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情報公開審査会の答申などを集めて載せています。

情報公開・個人情報保護審査会 平成20年度(行情)答申第285号 総合労働相談員マニュアルの管理実績

2008年10月16日 | 行政文書該当性/文書の特定/理由付記
諮問庁 : 厚生労働大臣
諮問日 : 平成20年 6月 4日(平成20年(行情)諮問第314号)
答申日 : 平成20年10月16日(平成20年度(行情)答申第285号)
事件名 : 総合労働相談員マニュアルの管理実績の不開示決定(不存在)に関する件

答 申 書


第1  審査会の結論
 平成18年度総合労働相談員マニュアルの管理実績(配布先を含む。)(以下「本件対象文書」という。)の開示請求につき,これを保有していないとして不開示とした決定については,「総合労働相談員マニュアルの送付について」につき,改めて開示決定等をすべきである。

第2  審査請求人の主張の要旨
1  本件審査請求の趣旨
 本件審査請求の趣旨は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,平成19年4月13日付愛労発総第297号により愛知労働局長が行った本件対象文書の不開示決定(以下「原処分」という。)について,その取り消しを求めるというものである。

2  本件審査請求の理由
 審査請求人の主張する審査請求の理由は,審査請求書によると,おおむね以下のとおりである。

①  総合労働相談員マニュアルが必要と考えられる部数を本省から入手しているので,その根拠となる文書は存在すると考える。
②  在庫部数を確認することは,同マニュアルを必要としている人に,確実に渡ったことを確認するために必要である。

第3  諮問庁の説明の要旨
 総合労働相談員マニュアルとは,総合労働相談員が業務を行う際の手引書であるが,愛知労働局において,本件対象文書に該当する行政文書は作成しておらず,これを保有していない。
 審査請求人は,上記第2の2の通り主張するが,愛知労働局においては本件対象文書を保有していないことから,審査請求人の主張は理由がない。

第4  調査審議の経過について
 当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

①  平成20年6月4日  諮問の受理
②  同日  諮問庁から理由説明書を収受
③  同年8月5日  審議
④  同年9月30日  審議
⑤  同年10月14日  審議

第5  審査会の判断の理由
1  本件対象文書について
 本件対象文書は,平成18年度総合労働相談員マニュアルの管理実績(配布先を含む。)であるところ,処分庁は,該当する文書を作成していないとして,不存在により不開示とする原処分を行っており,諮問庁も原処分を妥当としている。

2  平成18年度総合労働相談員マニュアルについて
 当審査会が事務局職員をして諮問庁に総合労働相談員マニュアルの作成・配布状況等を確認させたところ,当該マニュアルは,厚生労働省本省において必要部数を作成し,各都道府県労働局に配布しているもので,具体的な配布先は,総合労働相談員及び紛争事実実情相談委員並びに総合労働相談コーナー及び各都道府県労働局関係部局であり,平成18年度の愛知労働局への配布は96部程度としている。

3  本件対象文書の保有の有無について
 諮問庁は,総合労働相談員マニュアルは,わざわざ配布先又は一部ごとの配布状況の確認や受領・返還等の管理を厳重にする必要があるものではなく,そのための交付簿や受領簿といった文書を作成する必要がないものであることから,本件対象文書に該当する行政文書は作成・保有していないと説明する。
 確かに,配布先が明確で,配布部数も多くないこと等からすれば,在庫管理等のための文書を作成するまでもないとする諮問庁の説明は,首肯し得ないものではない。
 しかし,開示請求書には,「配布先を含む」と付記されており,審査請求書では「必要としている人に,確実に渡ったことを確認する」などとしていることからすると,交付簿や受領簿といった在庫管理等のための文書ではなくても,配布内訳を含む本省から愛知労働局への送付文書,愛知労働局から各委員又は管内署所等への送付文書等,配布先が分かる文書も本件対象文書に該当し得ると考えられる。
 諮問庁に対し,愛知労働局においてそのような配布先が分かる文書を保有していないか改めて確認するよう求めたところ,愛知労働局総務部企画室長が管内の各労働基準監督署(支署)長に対し,総合労働相談員マニュアルを総合労働相談員に配布するために送付した際の「総合労働相談員マニュアルの送付について」(平成17年3月24日付け事務連絡)が保存されていることが判明した。
 当審査会において,当該文書の提示を受けて内容を確認したところ,各労働基準監督署(支署を含む。)及び総合労働相談員用として必要部数を配布していることが記載されており,当該文書は本件対象文書に該当するものと認められる。
 なお,当該文書以外の文書の保有状況についても諮問庁に確認させたところ,愛知労働局内の書棚,書庫,倉庫等を探索したが確認できなかったとしており,愛知労働局への配布部数や上記事務連絡による配布状況等を踏まえれば,当該事務連絡文書以外に配布先等の管理実績を記載した文書を作成する特段の必要性も認められず,当該説明に不自然・不合理な点は認められない。

4  本件不開示決定の妥当性について
 以上のことから,本件対象文書につき,これを保有していないとして不開示とした決定については,愛知労働局において本件対象文書に該当する文書として「総合労働相談員マニュアルの送付について」を保有していると認められるので,これにつき改めて開示決定等をすべきであると判断した。

(第3部会)
 委員 名取はにわ,委員 北沢義博,委員 高橋滋


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