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横浜市情報公開・個人情報保護審査会 横情審答申第756号 泉区地区経営委員会活動拠点借上補助金の…

2010年01月08日 | 個人に関する情報
横情審答申第756号
平成22年1月8日

横浜市長 林 文子 様

横浜市情報公開・個人情報保護審査会
会長 三辺 夏雄

横浜市の保有する情報の公開に関する条例第19条第1項の規定に基づく諮問について(答申)

平成21年7月30日泉政第518号による次の諮問について、別紙のとおり答申します。

「泉区地区経営委員会活動拠点借上補助金の交付について(平成20年度泉政第657号)」の一部開示決定に対する異議申立てについての諮問

別 紙
答 申


1 審査会の結論
横浜市長が「泉区地区経営委員会活動拠点借上補助金の交付について(平成20年度泉政第657号)」を一部開示とした決定は妥当ではなく、開示すべきであるが、事務所の写真及び会則別表が対象行政文書としては存在しないとして開示しなかったことは妥当である。

2 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、「泉区地区経営委員会活動拠点借上補助金の交付について(平成20年度泉政第657号)」(以下「本件申立文書」という。)の開示請求(以下「本件請求」という。)に対し、横浜市長(以下「実施機関」という。)が平成21年4月24日付で行った一部開示決定(以下「本件処分」という。)の取消しを求めるというものである。

3 実施機関の一部開示理由説明要旨
本件申立文書については、横浜市の保有する情報の公開に関する条例(平成12年2月横浜市条例第1号。以下「条例」という。)第7条第2項第2号及び第4号に該当するため一部を非開示としたものであって、その理由は次のように要約される。

(1) 事務所の写真及び会則別表の不存在について
泉区地区経営委員会活動拠点借上補助金交付要領(平成20年9月泉政第538号。以下「要領」という。)では、泉区地区経営委員会活動拠点借上補助金交付申請書(第1号様式。以下「申請書」という。)に添付しなければならない書類を定めており、その中には事務所の写真が含まれている。したがって、補助金の交付申請時に事務所の写真が添付されていなければ、申請者に当該写真の提出を求めるべきであったといえるが、富士見が丘地区課題検討委員会(以下「申請団体」という。)の事務所については、担当職員は正式の補助金申請に先立って事務所の写真をもらい受けており、また現地確認をして直接現況を確認していた。これらのことから、申請書の添付書類に事務所の写真が不足していることに気付かないまま事務処理を行ったものである。
また、申請書に添付すべき書類には、団体の規約類が含まれており、これに該当する書類として本件申立文書には富士見が丘地区課題検討委員会会則(以下「会則」という。)が添付されている。その会則第3条に「本会は・・・別表に定める各種団体の代表で構成することとする。」との規定があり、会則には別表があることが分かるが、実際に申請書に添付して提出された会則には別表がついておらず、そのことには気付かずに事務処理を進めたものである。
異議申立人(以下「申立人」という。)は、会則別表がなければ委員総数の把握が困難になり、会議が成立したかどうかの判定ができないことになると主張しているが、別に提出されている地区経営委員会等届出書により申請団体の構成を把握できており、会則別表が添付されなかったことによる特段の不都合はない。
活動拠点等の補助金交付にあたっては、職員による現地確認等、地区経営委員会等届出書により委員会の構成を確認して適正に補助金の交付を行ったものと考えている。
以上のとおり、事務所の写真及び会則別表は、本件申立文書には含まれていない。

(2) 条例第7条第2項第2号及び第4号の該当性について
今回非開示とした個人の住所、氏名、賃料及び個人印の印影については、個人に関する情報であって、特定の個人を識別できるもの、個人等の財産権が侵害されるおそれがあるものであることから非開示とした。

4 申立人の本件処分に対する意見
申立人が、異議申立書において主張している本件処分に対する意見は、次のように要約される。

(1) 本件処分の取消しを求める。

(2) 要領によると、申請書には「事務所の位置図、平面図及び写真」の書類を添付しなければならないと定められている。にもかかわらず、申立人に開示された申請書の添付書類には事務所の写真が欠落している。事務所の写真が存在しない合理的な理由は考えにくい。

(3) 会則第3条第1項には、「本会は富士見が丘地区連合エリア内自治会・町内会など、別表に定める各種団体の代表で構成することとする。」とあるが、開示された同会則には当該別表が添付されていない。しかし、会則別表は会則と一体のものとして不可欠なものであって、例えば会則別表がなければ委員総数の把握が困難となり、会議が成立したかどうかの判定ができないことになる。ゆえに、会則別表は存在すると考えるのが妥当である。

(4) 実施機関が事務所の写真と会則別表を非開示としたのは、不適切な補助金交付であることが明るみになることを恐れたからであると考える。

5 審査会の判断
(1) 泉区地区経営委員会活動拠点借上補助金について
泉区では、地域主体の地域経営・まちづくりの推進を図るために、各地区連合自治会町内会の区域ごとに、区域内の自治会町内会及び各種団体等が連携して地区経営委員会を組織している。
泉区長は、地区経営委員会の運営に対して助成を行うため、横浜市補助金等の交付に関する規則(平成17年11月横浜市規則第139号)に基づいて泉区地区経営委員会運営助成要綱(平成20年9月泉政第538号。以下「要綱」という。)及び要領を定め、地区経営委員会への助成の種類の一つとして地区経営委員会の活動拠点借上に係る補助金の交付を行っている(要綱第4条第2号ほか)。

(2) 本件申立文書について
本件申立文書は、富士見が丘地区の地区経営委員会である申請団体に対して、平成20年度分の泉区地区経営委員会活動拠点借上補助金の交付を決定した起案文書であり、当審査会が見分したところ、起案用紙、補助金交付決定通知書案、要綱、要領、申請書(第1号様式)、補助金算定調書(第2号様式)、事業収支予算書(第3号様式)、会則、位置図、平面図、建物賃貸借契約書及び照査票で構成されていた。
申立人は、事務所の写真と会則別表が本件申立文書を構成する書類として存在していると主張している。
実施機関は、建物賃貸借契約書のうち賃貸人の住所及び氏名、賃料の金額並びに賃貸人及び賃借人である申請団体の代表者の印影を非開示としている。

(3) 事務所の写真及び会則別表の不存在について
ア 実施機関は、事務所の写真については起案文書に添付していないことから、また、会則別表については取得していないことから、本件申立文書を構成する書類としては存在しないと主張しているため、当審査会では、平成21年10月16日に実施機関から事情聴取を行ったところ、次のとおり説明があった。

(ア) 事務所の写真と会則別表は、いずれも申請書に添付すべき書類であったが、前記3(1)のとおりの理由で、補助金交付に係る起案文書から漏れていたものである。

(イ) 事務所の写真については、本件異議申立てが提起された後に申立人に情報提供している。会則別表については、後日申請団体に対して提出を求めるつもりである。今後、必要な添付書類が漏れることのないように留意する。

イ 当審査会は、以上を踏まえ、次のように判断する。
要領第4条第3項には、申請書に添付しなければならない書類として、「団体の規約類(第3号)」及び「事務所の位置図、平面図及び写真(第4号)」が定められている。会則別表は「団体の規約類」である会則と一体をなすものであるから、全体として「団体の規約類」であって申請書に添付しなければならない書類と認められる。また、事務所の写真が申請書に添付しなければならない書類であることは明らかである。
したがって、事務所の写真及び会則別表は本来本件申立文書を構成する書類として存在すべきものであり、この点については実施機関も認めるところである。
実際に一部開示された起案文書には事務所の写真及び会則別表が添付されていなかったことについて、実施機関は、事務的なミスによって結果的にあるべき書類が添付されていなかった旨説明しており、一方、申立人は、開示の際にこれらの書類が意図的に除外されたと主張しているため、以下検討する。
まず、事務所の写真については、補助金交付申請に先立って申請団体から受け取っていたものの、正式に提出された申請書には添付されていなかったところ、添付書類の不備に気付かないまま補助金交付決定の事務処理を行ったために、起案文書から漏れてしまったと、実施機関は説明している。実施機関は、前述のとおり事務所の写真を保有していることについては認めており、異議申立て後ではあるものの、既に申立人に対して情報提供を行ったとのことである。
次に、会則別表については、本件の補助金交付申請とは別に申請団体から提出された地区経営委員会等届出書によりその構成を把握できることから、特段の不都合はないと、実施機関が主張するため、申請団体に係る地区経営委員会等届出書を見分したところ、確かに申請団体の構成について記載されていることが認められた。
もちろん、上記の事情は、本来申請書に添付されるべき書類を十分確認しないままに補助金交付の決定について決裁してしまったことを何ら正当化するものではないが、本件申立文書を構成する書類として事務所の写真及び会則別表が存在しないことの説明としては、必ずしも不自然とはいえない。
また、そのほかに本件申立文書を構成する書類として事務所の写真及び会則別表が存在することを推認させるような事情もない。
したがって、本件申立文書を構成する書類としては事務所の写真及び会則別表が存在しないという実施機関の説明を認めざるを得なかった。
なお、実施機関においては、補助金交付手続の適正さについて市民からの疑念を招かないよう、要綱、要領等で定めた手続に沿った適切な事務処理を行うべきことに留意されたい。

(4) 条例第7条第2項第4号の該当性について
ア 条例第7条第2項第4号では、「公にすることにより、人の生命、身体、財産等の保護その他の公共の安全の確保及び秩序の維持に支障が生ずるおそれがある情報」は開示しないことができると規定している。

イ 実施機関は、本件申立文書のうち建物賃貸借契約書に押された賃貸人及び賃借人である申請団体の代表者の印影は、個人等の財産権が侵害されるおそれがあることから、本号に該当し、非開示としたとしているため、以下検討する。

ウ 一般に、契約書に押されている契約者双方の印影は、当該契約当事者の意思を証し、当該契約書の真正性を担保するものである。このことは、不動産の賃貸借契約書においても同様であり、印影を財産等保護情報として保護する実益があるようにも考えられる。しかし、特に軽易又は少額の契約については、印鑑証明に係る費用や手間等を無視できないこともあって、認印を用いる事例も実務上多く見受けられ、一般に実印を押す慣行があるとまではいえない。
そこで、本件の建物賃貸借契約書を見分したところ、不動産仲介業者等の仲介を受けているといったこともなく、その他実印が押されていることを推認させるような事情もないことから、これらの印影を公にしても、契約者双方の財産等の保護に支障が生ずるおそれがあるとまではいえず、本件の建物賃貸借契約書に押された印影は本号に該当しない。
なお、当該印影には契約者双方の氏が認められることから、条例第7条第2項第2号該当性の問題としてさらに検討する。

(5) 条例第7条第2項第2号の該当性について
ア 条例第7条第2項第2号本文では、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」については、開示しないことができると規定している。
また、本号ただし書アでは、本号本文に該当する個人に関する情報であっても、
「法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されて
いる情報」については、開示しないことができる情報から除くと規定している。

イ 実施機関は、賃貸人の住所及び氏名並びに賃料の金額は、特定の個人を識別することができる情報であることから、本号本文に該当し、非開示としたとしているため、前記(4)で検討した賃貸人及び賃借人である申請団体の代表者の氏(印影)とあわせて、以下検討する。

ウ 賃貸人の住所及び氏名(印影を含む。)並びに賃料の金額について
実施機関の説明によると、賃貸人は、自らが経営する飲食店の一部を構成するものとして使用していた建物を、申請団体に事務所として賃貸したとのことである。当該賃貸人は、本件の建物について、反復継続して、対価を目的として貸付けを行っていることは、本件の建物賃貸借契約書の記載から明らかであり、不動産の貸付けを業として行っていると認められる。したがって、賃貸人の住所及び氏名並びに賃料の金額は、事業を営む個人の情報であって、本号には該当しない。
なお、賃貸人の住所及び氏名(印影を含む。)並びに賃料の金額については、本件の建物賃貸借契約書が要領第15条により一般の閲覧に供されているという事情もあり、公にしても当該賃貸人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するとはいえず、条例第7条第2項第3号にも該当しない。

エ 賃借人である申請団体の代表者の氏(印影)について
賃借人である申請団体の代表者の氏は、個人に関する情報であり、特定の個人を識別できるものであるため、本号本文に該当する。
次に、本号ただし書の該当性について検討する。
地区経営委員会は、その地区内の自治会町内会のほか地域で活動する各種団体で構成される公共的な性質を持つ団体であって、横浜市からの補助金が支払われていることからも、その運営には高い透明性が求められていると考えられる。それに加えて、申請団体の代表者は、広報よこはま泉区版の記事において「富士見が丘地区課題検討委員会委員長」として実名で紹介されていることから、その氏名は、慣行として公にされている情報に該当すると考えることが適当である。したがって、当該情報については、本号ただし書アに該当するものとして開示すべきである。

(6) 結論
以上のとおり、実施機関が本件申立文書を一部開示とした決定は妥当ではなく、開示すべきであるが、事務所の写真及び会則別表が対象行政文書としては存在しないとして開示しなかったことは妥当である。

(第三部会)
委員 藤原静雄、委員 青木孝、委員 早坂禧子

《 参 考 》
審査会の経過
年 月 日審 査 の 経 過
平成21年7月30日・実施機関から諮問書及び一部開示理由説明書を受理
平成21年8月7日
(第84回第三部会)
平成21年8月24日
(第154回第二部会)
平成21年8月27日
(第151回第一部会)
・諮問の報告
平成21年9月4日
(第86回第三部会)
・審議
平成21年10月2日
(第87回第三部会)
・審議
平成21年10月16日
(第88回第三部会)
・実施機関から事情聴取
・審議
平成21年11月6日
(第89回第三部会)
・審議
平成21年11月20日
(第90回第三部会)
・審議
平成21年12月4日
(第91回第三部会)
・審議


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