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横浜市情報公開・個人情報保護審査会 横情審答申第787号 中央図書館司書補助業務への業務委託導入の…

2010年07月16日 | 行政文書該当性/文書の特定/理由付記
横浜市情報公開・個人情報保護審査会答申
(答申第787号)
平成22年7月16日
横情審答申第787号

平成22年7月16日
横浜市教育委員会 様

横浜市情報公開・個人情報保護審査会
会 長 三 辺 夏 雄

横浜市の保有する情報の公開に関する条例第19条第1項の規定に基づく諮問について(答申)

平成22年5月13日教図サ第78号による次の諮問について、別紙のとおり答申します。
「中央図書館司書補助業務への業務委託導入の方針について(平成21年度教図サ第351号)」、「横浜市中央図書館司書補助業務委託契約について(平成21年度教図サ第404号)」及び「委託業者選定調書(平成21年12月11日決裁、12月14日開催分)」の一部開示決定に対する異議申立てについての諮問

別 紙
答 申


1 審査会の結論
横浜市教育委員会が、「中央図書館司書補助業務への業務委託導入の方針について(平成21年度教図サ第351号)」、「横浜市中央図書館司書補助業務委託契約について(平成21年度教図サ第404号)」及び「委託業者選定調書(平成21年12月11日決裁、12月14日開催分)」を一部開示とした決定は、理由付記に不備があり、取り消すべきである。

2 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、「中央図書館司書補助業務への業務委託導入の方針について(平成21年度教図サ第351号)」(以下「文書1」という。)、「横浜市中央図書館司書補助業務委託契約について(平成21年度教図サ第404号)」(以下「文書2」という。)及び「委託業者選定調書(平成21年12月11日決裁、12月14日開催分)」(以下「文書3」という。文書1から文書3までを総称して、以下「本件申立文書」という。)の開示請求に対し、横浜市教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成21年12月25日付で行った一部開示決定(以下「本件処分」という。)の取消しを求めるというものである。

3 実施機関の一部開示理由説明要旨
本件申立文書については横浜市の保有する情報の公開に関する条例(平成12年2月横浜市条例第1号。以下「条例」という。)第7条第2項第5号及び第6号イに該当するため一部開示としたものであって、その理由は次のように要約される。

(1) 条例第7条第2項第5号の該当性について
指名競争入札では、入札参加の通知がされ、入札金額を積算するための資料(仕様書及び業務要領)を業者に提示してから2~4週間程度で入札となる。積算作業に公平性を保つために、積算作業は入札参加業者間で大きな時間差が生じないように提供する。積算作業は、資料の読み込み、委託者への質問の提示、業務量の積算、経費の積算、入札金額の決定という作業を伴うため時間を要する。他の入札参加業者より早く情報を入手することにより、早く積算作業に着手することになり有利になる。
以上のとおり、非開示とした部分を開示すると、特定の入札参加業者に不当に利益を与え、又は不利益を及ぼすおそれがあるため、本号に該当し、非開示とした。

(2) 条例第7条第2項第6号イの該当性について
今回非開示とした総事業概算額、執行予定概算額、概算金額、仕様書及び業務要領(業務時間帯及び中央図書館業務実績を含む。)は、その情報を入手することにより、図書館の設定金額を高い精度で推測することが可能となる。指名競争入札では、図書館の設定金額を超えた金額で入札した場合は、当然受託することができないが、図書館の設定金額を知ることで、具体的な積算の作業をすることなく入札に参加することが可能となる。積算作業は、その作業をすることで、おのずと自社で受託が可能かを検討することになるが、積算作業なしに入札が可能となれば、受託不可能な業者が受託する可能性もあり、委託業務の安定的な遂行が見込めない。受託業者が遂行不能となれば、受託期間中に業者変更の手続が必要となり、図書館を利用する市民に多大な迷惑がかかることになる。
また、推薦業者名については、談合を防止する観点から、入札当日まで入札参加業者がそれぞれ他の入札参加業者について知ることがないように配慮する必要がある。推薦業者名を開示してしまうと、入札参加業者間の談合を引き起こし、結果として高値での落札を招くことになる。さらに、移動図書館業務が可能であることと、推薦業者数を開示することで、両方の情報から推薦業者名を特定することが可能となり、推薦業者名を開示することと同様の影響を生じるおそれがある。
以上のとおり、非開示とした部分を開示すると、実施機関の契約に係る事務に関し、実施機関の財産上の利益を不当に害するおそれがあるため、本号イに該当し、非開示とした。

4 異議申立人の本件処分に対する意見
異議申立人が、異議申立書において主張している本件処分に対する意見は、次のように要約される。

(1) 本件処分を取り消し、開示することを求める。

(2) 文書3の「担当課の業務選定理由」2の非開示部分は、一部開示決定通知書に記載された非開示とした部分である「概算金額、推薦業者名及び業者数」には当たらないのではないか。

(3) 「総事業概算額」、「執行予定概算額」及び「概算金額」は「予定価格」とは違う概算額であり、非開示とする理由が分からない。

(4) 推薦業者名及び業者数を非開示とすることは、競争入札である以上理解できない。

(5) 「仕様書」及び「業務要領」を非開示とすることは、競争入札である以上理解できない。また、添付資料のうち、業務委託時間帯及び中央図書館業務も非開示と決定していることも理解できない。

5 審査会の判断
(1) 本件申立文書について
本件申立文書は、横浜市中央図書館における司書補助業務委託を実施するにあたって作成された方針伺(文書1)、執行伺(文書2)及び委託業者選定調書(文書3)である。
実施機関は、文書1のうち総事業概算額、文書2のうち執行予定概算額、仕様書及び業務要領、文書3のうち概算金額、推薦事業者名及び業者数を非開示としている。

(2) 本件処分の理由付記について
当審査会において本件処分における一部開示決定通知書を見分したところ、理由付記の要件を満たしているかについて疑問があったため、以下のとおり検討した。

ア 条例第13条第1項では、行政文書の一部又は全部を開示しないときは、その理由を決定通知書に記載しなければならない旨を規定している。このように決定通知書にその理由を付記すべきとしているのは、非開示理由の有無について実施機関の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、非開示の理由を開示請求者に知らせることによって、その不服申立てに便宜を与える趣旨に出たものというべきである。このような理由付記制度の趣旨にかんがみれば、決定通知書に付記すべき理由としては、開示請求者において、条例第7条第2項各号所定の非開示情報のどれに該当するのかをその根拠とともに了知し得るものでなければならず、単に非開示の根拠規定を示すだけでは、当該行政文書の種類、性質等とあいまって開示請求者がそれらを当然知り得るような場合は別として、条例第13条第1項の要求する理由付記としては十分でないといわなければならない(最高裁判所平成4年12月10日第一小法廷判決(平成4年(行ツ)第48号警視庁情報非開示決定処分取消請求事件)参照)。

イ そこで、本件処分における一部開示決定通知書の理由の記載が、開示請求者において非開示情報のどれに該当するのかをその根拠とともに了知し得るものといえるかについて、以下検討する。
本件処分は、条例第7条第2項第5号及び第6号イに該当するとして、本件申立文書の一部を非開示としたものであり、当該規定を適用する理由としては、一部開示決定通知書に、「開示することにより、特定の者に不当に利益を与え、若しくは不利益を与えるおそれがあり、また、契約事務に関し市の財産上の利益を不当に害するおそれがあるため。」と記載されているが、この理由の記載は、根拠規定とする第5号の条文である「公にすることにより、・・・特定の者に不当に利益を与え、若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの」及び第6号イの条文である「契約・・・に係る事務に関し、市・・・の財産上の利益・・・を不当に害するおそれ」をほぼ引き写したものとなっている。しかし、なぜそれを開示することにより、特定の者に不当に利益を与え、又は不利益を与えるおそれがあり、及び、契約事務に関し市の財産上の利益を不当に害するおそれがあるのかが明らかではなく、本件処分における理由の記載は、開示請求者において本件申立文書が第5号及び第6号イに該当する根拠を了知し得るものであったということはできない。

ウ したがって、本件処分における理由の記載は充分なものとはいえず、条例第13条第1項の定める理由付記の要件を欠くものであると認められる。

(3) 結論
以上のとおり、実施機関が本件申立文書を一部開示とした決定は、理由付記に不備があり、取り消すべきである。

(第三部会)
委員 藤原静雄、委員 青木孝、委員 早坂禧子

《 参 考 》
審査会の経過




年月日審査の経過
平成22年5月13日・実施機関から諮問書及び一部開示理由説明書を受理
平成22年5月19日
(第171回第二部会)
平成22年5月21日
(第102回第三部会)
平成22年5月27日
(第167回第一部会)
・諮問の報告
平成22年6月4日
(第103回第三部会)
・審議
平成22年6月18日
(第104回第三部会)
・審議


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