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情報公開・個人情報保護審査会 平成19年度(独情)答申第92号 情報公開審査専門委員会議事要旨

2007年11月14日 | 行政文書該当性/文書の特定/理由付記
諮問庁 : 国立大学法人東京大学
諮問日 : 平成18年12月22日 (平成18年(独情)諮問第98号)
答申日 : 平成19年11月14日 (平成19年度(独情)答申第92号)
事件名 : 情報公開審査専門委員会議事要旨の開示決定に関する件(文書の特定)


答 申 書




第1  審査会の結論

 「国立大学法人東京大学情報公開2005-123号に関する委員会議事録(法5条4号ハの該当とした「支障」について,具体的にその内容が分かるもの。)」(以下「本件請求文書」という。)の開示請求につき,「平成17年度第7回東京大学情報公開審査専門委員会議事要旨」(以下「本件対象文書1」という。)を特定し,開示した決定については,諮問庁が,平成17年度第7回東京大学情報公開審査専門委員会配布資料のうち2005-123号に関するもの(以下「本件対象文書2」といい,本件対象文書1と併せて「本件対象文書」という。)を追加して特定すべきとしていることは妥当であるが,諮問庁がその全部を不開示とすべきとしている本件対象文書2については,別表に掲げる部分を開示すべきである。


第2  異議申立人の主張の要旨



1  異議申立ての趣旨

 本件異議申立ての趣旨は,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,平成18年9月28日付け第2006-25号により国立大学法人東京大学(以下「東京大学」,「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求めるというものである。


2  異議申立ての理由

 異議申立人が主張する異議申立ての理由は,異議申立書及び意見書の記載によると,おおむね次のとおりである。


(1)  法人文書開示請求書(平成18年9月5日付)の「請求する法人文書の名称等」欄の記載は,「国立大学法人東京大学情報公開2005-123号に関する委員会議事録(法5条4号ハの該当とした「支障」について,具体的にその内容がわかるもの)」であり,上記「2005-123号」の不開示決定に対する異議申立ては,平成18年(独情)諮問第26号(平成18年度(独情)答申第16号)で審議されている。したがって,本件でいう「開示請求対象情報」とは,当該諮問で諮問庁が理由説明書に掲記した「受験生の行動を歪め,受験関係者(高等学校,予備校等)に悪影響を及ぼすおそれ」の「内容」に該当する当該委員会の当該事項の審議の「議事」そのものである。



(2)  実際に開示された法人文書は,その「要旨」1枚のみであり,出席者の姓,会議の日付,審議の結果が記載されたものに過ぎず,「支障の内容」に関する記載は一切認められないもので,全く不十分なものでしかなく到底容認できない。
 議事要旨にいう「出席者」の氏名及び所属並びに役割・権限・「配布資料3」・「議題1」のうち「2005-123号」部分の議事録をさらに開示する旨の再処分を求める。



第3  諮問庁の説明の要旨



1  異議申立ての対象及び本件対象文書として特定した理由について

 異議申立人は,先に不開示決定を行った開示請求案件に関して審議した委員会の議事録を求めたものであるが,当該事項を審議した委員会の議事に係る記録については,議事録は作成しておらず議事要旨を作成しているにとどまるため,請求に係る文書として「平成17年度 第7回東京大学情報公開審査専門委員会議事要旨」を特定し,これを全部開示したものである。
 なお,当該事項を審議した委員会で配付した会議資料があるが,これについては,本学が請求に係る法人文書として特定した議事要旨に含まれないものであることから,処分庁としては,当初,請求の対象文書に当たらないと解していた。しかるに,異議申立人は,平成18年10月6日受付の異議申立書のなかで,本件対象文書として特定した議事要旨の外に,本件請求文書に該当する文書が存在するとしてその追加開示を求めている。そこで,異議申立人の本意は,議事録がなくても配付資料があればそれまで含めて審議に関連する文書の開示を広く求めるにあるとの理解に至ったので,上記配付資料についても,2で述べるように不開示とすべきであるとの判断を示しつつ,諮問の範囲に含めるものである。


2  異議申立人の主張について

 異議申立人は,開示を請求した法人文書は議事録であり,諮問庁が特定し開示した議事要旨では内容が不十分である旨を主張している。
 しかしながら,当該委員会の議事録は作成していないため,いつ,どの委員会で審議したかの情報が記載された議事要旨を特定したものであり,他に本件対象文書としての文書も存在しない。
 したがって,異議申立人が請求した文書と全く別のものであるとの主張は支持できない。
 なお,異議申立人が異議申立書の中で更に開示を求めている配付資料は,処分庁としては当初の請求には含まれていないと解していたものであるが,当該資料に関し仮に開示・不開示について検討すれば,不開示の判断となる。そもそも,当該委員会における配付資料は,請求に係る法人文書を保有する部局(以下「担当部局」という。)において開示することによる支障等を記載した意見書として当該委員会審議の参考に提出されるものと位置付けられている。たとえ意思決定の後であっても,このような内部の自由な意見交換のための資料を開示することは,今後,開示請求を受けた場合の手続において,担当部局から詳細な支障の内容や忌たんの無い意見が記載された意見書が提出されないという問題が生ずるのみならず,国民の誤解や憶測を招くおそれがある。このように本配付資料の開示は,将来予定されている当該委員会での審議において,正確な事実の把握や率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれがあり,法5条3号の不開示情報に該当するため開示できない。さらに,本配布資料は,入学試験に関する事項を内容とする意見書であるため,公にすることにより,入学試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,法5条4号ハに該当することからも開示できない。


第4  調査審議の経過

 当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。


①  平成18年12月22日  諮問の受理

②  同日  諮問庁から理由説明書を収受

③  平成19年1月9日  異議申立人から意見書を収受

④  同月15日  異議申立人から意見書を収受

⑤  同月29日  異議申立人から意見書等を収受

⑥  同年5月21日  本件対象文書の見分及び審議

⑦  同年6月8日  諮問庁の職員(東京大学情報公開委員会委員長代理ほか)からの口頭説明の聴取

⑧  同年11月12日  審議



第5  審査会の判断の理由



1  本件対象文書について

 本件請求文書は,開示請求書の記載によれば,「国立大学法人東京大学情報公開2005-123号に関する委員会議事録(法5条4号ハの該当とした「支障」について,具体的にその内容がわかるもの。)」である。
 なお,「2005-123号」とは,別件の開示請求(以下「別件開示請求」という。)の案件を示す番号であるとともに,処分庁が,当該開示請求に係る文書は法5条4号ハに該当するとして行った不開示決定の通知書(平成17年12月28日付け)の文書番号である。
 処分庁は,本件開示請求書記載の委員会として,平成17年12月13日に開催された平成17年度第7回情報公開審査専門委員会(以下「本件委員会」という。)を特定するとともに,情報公開審査専門委員会では議事録を作成しておらず,議事要旨を作成しているにとどまるとして,本件対象文書として本件委員会の議事要旨である本件対象文書1を特定し,全部開示する原処分を行なった。これに対し,異議申立人は,開示された文書では「2005-123号」に係る文書が法5条4号ハに該当するとした具体的な理由が分からない,請求文書は「議事録」そのものである旨主張している。
 諮問庁は,異議申立ての趣旨からみて,異議申立人の本意は本件委員会において議事の対象とされた「2005-123号」に関する配布資料があればそれも含めて審議に関する文書を広く求めることにあると理解し,本件対象文書として本件対象文書2を追加して特定することとし,同文書については,記載内容が,法5条3号及び同条4号ハに該当することから,開示できないとしている。
 そこで,本件対象文書の特定の妥当性及び本件対象文書2の不開示情報該当性について,本件対象文書を見分した結果等を踏まえ,以下検討する。


2  本件対象文書の特定の妥当性について



(1)  本件対象文書1について

 本件対象文書1は,本件委員会の議事要旨である。
 諮問庁は,本件対象文書1を特定したことについて,次のとおり説明する。


)  法に基づく開示請求があった場合,その開示・不開示について審査を行うのが情報公開審査専門委員会であるところ,当該委員会の会議においては,従来から議事要旨のみを作成してきており,議事録は作成していない。



)  「2005-123号」に係る審査は,平成17年12月13日に開催された本件委員会において行われている。



 そこで,この点につき検討すると,開示されている本件対象文書1によれば,第6回(前回)の議事要旨(案)が資料として配布され,その確認は次回(第8回)で行う旨が記載されており,議事の記録の確認を議事要旨で行っていることが認められること,また,諮問庁から提出された「東京大学情報公開委員会情報公開審査専門委員会内規」には,情報公開審査専門委員会の会議の記録の作成に関する特段の規定はないことから,情報公開審査専門委員会においては議事録を作成せず,議事要旨のみを作成しているとする諮問庁の説明は首肯できる。
 また,当審査会事務局職員を通じて,本件委員会開催日前後の情報公開審査専門委員会の議事要旨を取得し,その開催状況等を確認したところ,「2005-123号」に係る審議は本件委員会においてのみ行われていることが認められた。
 以上のとおり,「2005-123号」に係る審議は本件委員会においてのみ行われ,また,東京大学においては,異議申立人が開示を求める議事録は作成していないと認められるところ,開示請求の文言の趣旨を広く解し,本件委員会の議事要旨を本件対象文書として特定した原処分は,妥当である。


(2)  本件対象文書2

 本件対象文書2は,本件委員会において配布された「2005-123号」に関する資料であり,①(2005-123)の法人文書に係る開示又は不開示等に関する意見書(予備的判断)(以下「本件意見書」という。),②法人文書開示請求書の写し(以下「開示請求書」という。)及び③法人文書不開示決定通知書(案)(以下「通知書(案)」という。)の3文書から成る。
 ①の本件意見書は,担当部局が作成した,当該開示請求に係る法人文書についての開示・不開示に関する担当部局の意見が記載された文書であり,②の開示請求書は,別件開示請求に係る法人文書開示請求書の写しであり,③の通知書(案)は,担当部局が作成した,不開示理由が記された法人文書不開示決定通知書の案である。
 諮問庁は,口頭説明において,本件委員会が,「2005-123号」の対象文書の開示・不開示の審査を行うに当たっては,上記①から③までの資料に基づいていた旨説明しており,また,本件対象文書1の記載から,「2005-123号」に関して本件委員会において配布された資料は上記3文書のみであると認められる。
 以上のとおり,本件対象文書2は,異議申立人が開示を求める議事録ではないものの,「2005-123号」の対象文書の開示・不開示を審査する本件委員会において用いられた文書であり,当該文書の開示・不開示に関する担当部局の意見が記された本件意見書を含むものであることから,開示請求の文言を広く解し,これを本件対象文書として追加して特定することは,妥当と認められる。


3  不開示情報該当性について

 次に,本件対象文書2の①から③までの文書ごとに,法5条3号及び同条4号ハ該当性について検討する。


(1)  本件意見書

 本件意見書には,本件意見書の提出年月日,提出先名,担当部局の責任者の職名,表題等が記載されているほか,「該当法人文書名等」,「(部分開示・不開示・不存在)とする理由」及び「開示決定等の期限延長の要否」の各欄があり,それぞれ該当する内容が記載されている。


ア  諮問庁は,情報公開審査専門委員会における配布資料は,開示することによる支障等を担当部局において記載した意見書として,当該委員会審議の参考とするために提出されるものと位置付けられており,たとえ意思決定の後であっても,このような内部の自由な意見交換のための資料を開示すると,今後,開示請求を受けた場合の手続において,担当部局から支障の詳細な内容や忌たんの無い意見が記載された意見書が提出されないという問題が生ずるのみならず,国民の誤解や憶測を招くおそれがあることから,今後の当該委員会での審議において,正確な事実の把握や率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれがあるので,法5条3号に該当するとともに,本件意見書は,入学試験に関する事項を内容とするものであるため,公にすると入学試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,同条4号ハにも該当すると説明する。



イ  確かに,「該当法人文書名等」欄のうちの「判断」欄,「(部分開示・不開示・不存在)とする理由」欄及び「開示決定等の期限延長の要否」欄の各欄には,請求に係る法人文書の開示・不開示の判断,開示することによる具体的支障等及び開示決定等の期限の延長の要否について,担当部局の詳細かつ忌たんの無い意見が記載されていることが認められる。
 このため,これらの欄の記載内容を開示すると,今後,開示請求を受けた場合の手続において,担当部局から詳細かつ忌たんの無い意見が提出されなくなるおそれがあるとともに,担当部局の意見がそのまま東京大学の意見として受け取られ,国民の誤解や憶測を招くおそれが生ずるなど,情報公開審査専門委員会での今後の審議において,正確な事実の把握や率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれがあると認められる。
 したがって,当該記載内容は,法5条3号に該当すると認められるので,同条4号ハについては判断するまでもなく,不開示が妥当である。
 しかしながら,その余の,本件意見書の提出年月日,提出先名,担当部局の責任者の職名,「該当法人文書名等」欄の「判断」欄を除く「通番」,「該当法人文書名」,「媒体種別」及び「数量」の各欄の記載内容等については,単なる事務的な事項にすぎず,これらを開示しても,諮問庁が主張するような,情報公開審査専門委員会の今後の審議において,正確な事実の把握や率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれは認められないことから,法5条3号に該当するとは認められない。また,本件意見書が入学試験に関する事項を内容とするものであっても,これらの部分を開示することにより入学試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められず,同条4号ハに該当するとも認められない。
 したがって,当該部分については,開示すべきである。



(2)  開示請求書

 開示請求書は,処分庁あてに別件開示請求の開示請求者から提出された法人文書開示請求書の写しであり,開示請求書の様式は,東京大学情報公開規則5条1項で定められており,東京大学のホームページから出力できるものである。
 開示請求書には,()開示請求者の氏名又は名称,住所又は居所及び連絡先の電話番号,()請求する法人文書の名称等,()求める開示の実施方法等などを記載することとされており,そのうち,()の開示請求者の氏名又は名称,住所又は居所及び連絡先の電話番号欄の記載内容は,特定の個人を識別することができる情報として本件委員会に提出される際にあらかじめ黒塗りされており,また,()の請求する法人文書の名称等の記載は,別件開示請求に係る答申を踏まえて既に開示されているところ,その他の記載内容は,開示請求手続上の事務的な事項にすぎないことから,法5条3号及び同条4号ハに該当するとは認められない。
 したがって,開示請求書については,開示すべきである。


(3)  通知書(案)

 通知書(案)は,別件開示請求に対し,処分庁として該当法人文書を不開示とする決定を行い,その旨を開示請求者に通知するための通知文書の案文であり,担当部局が作成し,①の本件意見書に添付されたものである。
 なお,法人文書不開示決定通知書の様式は,東京大学情報公開規則8条2項で定められているものであり,他の開示請求者に対しても使用されている様式である。
 通知書(案)には,()文書番号及び発出年月日,()表題,()文書のあて先,()文書の発出者の職名及び氏名,()不開示決定についての連絡文,()不開示決定した法人文書の名称,()不開示とした理由並びに()担当窓口の名称,住所及び電話番号を記載することとされており,そのうち,()文書のあて先欄の記載内容は,特定個人が識別されるとして本件委員会に提出される際にあらかじめ黒塗りにされている。
 これらのうち,()の不開示とした理由欄には,別件開示請求に係る法人文書が公になった場合の支障の内容等が記載されている。法人文書不開示決定通知書は開示請求者に交付されているが,通知書(案)は,通知書の案文であり,本欄記載の支障等も検討段階のものであって,最終的に処分庁が意思決定したものではない。このため,本欄の記載内容を開示することは,今後,開示請求を受けた場合の手続において,担当部局から支障の詳細な内容や忌たんの無い意見が提出されなくなるとともに,担当部局の意見がそのまま東京大学の意見として受け取られ,国民の誤解や憶測を招くおそれが生じるなど,情報公開審査専門委員会での今後の審議において,正確な事実の把握や率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれがあると認められる。
 したがって,当該記載内容は,法5条3号の不開示情報に該当すると認められるので,同条4号ハについては判断するまでもなく,不開示が妥当である。
 しかしながら,その余の()ないし()及び()の各欄の記載内容については,()の不開示決定した法人文書の名称を除き,通知書の様式と同様の記載その他事務的な事項にすぎないことから,法5条3号及び同条4号ハに該当するとは認められない。
 また,()の不開示決定した法人文書の名称については,上記(2)に記載したとおり,既に別件開示請求に係る答申を踏まえて開示されていることから,本件において不開示とする理由はない。
 したがって,通知書(案)については,()の不開示とした理由の部分を除き,開示すべきである。


4  本件開示決定の妥当性について

 以上のことから,本件請求文書の開示請求につき,本件対象文書1を特定し,開示した決定については,諮問庁が,本件対象文書2を追加して特定すべきとしていることは,本件対象文書の外に開示請求の対象として特定すべき文書を保有しているとは認められないことから,妥当であるが,本件対象文書2について,諮問庁が,その全部を法5条3号及び同条4号ハに該当するとして不開示とすべきとしている部分のうち,別表の第1欄に掲げる法人文書ごとの第2欄に掲げる部分は,上記各号のいずれにも該当せず開示すべきであり,その余の部分は,同条3号に該当すると認められるので,同条4号ハについては判断するまでもなく,不開示が妥当であると判断した。


 (第5部会)


 委員 上村直子,委員 稲葉 馨,委員 新美育文






 別表


1 法人文書名
2 開示すべき部分
( 2005-123 )の法人文書に係る開示又は不開示等に関する意見書(予備的判断)「当該法人文書名等」欄のうちの「判断」欄の記載部分,「(部分開示・不開示・不存在)とする理由」欄の記載部分及び「開示決定等の期限延長の要否」欄の記載部分を除く部分
法人文書開示請求書の写し全部
法人文書不開示決定通知書(案)不開示とした理由を記載した部分を除く部分




 ※ 上記法人文書は,いずれも本件委員会に資料として提出されたものを指す。


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