情報公開制度について考える

情報公開審査会の答申などを集めて載せています。

川崎市情報公開・個人情報保護審査会 諮問第222・223号 建築指導課職員が2008年3月5日に…

2009年03月09日 | 個人に関する情報
1 審査会の結論
実施機関は、諮問第223号の対象公文書について、最下段の署名及び印影を除き、不開示部分を開示すべきである。

2 異議申立ての趣旨及び経緯
(1)異議申立人は、平成20年3月14日付けで、川崎市情報公開条例(平成13年川崎市条例第1号。以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関川崎市長(以下「実施機関」という。)に対し、建築指導課職員が2008年3月5日にした関連するすべての調査聴取内容の記録、添付写真の関連の写しの交付を求める開示請求を行った。
実施機関は、当該請求に係る対象公文書を、平成20年3月6日付けで作成された調査地のブロック塀の積替えについて担当課職員が行った事情聴取の摘録(以下「摘録」という。)と特定し、条例第8条第1号に該当するとして、平成20年3月28日付けで開示請求拒否処分を行った。
異議申立人は、平成20年4月2日付けで、「氏名、住所など黒塗りして公開できる。」また、「住民説明会で公開された件に係る内容で保有個人(情)報の内容を市民は知る事ができる。」として部分開示を求めて異議申立てを行った(当審査会諮問第222号事件)。

(2)異議申立人は、平成20年3月14日付けで、条例第7条の規定に基づき、実施機関に対し、建築指導課職員が2008年3月5日にした関連するすべての調査聴取内容の記録、添付写真の関連の写しの交付を求める開示請求を行った。
実施機関は、当該請求に係る対象公文書を「摘録」と特定し、条例第8条第1号に該当するとして平成20年3月28日付けで開示請求拒否処分を行ったが、その後、平成20年5月22日付けで、先に行った拒否処分を撤回し、対象公文書のうち氏名、印影、事業名称の部分を不開示とする部分開示処分を行った。
異議申立人は平成20年6月13日付けで、条例第8条第1号イに該当するため全部開示が認められる内容であるとして異議申立てを行った(当審査会諮問第223号事件)。

3 異議申立人の主張要旨
平成20年8月14日付け意見書及び同年11月10日実施の口頭意見陳述聴取によれば、異議申立人の主張の概要は、次のとおりである。

(1)諮問第222号関係
異議申立人は建築基準法第44条第1項に規定された道路内の建築制限に違反した地権者及び施工業者の取締りを求めて川崎市に通報した。通報を受けて担当課職員が現地調査を行い、関係者に事情聴取を行った。本件開示請求の対象文書はこの調査に関する文書である。本来ならば、法に違反した工事が行われていれば、施主又は施工業者に対し工事停止命令等の行政指導又は行政処分が執行されるはずであるが、何の処分も行われなかった。本件の開示請求拒否処分は実施機関が建築基準法違反及び自身の非違行為を隠蔽する目的で対象公文書を開示しなかったということである。
後日、拒否処分が変更されて部分開示されたが、当初の拒否処分についてもひとつの処分として審査してもらいたい。

(2)諮問第223号関係
本件開示請求の対象文書は建築基準法違反者の自供を記録した文書であり、関係者には公開されるべきである。
事情聴取を受けている関係者は建築基準法違反を認識しており、川崎市もその内容を聞いているにもかかわらず、何の処分も行われていない。その状況を是正し、地域の秩序を守るため、告発をするつもりである。しかし、誰が話しているかが特定できないと、違反を認識している本人が特定できないので告発できない。
そのため、不開示となっている氏名の部分も開示を求める。

4 実施機関の主張要旨
平成20年7月24日付け処分理由説明書及び同年10月20日実施の事情説明聴取によれば、実施機関の主張の概要は、次のとおりである。

(1)諮問第222号関係
拒否処分の対象となった文書は、建築基準法の違反行為を行っているとの通報を異議申立人から受けて、市職員が現場調査を行い、敷地北側の通路地等におけるブロック塀の積替えを行っている関係権利者から事情聴取をした内容の摘録である。
拒否処分の根拠は、条例第8条第1号に該当するためである。個人の氏名、印影、事業名称は個人を識別できる情報と判断した。関係権利者の発言部分は、特定の個人を識別できる情報ではないが、個人の考え方が記録されており、個人の思想、信条等に該当するもので、公にすることにより個人の権利利益を害するおそれがある情報と判断した。これらの部分を不開示として残りの部分を部分開示したとしても有意の情報とはならないため、開示請求の拒否処分を行ったものである。

(2)諮問第223号関係
部分開示処分の対象となった文書は諮問第222号の対象文書と同じ摘録である。
当該文書には、前述のとおり個人の氏名、印影、事業名称が含まれており、これらについては個人を識別できる情報(条例第8条第1号該当)として不開示とした。
拒否処分を行った際に、特定の個人を識別できる情報ではないが個人の考え方が記録されており、個人の思想、信条等に該当するもので、公にすることにより個人の権利利益を害するおそれがある情報と判断した部分については、検討した結果、建築基準法並びに関係権利者による同意書に基づくセットバックの認識についての確認であり、公にすることにより個人の権利利益を害するおそれのある情報ではなく、また、第三者(関係権利者)の了解が得られれば、特定の個人を識別できる情報を除いて開示できると判断したものである。

5 審査会の判断
(1)諮問第222号と諮問第223号は、同一の公文書開示請求に対する異議申立てであり、請求対象公文書について、実施機関が拒否処分を行ったことに対する異議申立てが諮問第222号であり、その後に実施機関が処分を変更し、部分開示処分を行ったことに対する異議申立てが諮問第223号である。したがって、諮問第222号と諮問第223号は事実上同一の諮問であることから併合して審理し、答申する。
そして、上記2つの諮問がなされた経緯から、審査会は諮問第223号について結論を出せば足りると判断した。

(2)実施機関は、請求対象公文書である「摘録」の記載事項のうち、調査地(事業名称)、氏名、印影について、「個人の権利利益を害するおそれがあるもの。また、特定の個人を識別することができるもの。」(条例第8条第1号)であるとして、不開示とした。しかし、不開示とされた調査地(事業名称)、氏名は事業を営む個人の当該事業に関する情報であるため、条例第8条第1号において不開示とする個人情報から除外されている。したがって、調査地(事業名称)、氏名は開示すべきである。しかし、最下段の署名及び印影については、事業を営む個人に関する情報であって、開示することにより、当該個人の権利、利益を害するおそれがあるといえるため(条例第8条第2号ア)、不開示とした実施機関の結論は妥当である。

(3)なお、異議申立人は、不開示とした部分の開示を求める根拠として条例第8条第1号イ及び同条第5号を挙げている。しかし、上記のとおり、不開示とされた調査地(事業名称)、氏名は、条例第8条第1号において不開示とする個人情報から除外されていることから開示されるべきなのであり、同条第1号イの「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」であることを理由に開示されるべきものではない。また、同条第5号は、「公にすることにより、人の生命、身体、財産又は社会的な地位の保護、犯罪の予防、犯罪捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認められる情報」については開示しない旨定めたものであるから、不開示とした部分の開示を求める根拠とはなり得ない。

(4)よって、実施機関は、対象公文書である「摘録」について、不開示とした情報のうち、最下段の署名及び印影を除き、開示すべきである。

以上の次第で、審査会の結論に記載のとおり答申する。

川崎市情報公開・個人情報保護審査会(五十音順)

委員 鈴 木 庸 夫
委員  岡 香
委員 安 冨 潔
委員 葭 葉 裕 子

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