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愛知県情報公開審査会 答申第447号 人事課職員が懲戒処分の被処分者に対して事情を聴取した文書等

2009年01月27日 | 行政文書該当性/文書の特定/理由付記
答申第447号
諮問第797号

件名:人事課職員が懲戒処分の被処分者に対して事情を聴取した文書等の不開示(不存在)決定に関する件

答 申


1 審査会の結論
愛知県知事(以下「知事」という。)が「人事課職員が職務として作成した懲戒処分の被処分者に対する事情を聴取した文書の内、質問の部分のみ(平成18年度、平成19年度)」及び「裁判上で明らかになった内容が記載された文書(平成18年度、平成19年度)」(以下、併せて「本件請求対象文書」という。)のうち、「裁判上で明らかになった内容が記載された文書」については、人事課が管理するものに限定して作成又は取得していないとの理由で不開示とした決定を取り消し、人事課以外の実施機関で管理する訴訟の傍聴記録も本件開示請求の対象とし、本件請求対象文書の存否を確認した上で、改めて決定すべきである。

2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成20年1月28日付けで愛知県情報公開条例(平成12年愛知県条例第19号。以下「条例」という。)に基づき行った開示請求に対し、知事が同年2月8日付けで行った不開示決定の取消しを求めるというものである。

(2) 異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、次のとおりである。
条例第11条第2項に該当しない。担当課に対して開示請求の移送を依頼していた。移送ができなければその旨を開示請求者に伝えて新たな開示請求をすることができるようにして、不利益が発生しないような処分をすべきである。

3 実施機関の主張要旨
実施機関は、次の理由により本件請求対象文書を不開示としたというものである。

(1) 本件請求対象文書について
本件請求対象文書のうち、「人事課職員が職務として作成した懲戒処分の被処分者に対する事情を聴取した文書」とは、人事課職員が被処分者に対する事情聴取を行った結果を記録した文書であると解される。
また、「裁判上で明らかになった内容が記載された文書」については、行政文書の特定ができなかったため、開示請求者に確認したところ、「訴状、傍聴記録である。」との回答を得ている。

(2) 本件請求対象文書の存否について
懲戒処分の被処分者に対する事情の聴取は、主管課、主務課又は所属が行っており、人事課職員は行っていない。
また、懲戒処分の被処分者は、刑事事件の被告である場合には訴状の送達を受けるが、愛知県(以下「県」という。)は、被告ではないことから、懲戒処分に関して訴状の送達を受けることはない。
裁判の傍聴についても、人事課職員は傍聴を行っておらず、必要な場合は、主管課又は主務課の職員が傍聴している。
以上の理由により、人事課では、懲戒処分の被処分者に対する事情を聴取した文書及び裁判上で明らかになった内容が記載された文書を作成又は取得していないことから、条例第11 条第2 項により不開示とした。

(3) その他
異議申立人は異議申立書において、「移送できなければその旨を開示請求者に伝えて新たな開示請求をすることができるようにして、不利益が発生しないような処分をすべきである」と申し立てているが、人事課以外の課において傍聴記録がある可能性は、決定時に異議申立人に伝えていることから、異議申立人が新たに開示請求を行うことは可能であり、不利益は発生していないものと考える。

4 審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例第5条に規定されているとおり、何人も行政文書の開示を請求する権利が保障されているけれども、開示請求権が認められるためには、実施機関が行政文書を管理し、当該文書が存在することが前提となる。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることのないよう、実施機関及び異議申立人のそれぞれの主張から、本件請求対象文書の存否について、以下判断する。

(2) 本件請求対象文書について
一般職に属する地方公務員が地方公務員法(昭和25年法律第261号)第29条第1項の各号に該当する場合においては、これに対して懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができることとされている。
実施機関によれば、県においては、知事が任命権を有する一般職の職員が非違行為等を行った場合、当該職員からの申立書並びに当該職員及び関係者から事情を聴取した結果をとりまとめた関係者事情聴取結果が添付された報告書が当該職員の所属する部局から人事課に提出され、これを受けて、非違行為等の事案の概要などを取りまとめた審査表を人事課で作成し、人事課で所管する職員分限懲戒審査会において、この審査表により当該職員の処分の量定を審査した上で、当該職員の処分が決定されるとのことである。
本件請求対象文書の一点目は、この懲戒処分の手続に係る行政文書のうち、平成18年度及び平成19年度に、人事課職員が職務として作成した懲戒処分の被処分者に対する事情を聴取した文書(以下「人事課職員による事情聴取文書」という。)の内の質問の部分が記載された文書であると解される。
本件請求対象文書の二点目であるが、異議申立人は、「裁判上で明らかになった内容が記載された文書 H18年度 H19年度」と行政文書開示請求書に記載しており、この内容では、実施機関において行政文書の特定ができなかったため、実施機関が異議申立人に確認したところ、懲戒処分の被処分者に係る裁判の訴状及び傍聴記録である旨の回答があったとのことである。その趣旨は、民事事件の訴状及び刑事事件の起訴状並びに訴訟の傍聴記録(以下「訴状及び傍聴記録」という。)であると解される。

(3) 本件請求対象文書の存否について
ア 人事課職員による事情聴取文書について
実施機関によれば、懲戒処分の被処分者に対する事情の聴取は、主管課、主務課又は所属が行い、人事課職員は行っていないため、人事課では、懲戒処分の被処分者に対する事情を聴取した文書を作成又は取得していないとのことである。
上述したとおり、実施機関によれば、懲戒処分の手続においては、当該職員からの申立書並びに当該職員及び関係者から事情を聴取した結果をとりまとめた関係者事情聴取結果が添付された報告書が当該職員の所属する部局から人事課に提出され、これを受けて、人事課で所管する職員分限懲戒審査会において当該職員の処分が決定されるとのことである。
このことからすれば、必ずしも人事課職員が懲戒処分の手続において直接被処分者に対して事情聴取を行う必要があるとは認められず、人事課職員による事情聴取文書を管理していないという実施機関の説明が不合理であるとは認められない。

イ 訴状及び傍聴記録について
懲戒処分の被処分者は、刑事事件の被告人となっている場合には起訴状の送達を受けるが、県は、起訴状の送達を受けることはない。民事事件の訴状は、訴えを提起するために裁判所に提出される書面であり、適式な訴状については、裁判長から被告に送達されるものである。実施機関によれば、平成18年度及び平成19年度の懲戒処分の対象となった非違行為等に関して、県を被告として提起された民事裁判はないとのことである。このことから、県は訴状の送達を受けておらず、訴状を管理していないとの実施機関の説明が不合理であるとは認められない。
次に、訴訟の傍聴記録であるが、実施機関によれば人事課職員は傍聴を行っておらず、主管課又は主務課の職員が必要に応じて傍聴しているとのことである。懲戒処分の手続で使用される審査表を見ると、刑事処分について記載する欄はあるものの、そこに記載されている内容は、既に判決が出ている場合であっても、判決年月日と刑の量定のみであり、その情報は、人事課が主務課又は主管課から入手するとのことである。
このことからすれば、人事課において訴訟の傍聴記録がなければ懲戒処分ができないものとは認められないため、人事課職員は傍聴を行っておらず、訴訟の傍聴記録を管理していないという実施機関の説明が不合理であるとは認められない。
ところで、実施機関は、訴状及び傍聴記録については人事課が管理する行政文書に限定して不存在としたものであるが、異議申立人は、異議申立書に「担当課に対して開示請求の移送を依頼していた。移送ができなければその旨を開示請求者に伝えて新たな開示請求をすることができるようにして、不利益が発生しないような処分をするべきである」と記載している。実施機関においては、開示請求時には行政文書の特定ができなかったことはやむを得なかったものと認められるが、開示決定前には異議申立人に、請求の趣旨は人事課が管理する行政文書に限定したものではないことを確認している。よって、異議申立人の請求内容のうち、訴状及び傍聴記録については、人事課が管理している行政文書に限らず、知事部局において管理しているすべての行政文書を対象とした請求であったものと解される。
民事事件の訴状及び刑事事件の起訴状については、前述したとおり、人事課以外の実施機関においても送達を受けていないものと認められるが、訴訟の傍聴記録については、実施機関の説明によれば、傍聴が必要な場合は、主管課又は主務課の職員が行っているとのことであり、平成18年度及び平成19年度に作成された懲戒処分の被処分者についての訴訟の傍聴記録が、人事課以外の実施機関に存在する可能性は否定できないとのことである。よって、訴訟の傍聴記録については、人事課が管理する行政文書に限定して作成又は取得していないとの理由で不開示とした決定を取り消し、人事課以外の実施機関で管理する訴訟の傍聴記録の存否を確認した上で、改めて決定すべきであると認められる。

(5) まとめ
以上により、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(審査会の処理経過)
年月日内 容
20. 3. 6諮問
20. 6. 16実施機関から不開示理由説明書を受理
20. 6. 17異議申立人に実施機関からの不開示理由説明書を送付
20. 7. 11
(第231回審査会)
実施機関職員から不開示理由等を聴取
20. 8. 19
(第235回審査会)
審議
20. 10. 31
(第242回審査会)
審議


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