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千葉県情報公開審査会 答申第204号 現千葉県立船橋高等学校校長が校長に決定された基準、経緯、理由…

2005年12月12日 | 行政文書該当性/文書の特定/理由付記
答申 第204号
平成17年12月12日

千葉県教育委員会
委員長 伊 藤  潔 様

千葉県情報公開審査会
委員長  大田 洋介

異議申立てに対する決定について(答申)


平成17年3月18日付け教職第553号による下記の諮問について、次のとおり答申します。


平成17年2月24日付けで異議申立人から提起された平成16年12月22日付け教職第78号の9で行った行政文書不開示決定に係る異議申立てに対する決定について

諮問第290号
答申第204号


第1 審査会の結論
千葉県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成16年12月22日付け教職第78号の9で行った行政文書不開示決定(以下「本件決定」という。)は、取り消すべきである。

第2 異議申立人の主張要旨
1 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、本件決定の取消しを求めるというものである。

2 異議申立ての理由
異議申立ての理由は、概ね次のとおりである。

(1) 開示しない理由の詳細について、実施機関からの説明によると、校長の決定に当たっては最小限「校長の資格要件の規定」及び「個人の勤務評定書」が作成されているはずであることからしてもその開示を求めるものである。

(2) 異動原案として「県立船橋高校校長にふさわしい」と評価されうるに至る選考、評価が作成されなくしては、検討、議決できないのではないか。
通常、「原案」すなわち、既に県立船橋高校の校長の名前が記載され、承認・可決の決裁という場合、よほどの事由がなければ、あるいは、率直な意見を言う人がいなければ、原案通り可決されるものである。
過去の「勤務評定」も原案の資料となる一部であると考える。
何も資料がなくて、「長年、人事の職にあるので、人物の事について頭に入っているから」決められるというのは納得がいかない。なぜなら、大勢の教職員がいる中から、客観的な人事によらなければならないと考えること。教育委員会の人事は公務であること。まして、一校の様々な決定権をもつ重大な立場に任命される人は慎重に選考そして決定されなければならない。
したがって、ひとりあるいは数人の頭に入っている中で決められるものではない事、その客観性が明示されうるものでなければならない。

(3) 校長に任命されるまでの、選考基準、評価等、選考・決定に至る過程の情報がいっさい作成もされていないことに納得がいかない。
 
第3 実施機関の説明要旨
1 理由説明書等において説明している内容は、概ね次のとおりである。
(1) 異議申立てに係る経緯について
本件異議申立てに係る開示請求の前に、異議申立人から平成16年8月26日付けで「現、千葉県立船橋高等学校校長が校長になった及び至った理由、業績、評価、経緯等及び経歴」についての開示請求があり、実施機関は、次のア~エの文書を特定し、千葉県情報公開条例(以下「条例」という。)第12条第1項の規定により、平成16年9月24日付け教職第78号の8で、これらの全部又は一部を開示する決定(以下「既開示決定」という。)を行った。
 ア 県立高等学校長の人事について(議案)平成15年3月20日付け
 イ 平成15年度教育功労者表彰功績概要のうち、請求に係る部分
 ウ 人事カード
 エ 県立高等学校長の異動について 平成15年3月25日付け

異議申立人はさらに平成16年11月24日付けで、本件異議申立てに係る「現千葉県立船橋高等学校校長が校長に決定された基準、経緯、理由等、選考過程の資料、情報」の行政文書開示請求(以下「本件請求」という。)をしたが、実施機関は、選考過程の資料、情報等がないため、条例第12条第2項の規定により開示しないことを決定し、平成16年12月22日付け教職第78号の9で異議申立人に通知した。

(2) 不開示の理由について
ア 県立高等学校校長をはじめとする校長の資格については、学校教育法施行規則(以下「施行規則」という。)第8条で規定されている。

イ また、平成14年度に実施した県立高等学校校長候補者選考では、57歳以下で、次のいずれかに該当する者に志願資格を与えていた。
(ア) 県立高等学校(市立高等学校及び中学校との人事交流による市町村立中学校を含む)に勤務する教頭で2校5年以上の教頭経験を有する者
(イ) 県教育庁及び教育機関等に勤務する者
しかし、本件請求時における県立船橋高等学校校長(以下「現校長」という。)については、教育委員会事務局の管理職である教育庁生涯学習部参事から現校長への配置換えを行ったものであり、当該配置換えに際して校長候補者選考を実施していないため、平成14年度に実施した県立高等学校校長候補者選考における現校長に係る行政文書は保有していない。

ウ 現校長の配置換えに係る行政文書については、平成14年度第14回定例教育委員会会議第91号議案である上記1(1)アの行政文書を対象特定することができるが、本件請求の趣旨が、既開示決定において対象とし、開示した行政文書以外の行政文書について、さらに開示を求めようとするものであったため、本件決定の際には対象の行政文書から除外した。

以上のことから、行政文書を保有していないため、条例第12条第2項の規定により、不開示決定を行ったものである。

第4 審査会の判断
当審査会は、異議申立人の主張及び実施機関の説明等を審査した結果、以下のように判断する。

1 本件決定について
異議申立人は、実施機関に対し本件請求をした。
これに対し、実施機関は、本件請求の対象となる行政文書(以下「本件対象文書」という。)を保有していないことを理由として本件決定を行った。

2 本件対象文書の不存在について
異議申立人は、異議申立ての理由で「実施機関からの説明によると、校長の決定に当たっては最小限、校長の資格要件の規定及び個人の勤務評定書が作成されている」など種々の主張をしているので、以下に県立高等学校の校長の選考事務の内容について確認の上、本件決定の妥当性について検討するものとする。

(1) 県立高等学校における校長の選考について
実施機関における職員等の人事の方針を定めることや教育長、教育次長、理事、本庁の部長、次長、参事、課長、担当課長及び副参事並びに所長及び教育機関の長を任免することは、千葉県教育委員会行政組織規則(昭和35年千葉県教育委員会規則第2号。以下「組織規則」という。)第8条の規定により、教育委員会の会議(以下「会議」という。)の議決事項となっている。
平成15年度における県立高等学校長の人事の決定も平成15年3月20日に開催した会議で議決されたところであるが、この会議に議案として提出された「県立高等学校長の人事について(議案)」の作成に当たって実施機関は、県立学校の校長、教育委員会事務局職員及び校長候補者選考の合格者の中から、職員の氏名、採用、学歴、資格及び発令内容等を記録している人事カードを資料として、日常の勤務の様子、経歴等から人物を評価し行っているが、異動者は例年60名程と比較的に少ないこともあり、検討に当たっての文書は作成していないと説明している。

(2) 本件請求について
本件請求は、特定の行政文書を指定して行っているものではないことから、特定される行政文書の範囲は、原則として、開示請求書の「開示請求する行政文書の件名又は内容」欄の記載内容に基づいて、合理的に理解し得る範囲においてとらえるべきである。
本件請求について検討すると、実施機関は本件決定に当たっては、異議申立人に請求の趣旨を確認したところ、既開示決定において特定済みの行政文書の他にさらに開示を求めようとするものであったとのことであるから、既開示決定で特定された行政文書以外の文書について特定を行うべきものと判断される。
また、本件請求は、上記第2、2のとおり、現校長が校長に決定されるに至った選考、評価に係るものに限ると解釈することが相当である。
以下、このような観点から、行政文書が存在するか否かを検討することとする。
なお、上記第3、1(2)で実施機関が説明する施行規則第8条に規定している校長の資格については、施行規則が一般に容易に入手・利用が可能な官報及び書籍等に登載されており、この官報及び書籍等が条例第2条第2項に規定する「行政文書」から除かれるものであることから、本件対象文書ではないと判断し、また、県立高等学校校長候補者選考に関する文書は、請求内容から本件対象文書ではないと判断する。

(3) 本件対象文書について
当審査会は、上記(1)及び(2)を踏まえて、千葉県教育委員会行政文書管理規則(平成13年千葉県教育委員会規則第14号。以下「管理規則」という。)の規定により作成された行政文書目録を検索した結果、以下の行政文書が本件請求の趣旨を満たし得るものと思われるので、個別に検討することとする。

ア 勤務評定書
実施機関における職員の勤務成績の評定は、組織規則により、県立学校等の職員(事務職員を除く。)については教職員課で行い、それ以外の職員については教育総務課で行うことが分掌事務として規定されている。
また、県立学校の職員及び県費負担教職員における勤務成績の評定は、千葉県立学校職員の勤務成績の評定に関する規則(昭和33年千葉県教育委員会規則第7号)等により、勤務評定書によって行うものとすると規定されているが、それ以外の職員における勤務成績の評定方法は、規則等に規定されたものではなく、勤務評定書の作成も義務付けられていないことが認められる。
そこで、現校長に係る勤務評定書の存否について、実施機関に確認したところ、平成14年度は作成していないとし、また、過去の勤務評定書については既に廃棄済みであり、その理由は、教育長、教育次長、理事、本庁の部長、次長、参事、課長、担当課長及び副参事並びに所長については、勤務評定書を作成していないとのことであり、また、勤務評定書の保存期間は3年であると説明している。  
そうすると、既開示決定の文書から、現校長は平成11年度から県立学校等の職員以外の職員であったことが認められることから、結果として、現校長に係る勤務評定書を保有していないとする実施機関の説明に不合理な点は見当たらず、本件決定時点では存在していないものと認められる。
よって、現校長に係る勤務評定書は存在していないものと判断する。

イ 平成14年度末及び平成15年度公立学校職員人事異動方針(以下「人事異動方針」という。)
人事異動方針は、会議の議決事項として、議案として会議に提出されるものである。
そこで、人事異動方針について見分したところ、人事における一般方針、実施要項及び管理職への登用などが方針として定められている。
そうすると、実施機関はこの人事異動方針を基に県立高等学校長の選考を行ったことは明らかであり、本件対象文書として特定すべきものであると認められる。
よって、人事異動方針は、本件対象文書として特定すべきである。

ウ 平成14年度末及び平成15年度公立高等学校職員人事異動実施方策(以下「実施方策」という。)
実施方策は、人事異動方針に基づき、公立高等学校職員の具体的な異動施策を定めたものである。
そこで、この実施方策について見分したところ、共通異動施策及び職種別の異動方策が施策として定められている。
そうすると、実施機関はこの実施方策を基に県立高等学校長の選考を行ったことは言うまでもなく、本件対象文書として特定すべきものであると認められる。
よって、実施方策は、本件対象文書として特定すべきである。

エ 上記ア、イ及びウ以外の行政文書 
管理規則第11条によると、所掌事務に係る行政文書の管理を的確に行うため、行政文書について行政文書目録を作成しなければならないとされている。当審査会は、上記ア、イ及びウの行政文書の他に実施機関が作成した行政文書目録から本件請求の趣旨に合致すると思われるような行政文書の存在を確認したが、本件対象文書の存在を認めることはできなかった。
また、実施機関が既開示決定において、行政文書目録を作成していない「人事カード」を特定し開示決定等をしていることにかんがみて、再度実施機関に本件対象文書を保有しているどうか確認したが、対象となる行政文書の存在を認めることはできなかった。

3 結論
以上のとおり、本件対象文書は存在するものと認められるので、実施機関が不存在を理由として行った本件決定は取り消すべきである。

第5 附言
本件決定において、実施機関が、一定の範囲の行政文書を作成していないことを理由に安易に不開示と決定し、本件対象文書についての検討を怠ったことは妥当を欠くものであったと言わざるを得ない。
実施機関においては、今後は、開示請求の趣旨を的確に把握し、制度の適切な運用に努めるよう附言する。

第6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別紙

審査会の処理経過
年月日処理内容
17. 3.23諮問書の受理
17. 5.12実施機関の理由説明書の受理
17. 9.21審議
実施機関から不開示理由の聴取
17.10.26審議


(参考)
千葉県情報公開審査会第1部会委員
氏名職業等備考
大田洋介城西国際大学非常勤講師部会長
大友道明弁護士
瀧上信光千葉商科大学教授部会長
職務代理者
横山清美環境パートナーシップちば
アドバイザー

(五十音順:平成17年10月26日現在)


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