基準法に基づく閲覧と情報公開条例に基づく開示との関係について
「建築計画概要書は建築基準法93条の2により請求があった場合には閲覧させなければならないと規定されており、また、建築計画概要書記載情報の公開は、法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害することにはならないとの判断」が他自治体の情報公開審査会答申において既に示されているものであるとの異議申立人の主張については、以下の点で実施機関と見解が異なっている。

ア 建築基準法による閲覧制度と情報公開条例に基づく開示・非開示の考え方について
(ア)建築基準法93条の2による閲覧制度について
建築基準法93条の2による閲覧制度は、確認その他の建築基準法令の規定による処分に関する書類等について、当該処分等に係る建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがないものとして国土交通省令で定めるものについて閲覧の用に供することにより、「周辺住民の協力のもとに違反建築物を未然に防止するとともに、併せて違反建築物の売買をも防止しようとするものとして設けられた」(平成21年11月18日付国住指第3133号技術的助言)ものであり、同技術的助言に添付された「建築計画概要書等の閲覧に関する規定(例)」4条では、「建築計画概要書等を閲覧しようとする者(以下「閲覧者」という。)は、閲覧の対象となる建築物、建築設備又は工作物を特定する情報(所在地等)のほか、閲覧の目的、同時に閲覧する建築計画概要書等の数その他の必要な事項を記入した閲覧申込票を提出しなければならない。ただし、閲覧者が、やむを得ない理由により、建築物等を特定する情報等を記入することができない場合において、知事が当該閲覧の申請が建築基準法93条の2の規定の趣旨に適合するものであると認めるときは、この限りでない。」としている。
また、東京都建築基準法施行細則31条4号では、「建築物又は工作物を特定しない者」の建築計画概要書の閲覧を停止又は禁止することができる旨を規定している。
これらのことから、建築物の所在地等の特定がされない場合は、本制度における閲覧の対象とはならない。

(イ)情報公開条例における開示及び非開示の基本的な考え方
建築計画概要書は、建築基準法93条の2に閲覧制度が定められていることから、条例18条1項の規定により、条例に基づく閲覧の対象外であるが、建築基準法は建築計画概要書の写しの交付制度を設けていないことから、条例に基づく写しの交付の対象となる。ただし、建築基準法に基づく閲覧制度を潜脱することは許されないことから、(ア)のとおり、物件を特定して開示請求する必要がある。

イ 他自治体の情報公開審査会答申について
特定された建築計画についての案件であるので、建築計画を特定せずになされた情報開示請求に係る本件異議申立ての是非を判断する参考事例とはならないと考える。

(4)非開示決定部分の精査を必要とすることについて
異議申立人は、審査請求を提起されたことが分かる文言の記載のある建築計画概要書の一例を添付しており、このことにより本件で非開示とした情報は既に公になっているものと主張しているとも考えられる。しかしながら、既に述べたように建築計画概要書は建築計画を特定した上で建築基準法93条の2による閲覧又は条例に基づく開示請求を行えば得られる情報に過ぎず、条例7条2号ただし書イに規定する「公にされ、又は公にすることが予定されている情報」には該当しない。

(5)風評被害について
建築確認は取消後再度取得されたとしても、かつて建築審査会で取り消されたという事実は残る。その結果、完成した建築物は適法に建築されていたとしても、かつて取消処分があった建築物という認識のもと様々な憶測を呼ぶこととなり、価値評価が損なわれる。また、建築主に対しても同様に多様な捉え方がなされ、建築主の社会的地位が損なわれる。

4 審査会の判断
(1)審議の経過
審査会は、本件異議申立てについて、以下のように審議した。
年月日審議経過
平成23年 1月31日諮問
平成23年 3月30日実施機関から理由説明書収受
平成23年 5月 1日異議申立人から意見書収受
平成23年 6月 6日異議申立人から追加意見書収受
平成23年 9月29日実施機関から説明聴取(第122回第一部会)
平成23年10月20日審議(第123回第一部会)
平成23年11月17日審議(第124回第一部会)
平成23年12月15日審議(第125回第一部会)
平成24年 1月26日審議(第126回第一部会)


(2)審査会の判断
審査会は、異議申立ての対象となった公文書並びに実施機関及び異議申立人の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。

ア 建築確認手続について
建築基準法(以下「法」という。)6条及び6条の2は、建築主が特定の建築物を建築しようとする場合には、当該工事に着手する前に、その建築計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて、建築主事又は法77条の18から21により指定を受けた指定確認検査機関による確認を受けなければならない旨規定している。そして、建築主事又は指定確認検査機関は、建築計画が建築基準関係規定に適合していると認めた場合に確認処分を行い、その証明として確認済証を建築主に交付する。このうち指定確認検査機関の行った確認処分を証する確認済証については、法6条の2第11項で、特定行政庁は、当該確認処分に係る建築計画が建築基準関係規定に適合しないと認めるときは、当該建築物の建築主及び当該確認済証を交付した指定確認検査機関にその旨を通知しなければならず、この場合に当該確認済証は、その効力を失う旨規定している。
また、法94条1項は、建築主事又は指定確認検査機関が行った処分又はこれに係る不作為に不服がある者は、当該処分又は不作為に係る建築物又は工作物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた市町村又は都道府県の建築審査会に対して審査請求をすることができる旨規定している。

イ 本件対象公文書について
本件開示請求に係る対象公文書は、「指定確認検査機関指定申請書」、「役員及び確認検査員の略歴書」、「平成22年○月付『建築確認取消しの裁決について(報告)』」、「○○区建築審査会裁決」の写し、「確認済証」の写し及び「確認申請書(建築物)(第一面から第三面)」の写しであり、実施機関は本件開示請求に対し一部開示決定を行っている。このうち、異議申立ての対象となった公文書は「平成22年○月付『建築確認取消しの裁決について(報告)』」(以下「本件対象公文書1」という。)、「○○区建築審査会裁決」の写し(以下「本件対象公文書2」という。)、「確認済証」の写し(以下「本件対象公文書3」という。)及び「確認申請書(建築物)(第一面から第三面)」の写し(以下「本件対象公文書4」という。)である。
本件対象公文書1から4は、特定の建築計画に関し、指定確認検査機関が確認処分を行った後、○○区の建築審査会に対し、確認処分の取消しを求める審査請求が行われた結果、当該審査会の裁決により処分が取り消された案件に関する報告文書である。実施機関の説明によれば、本件において確認処分を行った指定確認検査機関は、東京都知事により指定されていることから、法に定めはないものの、当該機関が任意で実施機関に対し処分が取り消された旨の報告を行っており、そのため当該文書を保有しているとのことである。

ウ 本件非開示情報について
本件対象公文書1から4のうち、実施機関が一部開示決定において条例7条2号に該当するとして非開示とした部分は、以下のとおりである。
(ア)本件対象公文書1のうち、「審査請求人の住所」
(イ)本件対象公文書2のうち、「審査請求人の住所及び氏名」、「審査請求人補佐人の所属法人名及び氏名」、「処分庁代理人の氏名」及び「参加人代理人の氏名」(以下(ア)及び(イ)の非開示部分を併せて「本件非開示情報1」という。)また、実施機関が条例7条3号に該当するとして非開示とした部分は、以下のとおりである。
(ウ)本件対象公文書1のうち、「審査請求に係る建築物の建築確認番号及び日付」及び「建築予定地名・地番」
(エ)本件対象公文書2のうち、「参加人(設計者)の所在、名称、代表者役職及び氏名」、「審査請求に係る建築物の建築確認番号及び日付」、「建築主の名称」及び「建築予定地名・地番及び旧住居表示」
(オ)本件対象公文書3のうち、審査請求に係る建築物の「建築確認番号及び日付」、「建築主の名称及び代表者名」、「建築場所、設置場所又は築造場所」、「建築物の名称」及び「構造計算適合性判定の結果を記載した通知書の番号及び交付年月日」
(カ)本件対象公文書4のうち、「建築主の会社名、代表者名及び所在地」、「代理者の会社名、氏名及び所在地」、「設計者の会社名、氏名及び所在地」、「手数料請求先の会社名、代表者名及び所在地」、「請求書送付先の会社名、担当者名及び住所」、「消防署同意年月日及び同意番号」、審査請求に係る建築物の「建築確認番号及び日付」、「建築主の氏名、郵便番号、住所及び電話番号」、「代理者の氏名、建築士事務所名、郵便番号、所在地、電話番号、FAX番号、建築士登録番号及び建築士事務所登録番号」、「代表となる設計者の氏名、建築士事務所名、郵便番号、所在地、電話番号、建築士登録番号及び建築士事務所登録番号」、「その他の設計者の氏名、建築士事務所名、郵便番号、所在地、電話番号、建築士登録番号及び建築士事務所登録番号」、「代表となる建築設備の設計に関し意見を聴いた者の氏名、勤務先、郵便番号、所在地、電話番号及び登録番号」、「代表となる工事監理者の氏名、建築士事務所名、郵便番号、所在地、電話番号、建築士登録番号及び建築士事務所登録番号」、「その他の工事監理者の氏名、建築士事務所名、郵便番号、所在地、電話番号、建築士登録番号及び建築士事務所登録番号」、「備考(工事名称)」及び「構造設計一級建築士の建築士証交付番号及び氏名」(以下(ウ)から(カ)の非開示部分を併せて「本件非開示情報2」という。)
このほか、実施機関は、建築主、代理者、設計者、指定確認検査機関並びに当該機関の決裁者及び係員の印影(以下併せて「本件非開示情報3」という。)を、条例7条4号該当を理由に非開示とした。
以下、これらの非開示情報1から3について、条例7条2号、3号及び4号の該当性を検討する。

エ 本件非開示情報1の非開示妥当性について
条例7条2号本文は、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」を非開示情報として規定し、同号ただし書において、「イ 法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」、「ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」、「ハ 当該個人が公務員等…である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」のいずれかに該当する情報については、同号本文に該当するものであっても開示しなければならない旨規定している。
本件非開示情報1は、いずれも個人に関する情報で特定の個人を識別できる情報であり、条例7条2号本文に該当することから、同号ただし書の該当性について検討する。
本件非開示情報1のうち、「処分庁代理人の氏名」及び「参加人代理人の氏名」について異議申立人は、処分庁代理人は確認検査員であり、参加人代理人は実質的な設計担当者で建築士であることから、公にすることが予定されている情報であり開示すべきである旨主張している。
審査会が本件対象公文書2を見分したところ、処分庁代理人の部分には、処分庁(指定確認検査機関)に勤務する業務員の氏名が記載されているが、処分庁代理人は確認検査員がなるべきものであるとの法令上の規定もなく、あくまでも処分庁から指名されたことにより代理人となったものと認められ、法令等の規定又は慣行として公にされている情報ではない。参加人代理人の部分についても同様に、参加人に関係のある個人の氏名が記載されているが、参加人代理人は建築士がなるべきものであるとの法令上の規定や慣行はない。
以上により、処分庁代理人及び参加人代理人の氏名は、条例7条2号ただし書イに該当せず、その内容及び性質から、同号ただし書ロ及びハのいずれにも該当しないため、非開示が妥当である。

オ 本件非開示情報2の非開示妥当性について
条例7条3号本文は、「法人(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれると認められるもの」を非開示情報として規定している。また、同号ただし書は、「イ 事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある危害から人の生命又は健康を保護するために、公にすることが必要であると認められる情報」、「ロ 違法若しくは不当な事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある支障から人の生活を保護するために、公にすることが必要であると認められる情報」、「ハ 事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある侵害から消費生活その他都民の生活を保護するために、公にすることが必要であると認められる情報」のいずれかに該当する情報については、同号本文に該当するものであっても開示しなければならない旨規定している。
実施機関は、本件非開示情報2を開示することとなれば、審査請求が提起された建築物が特定され、建築確認処分が取り消されたという事実が明らかになり、風評被害を招くおそれがあり、当該建築物の価値評価や建築主及び設計者等の社会的地位が損なわれるため、条例7条3号に該当する旨主張する。
これに対して異議申立人は、法の規定は建築主に対して建築基準関係規定に適合した建築物にすることを義務付け、それゆえ建築主の氏名が公にされていることや、分譲される建築物は法に適合しているはずであり、建築確認処分が取り消されたことで建築主や設計者等が風評被害を受けるとは考えられないことから、開示すべきである旨主張している。
この点について審査会において検討する。法1条の規定をみると、「建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする」と定められている。そのため、前記アで述べた建築確認、特定行政庁による建築確認処分の取消し及び建築審査会への審査請求の手続は、この目的を達成するために設けられたものと解される。また、前記アで説明した一連の規定については、建築基準関係規定に違反する建築物の出現を未然に防止することを目的としたものということができ、適法な建築物を建てるという義務は、建築確認の制度はもとより、建築審査会における建築確認処分に対する事後的な是正手続を含めた一連の過程の中で履行されることが予定されていると考えられる。
以上のことを前提として本件非開示情報2の条例7条3号該当性を検討すると、本件においては、設計における構造等が法の基準に適合しないと判断されるに至ったため確認処分の取消しが行われたものであり、この間、建築士又は設計者等に手続上の違法があったわけではない。また、確認処分が取り消された場合には、当該確認処分に係る建築計画の内容を法に適合するよう修正し、再度確認申請をすることも可能であることを考慮すると、確認処分が取り消されたという事実が明らかとなっても、そのことをもって建築主や設計者等が不当な評価を受けることは想定できない。確かに、実施機関が主張するとおり、審査請求が提起された建築物が特定されることで風評被害が生じる可能性があることは否定しないが、その可能性は抽象的なものに留まり、条例7条3号に該当し非開示とするほどの具体的な支障を及ぼすと考えることはできない。
したがって、本件非開示情報2は条例7条3号に該当せず、開示すべきである。

カ 本件非開示情報3の非開示妥当性について
条例7条4号は、「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」を非開示情報として規定している。本件非開示情報3を開示することとなると、偽造などの犯罪に使用される可能性があり、押印者の財産への不法な侵害を招くなど、犯罪の予防に支障が生じるおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由があると認められることから、条例7条4号に該当し、非開示が妥当である。
よって、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
秋山 收、浅田 登美子、神橋 一彦、隅田 憲平

別表 開示すべき部分
(略)

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。