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東京都情報公開審査会 答申第263号 調布飛行場に関する滑走路延長の公文書

2004年10月20日 | 行政文書該当性/文書の特定/理由付記
諮問第338号
答申


1 審査会の結論
「調布飛行場に関する滑走路延長の公文書」の開示請求に対して、「滑走路延長に関する検討等は行っておらず文書不存在である。」とした非開示決定はこれを取り消し、実施機関がフリートーキングやブレインストーミングに使用したとして審査会に提出した文書を対象公文書として特定した上で、実施機関は改めて開示又は非開示の決定を行うべきである。

2 異議申立ての内容
(1)異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号。以下「条例」という。)に基づき、異議申立人が行った「調布飛行場に関する検討資料すべて。滑走路延長、管制官問題、騒音対策など公文書とそれ以外の打合せ資料すべて」の開示請求に対し、東京都知事が平成15年5月12日付けで行った対象公文書の不存在を理由とした非開示決定について、その取消しを求めるというものである。

(2)異議申立ての理由
本件については、異議申立人から意見陳述を行わない旨及び意見書を提出しない旨の意思表示があったため、異議申立書に基づいて審議を行った。
異議申立人は、異議申立書において「滑走路延長に関する検討を行っている証拠となる信頼できる情報を持っている。」と主張する。

3 異議申立てに対する実施機関の説明要旨
実施機関が、理由説明書及び口頭による説明において主張している内容は、次のように要約される。

(1)文書の不存在について
滑走路延長に関する検討等は行っておらず、文書不存在である。

(2)「担当者限りのメモ」の存在について
異議申立人が主張する「検討を行っていた証拠」については、過去に実施機関の職員が調布飛行場の現状を踏まえた諸課題の全体像をイメージするために、フリートーキングやブレインストーミング(以下「フリートーキング等」という。)を行った際のメモであり、組織的な検討・計画決定を行ったものではない。
また、当該メモは担当者限りのもので、フリートーキング等で使用した後、当該メモについて組織としては特に認識しておらず、組織共用文書としての保存もなされていないことから、公文書不存在とした処分に誤りはない。

4 審査会の判断
(1)審議の経過
審査会は、本件異議申立てについて、以下のように審議した。
年月日審議経過
平成16年 3月31日諮問
平成16年 4月12日実施機関から理由説明書収受
平成16年 4月28日実施機関から理由説明聴取(第48回第一部会)
平成16年 5月26日審議(第49回第一部会)
平成16年 6月30日審議(第50回第一部会)
平成16年 7月21日審議(第51回第一部会)
平成16年 9月 8日審議(第52回第一部会)


(2)審査会の判断
審査会は、実施機関及び異議申立人の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。

ア 本件対象公文書について
本件異議申立てに係る対象公文書は、「調布飛行場に関する滑走路延長の公文書」であり、これに対し実施機関は、滑走路延長に関する検討等は行っていないため文書不存在であるとして非開示決定を行ったものである。

イ 実施機関が、フリートーキング等に使用したとして審査会に提出した文書の存在について
実施機関が、異議申立書収受後、異議申立人からの指摘を受け文書を探索したところ、実施機関がフリートーキング等に使用した文書(以下「本件文書」という。)が存在することが判明した。
実施機関の説明によると、本件文書は、調布飛行場の現状を踏まえた諸課題の全体像をイメージするために、職員が自由に、思いつきでもいいから意見を出し合う場として、平成14年度に、課長等実施機関の職員でフリートーキング等を行った際に、担当者により作成され、提示された文書である。
当該フリートーキング等で使用された後は、実施機関では本件文書について特に認識することはなかったが、異議申立書収受後、異議申立人が指摘する文書を探索したところ、本件文書が作成した職員の机の引き出しの中から発見されたものである。

ウ 条例2条2項該当性について
条例2条2項において、公文書とは、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図面、写真、フィルム及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。)であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。一 官報、公報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの、二 都の公文書館その他東京都規則で定める都の機関において、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているもの」と規定している。

(ア)条例2条2項本文前段該当性について
本件文書が「実施機関の職員が職務上作成した文書」であるといえるかについて検討する。
実施機関は、本件文書は、過去に実施機関の職員が調布飛行場の現状を踏まえた諸課題の全体像をイメージするために、フリートーキング等を行った際のメモであり、当該フリートーキング等は組織的な検討・計画決定を行ったものではないと主張するが、当該フリートーキング等は職務時間内に課長等実施機関の職員の間で職務として実施されたことに変わりなく、本件文書は、実施機関の担当者が当該フリートーキング等において利用するために作成したものであるから、「実施機関の職員が職務上作成した文書」であると認められる。

(イ)条例2条2項本文後段該当性について
本件文書が、「当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているもの」であるといえるかについて検討する。
実施機関は、本件文書は担当者限りのもので、組織共用文書としての保存もなされておらず、公文書に該当しないと主張する。
しかし、本件文書は、実施機関が組織共用文書としての保存がなされていないと主張したとしても、実施機関が、異議申立書収受後、異議申立人からの指摘を受け文書を探索したところ、存在が判明したものであることから、必要に応じて使用することができる保存状態であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているものであると認めざるを得ない。
また、実施機関の判断で恣意的に、組織共用文書ではなく職員の個人的な資料だとして情報公開の対象から除外されることのないよう本条例を運用することが、本条例の趣旨にかなうものと考える。

(ウ)条例2条2項ただし書該当性について
本件文書は、その内容、性質から、条例2条2項ただし書には該当しないものと認められる。

よって「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
 西谷 剛、鴨木 房子、貫洞 哲夫、高木 光


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