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付け焼き刃の覚え書き

 開設してからちょうど20年。はてなにお引っ越しです。https://postalmanase.hateblo.jp/

「マンガの食卓」 南信長

2014-07-19 | 食・料理
「食べること=生きること」

 古典的名作から最新のものまで、ありとあらゆる食べ物が登場するマンガを紹介し、解説していくおいしいマンガガイドで、その作品がグルメブームにどう影響を与えたり与えられているのかとか、作家によるこだわり方の違いは物語作りの姿勢によるとかあれこれ。確かにあだち充の食事シーンは淡泊だし、高橋留美子はがっつり描き込んでます。
 『ど根性ガエル』の梅さんの寿司から『海街diary』のちくわカレーまで、とにかく「これは載ってる?」とこちらが思いつくものはなんでも載っている徹底ぶり。グルメブームの火付け役になってしまった『美味しんぼう』や男子厨房を背中から押した『クッキングパパ』、最近では『トリコ』あたりまでフォローしているのは当然としても、料理勝負マンガの元祖である『庖丁人味平』はもちろん『スーパーくいしん坊』まで言及されているし、青年誌の『庖丁人無宿』や『ザ・シェフ』、女性誌連載の『おいしい関係』、少年誌の『銀の匙』等々。
 それが単に紹介されている、とにかく並べているというだけではなく、ちゃんと作品論、作家論、文化論になっているところがミソです。
 料理マンガでまったく言及されていないのは4コマ系くらいじゃないかな。これで『貧民通信』のキャベツが加わっていたら、個人的にはパーフェクトです。

【マンガの食卓】【南信長】【NTT出版】【マンガガイド】【ブラックカレー】【ビフテキ】【ラーメン】【おとりよせ】【スキ焼き】【ムショめし】【カニチャーハン】【飢え】
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「世界征服~白いケイトと真夏のベルビアージェ~」 木村航

2014-07-18 | 時間SF・次元・平行宇宙
「欲望が世界を創るの。望み通りの新たな世界を」
 これは“物語”なのだと、白いケイトは語る。

 夏真っ盛りのある日、地紋明日汰の腕の中へ白いケイトが降臨した。
 いつも明日汰をこき使っている、世界征服を企むヴィニエイラ様こと星宮ケイトと見た目はそっくりだが性格は正反対の甘えんぼ。
 気がつけばいつものケイトと入れ替わりに現れては、またいつの間にか姿を消しているのだが、周囲はどちらも同じ存在、ヴィニエイラ様と認識している。
 けれども、彼女と出会ってからというもの、明日汰を不運が襲うことはなくなり……というか、不幸な出来事がなかったことにされるようになった。
 混沌とする記憶、改変される現実、消えていく登場人物。果たして彼女は何者なのか……。

 テレビアニメ『世界征服~謀略のズヴィズダー』の外伝小説で、ズヴィズダーによる夏休み征服計画です。
 コメディタッチのアニメ本編と比較するとややリリカルで、アクションは控えめでした。アクションコメディというより世界改変SF。不条理と言うには理が整っているかな。でも、あくまでズヴィズダーの外伝。

【世界征服】【白いケイトと真夏のベルビアージェ】【木村航】【茗荷屋甚六】【黒星紅白】【有限会社ノーツ】【TYPE-MOON】【夏の高校野球】【花火大会】【プール】【アニメ映画】【ラジオ体操】【キャンプ】【露天風呂】【盆踊り】【絵日記】【流しそうめん】
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「ガンパレード・マーチ2K~5121小隊帰還」 榊涼介

2014-07-17 | 異世界結合・ゲート・ゾーン
 アメリカ西海岸から幻獣を駆逐したことで、北米での騒乱も落ち着いたはずだったが、シアトル共和国は幻獣による精神汚染に未だ無防備なままであったし、銀狼師団は損害こそ大きかったものの相変わらず権勢を振るい続けていた。
 帰国準備を進める5121小隊だったが、そこにシアトル政府代表であるオルレイが知性体によるシアトル・リスクの排除を願い出て、これに即時帰国を主張する整備班が一斉に不満の声を上げるのだが……。

 この、問題が残っているうちは戦い続けるべきだとする戦闘部隊と戦場を離れたい後方支援部隊との対立は、もう九州あたりから延々と繰り返されていて、短い話ならともかくこれだけ長いシリーズだとそろそろ「そういう話はそっちで解決してから出てきて」と言いたくなります。でも、これにてアメリカ編、最終章。榊ガンパレそのものも終了に向けてのカウントダウンに向かっているようで、ここは気持ち良く終わって欲しいと思います。
 それから、悪役があまりにお約束のミスを犯してしまうのは残念。

【ガンパレード・マーチ2K】【5121小隊帰還】【榊涼介】【きむらじゅんこ】【電撃ゲーム文庫】【南九州刊観光社】【フリーメーソン】【メロンパン】
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「吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる(1)」 野村美月

2014-07-16 | 学園小説(不思議や超科学あり)
「本当の吸血鬼はこんなこといわない」
 なんというか、「演劇少女と初心者な吸血鬼」……といった感じの話です。

 中高一貫教育のマンモス校である海星学園には4つの演劇部があり、それぞれ芸術性を追求したり、男装の麗人による華やかな舞台を極めたりし互いに人気を争っている。男女のラブシーンが売り物のチーム・レグルスは昨今、人気急上昇だが、チームトップの退団で配役に悩まされていた。
 現在のトップスター候補である彩音があまりに背が高いので、相手役となる男性役者がいなかったのだ……。

 吸血衝動もぼちぼち出てきているけれど生気を吸収することで少しは抑えられる、十字架やニンニクは弱点ではないけれど感覚が敏感になっているのでカレーライスなどは臭いがきつくて食べられない、身体能力が高くなりすぎて逆にスポーツはできない……通り魔に刺され死にかけていたところを吸血鬼化することで生き延びた高校生の物語です。
 シリーズ開幕のつかみはOK。予告を見ると今後も、このまま演劇路線でいきそうですが、他の3チームにはどこまで言及されるのか、吸血鬼という存在についてどこまで突き詰めていくのか、そもそもキス魔扱いされそうな主人公はこのままキス魔になってしまうのか、今後の展開が気になります。

【吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる(1)】【野村美月】【竹岡美穂】【ファミ通文庫】【ドラマティック青春ノベル】【魔性の聖女】【バスケットボール】【演劇部】【吸血鬼】
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「坂の上の雲(3)」 司馬遼太郎

2014-07-15 | 戦記・戦史・軍事
「白砂糖は、黒砂糖からできるのだ」
 マハン大佐の教えに従い、秋山真之は陸戦海戦を問わず古今東西の戦史から実例を引き出して軍学の礎とした。そのため、日本海海戦の後、その戦法が水軍(海賊)の匂いがすると指摘されることになる。

 もはや秋山真之を教えることのできる者はいなかった。明治35年、真之は海軍大学校に新たに設けられた戦術講座の教官として赴任する。
 そして病床の正岡子規がついに息を引き取り、司馬遼太郎はこの小説をどう書き継ごうかまだ悩んでいた……


 兄が日本の騎兵の基礎を作り上げ、弟が海軍作戦の基礎を作り上げていく物語も、ついに日露戦争が始まります。
 そもそも国力差からして政府はもちろん陸軍も海軍も財界も勝てるとは端から思っていません。戦争を始めたがっているのは景気の良い報道に踊らされている庶民くらい。それでも、ロシアは満州、遼東半島の軍備を着々と増強し、軍艦の建造まで始まっているので放置しておけば数年と経たずに朝鮮半島まではロシアの領土になることは目に見えていて、そうしたら日本は保ちません。
 残された選択肢は、とにかく戦争して何とか五分五分にまで持って行った上で外交で線引きに持ち込む……そのためには、まず初戦で勝って海外の投資家に日本の国債を買ってもらって戦費調達しなくては……と、そこから始めないといけない泥沼の戦争です。
 でも、この日露戦争の時点では、国も軍も相手の技量を甘く見たり、物量で負けても精神論で何とかなるとは思っていなかったというのが司馬史観です。なにやってんだ、太平洋戦争時の日本は……というのが、自分が実際に戦場で苦労した司馬遼太郎の思いなんでしょう。
 そして、やりたい放題の正岡子規が退場しましたが、そのあたりの誰だって死ぬのはイヤに決まっている、その本人が死にたがっているというのはどれほど苦しいということなのか理解せよというくだりには実体験として納得してしまいます。

【坂の上の雲3】【司馬遼太郎】【文春文庫】【能島流海賊古法】【甲州流軍学】【立ち小便】【日英同盟】【杉野は何処、杉野は居ずや】【クロパトキン】【旅順港閉塞】【機雷】
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「メイド喫茶ひろしま」 八田モンキー

2014-07-14 | その他フィクション
 広島では熊をも倒すと恐れられた“赤ヘルの多麻”だったが、育ての親でもある祖父が倒れたと聞いて愛車を飛ばして東京へと出てきた。
 そして祖父の喫茶店の借金を返済すべく、いきなり飛び込んできた女子高生とコンビを組んでメイド喫茶を始めることにしたのだが……。

 風俗街・池袋北口を舞台にした人情活劇。
 メイド喫茶の話だけれどヤクザやチンピラとのいざこざが多く、お店ものとかビジネス小説として読むにはメイド喫茶に愛がないかな。店員にかわいい女の子がいっぱいいるだけで良いならお好み焼き屋とかでもいいわけで、ここはもうちょい「店員さんがカワイイ喫茶店」ではなく「メイド喫茶」でなければいけない理由が欲しかったです。
 今回は伝説のキャバ嬢の大食いとか物語に活かされなかった設定も多く、葉月が多麻に惚れ込んだ理由とかもあまり語られていないし、主人公も熊殺しみたいに言われながらケンカではいつも押されっぱなしです。そういうあたりが残念でした。
 お店のスタッフが、月、夜、星と並んでいて、店長だけ仲間はずれなのも気になります。

【メイド喫茶ひろしま】【八田モンキー】【shirakaba】【ぽにきゃんBOOKS】【元・女子高生ビジネス人情活劇in池袋】【CB400FOUR】【高利貸し】
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「楽聖少女」 杉井光

2014-07-13 | アイドル・声優・芸能
 ゲーテいわく「歴史にあるべき方向なんてない」
 ただそのときの生きている人々の欲望と熱が生み出した流れがあるだけだと。

 嵐の日の高校の図書館で、彼は悪魔メフィストフェレスに出会った。そしてかわした覚えもない契約によって、文豪ゲーテが求める若い肉体として、彼は200年前の楽都ウィーンへと連れ去られてしまう。
 だが、そのウィーンは彼の知る世界とは少しだけ違っていた。
 電話があり、飛行船があり、遥か戦場では戦車が暴れ回っているらしい。悪魔は1人だけではないし、この過去の世界に連れてこられた未来の人間も1人ではないのだろう。
 そこで日本人の姿のままでゲーテとなった少年は、稀代の天才音楽家ベートーヴェンに出会うが、ベートーヴェンもまた小さな美少女だった……。

 自分は遥か未来の日本という国の高校生だと主張しても「二人分の人生を味わえるなんて作家にとっちゃ涎もんだぜ」と笑い飛ばすヨハン・クリストフ・フリードリヒ・フォン・シラーがすてき。というか、そもそも悪魔の技なので、ゲーテ翁がいきなり若返っても誰も気にしません。悪魔を狩ろうとする教会すら。
 そして音楽小説が多い杉井光らしく、主題は音楽や文学にそれぞれがどのような形で向き合うか……あたりなのだけれど、悪魔やら神の介入があれこれあるらしく異能バトルの片鱗もあります。未登場ながら単身で万の軍勢を粉砕するというナポレオン・ボナパルトとか、拳で語り合う筋骨隆々としたハイドン師とか、〈カノン〉使いのパガニーニとか、どこのR.O.Dかという騒ぎです。
 まさに音楽小説にして異能バトルでした。

【楽聖少女】【杉井光】【岸田メル】【電撃文庫】【絢爛ゴシックファンタジー】【温泉】【ヒットチャート】【iTunes】【マリー・アントワネット】【アマデウス】【フランツ2世】【サリエリ】【ルドルフ大公】【魔笛】【ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン】【ポリーヌ・ボナパルト】
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「東池袋ストレイキャッツ」 杉井光

2014-07-12 | アイドル・声優・芸能
 引きこもりだった高校生のハルは、深夜のゴミ捨て場で赤いギターを拾った。自分が大好きで、そしてつい先日事故で死んでしまったロックアーティストのキース・ムーアと同じギブソンES-335だ。
 ところがギターを拾ったその日から、彼は幽霊に取り憑かれることとなった。キースの幽霊だ。
 キースは自分が死んでしまって作りきれなかった曲を、代わりに作詞作曲演奏しろというのだ……。
「ロックの基本はコピーだ。昔の曲も覚えろ」

 池袋駅の東口を舞台に、元・引きこもり少年と少女とストリート・ミュージシャンたちの姿を描いた連作短編集。

「悩みなんてそもそも恵まれた者の贅沢だ」
 ほんとうに恵まれていない人は悩む暇もなく飢えや病や銃弾で死んでいくのだとハルは思い至る。
 でも、それでも悩みが消えるわけではないし、自分たちには自分たちなりの戦場がある。使えるものは何でも使って夢を叶えようとするのだ。

【東池袋ストレイキャッツ】【杉井光】【くろでこ】【電撃文庫】【せつなく甘い青春と音楽の物語】【池袋】【シンガーソングライター】【UFJ】【ジョン・デンヴァー】【ビートルズ】【ロンドン行き最終列車】【いけふくろう】【ポリス】【スタンド・バイ・ミー】【トゥモロウ・ネヴァー・ノウズ】【カケラバンク】
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「坂の上の雲(2)」 司馬遼太郎

2014-07-11 | 戦記・戦史・軍事
「人間の頭に上下などはない。要点をつかむという能力と、不要不急のものはきりすてるという大胆さだけが問題だ」
 秋山真之は同級の森山慶三郎に対して、物事ができるかできないかの差は性格の違いだけだと告げた。

 朝鮮半島での日本と清国の権益争いは一触即発の危機にあった。
 軍は、「日本公使館は兵員若干をおき、護衛すること」という済物浦条約の条項を拡大解釈して合法的な出兵を画策。慎重派の首相であった伊藤博文に対しては「一個旅団を派遣する」と報告しながら、通常は兵員数2000名の旅団を戦時編制の8000名にして派兵。これをもって既に5000名を韓国に派遣していた清国に対抗することとした。
 日清戦争の勃発である。
 弟・秋山真之が巡洋艦に乗り込んで第二線で駆け回っていた頃、遼東半島に上陸していた兄・好古は自らの支隊を率いて偵察を実施。旅順要塞攻略を立案していた。
 そしてそのとき、病床の正岡子規は近代短歌・俳句を確立しようと旧弊な文学勢力と戦っていたが、自分の余命が長くないのを良いことに、言いたいように言って暴れ回っていた……。

 日清戦争や義和団事件を経て、米西戦争に観戦武官として参加した秋山好古が軍略家としての基礎を学ぶまで。

「俺には嫁が多すぎてこまる」
 水雷屋である海軍大尉、広瀬武夫にとっての妻は海軍と柔道と漢詩だった。
 趣味の対象を嫁と言い切るのは、どこから始まったんだろうか。

【坂の上の雲2】【司馬遼太郎】【文春文庫】【鉄道網】【兵棋演習】【イロコワ】【港口閉塞】【無敵艦隊】【アルフレッド・セイヤー・マハン】【大山巌】【黄海海戦】
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★戦うヒロインの系譜

2014-07-10 | 雑談・覚え書き
1.神話時代の戦うオトメ
 神代、「女が戦場に立つ」こと自体は珍しくは無かった。

 ・アテナからアスターテまで~戦いの女神たち
 ・戦う美女集団~ワルキューレとアマゾネス伝説
 ・巴御前~日本最強の女武将
 ・付喪神~擬人化されたアイテム

★レイ・カミングスの『時間を征服した男』にて科学族少女隊が実戦投入。(1929)
★アメリカンコミックに女性ヒーロー「ワンダーウーマン」登場。(1941)


2.戦後の戦う女性たち~TV時代の戦う女性集団
 戦争によって不足した労働力を女性が担うようになって社会真進出が進み、1970年代初頭よりの女性解放運動「ウーマンリブ」も広まっていく。
 1972年にはローラーゲームの日本人女性によるチーム「東京ボンバーズ」の試合が東京12チャンネルで毎週レギュラー放送されてブームになり、また1976年には女子プロレスラーのタッグチーム「ビューティ・ペア」が人気となり、女子プロレスがブームとなるなど「戦う女性」が広く認識され始め、少女マンガの世界でも「強い女性」が頭角を現し始める。

 ・戦う女性の再発見
 ・視聴率稼ぎのお色気アクション
 ・汗まみれの女たち
 ・女は働き、男は家を守る~キャグニー&レイシー

★山田風太郎、女性忍者集団を主役にしたの伝奇小説『くノ一忍法帖』連載開始。(1960)
★テレビドラマ『マリンコングの大逆襲』に主人公を助ける謎の仮面のヒロイン「くれない天使」登場。(1960)
★戦闘機部隊のパイロットがすべて女性という特撮人形劇『キャプテン・スカーレット』(1967)放映開始。
★国際秘密保険調査員の女性グループが暴れるお色気アクションドラマ『プレイガール』放映開始。(1969)
★襲来するUFOを迎え撃つ最前線、月面基地の作戦指揮所がすべて女性コマンダーという特撮テレビ『謎の円盤UFO』放映開始。(1970)
★『マジンガーZ』に女性型巨大ロボット・アフロダイA登場。(1972)
★『好き! すき!! 魔女先生』に「アンドロ仮面」登場。学園ものから路線変更。(1972)
★『科学忍者隊ガッチャマン』放映開始。以後、タツノコ作品には肉弾戦に参加する強いヒロインが目立つようになる。(1972)
★『キューティーハニー』放映開始。(1973)
★3人の美女探偵が活躍するテレビドラマ『チャーリーズ・エンジェル』放映開始。(1976) 
★『600万ドルの男』のスピンオフ作品『バイオニック・ジェミー』放映開始。(1976)
★タツノコアニメ 『ゴワッパー5 ゴーダム』放映。リーダーが少女のロボットもの。(1976)
★女性刑事のコンビを主人公とする刑事ドラマ『女刑事キャグニー&レイシー』スタート。(1982)


3.少女マンガは戦う
 『ウルトラQ』ではカメラマン、『ウルトラマン』では通信担当、『ウルトラセブン』では医療担当、『サイボーグ009』では情報収集と、少年の世界では、あいかわらず女性は戦う男たちに守られる存在であり、共に戦場に立つことがあっても治療・偵察・通信などのサポート役であり、武器を取って戦っていてもすぐに窮地に陥ってヒーローに助けられる役を割り当てられることが多かった。
 1969年から連載の始まったマンガ『ワイルド7』では1年後の「コンクリート・ゲリラ篇」よりゲリラハンター・ユキが加わるがいつの間にか員数外。女ワイルドも結成されるが間もなく壊滅状態に。
 一方、1975年には少女マンガ誌「別冊マーガレット」にて、和田慎二の『超少女明日香』と柴田昌弘の『狼少女ラン』が読み切り掲載。好評を博してやがて長期連載化していくことになる。
 こうしたSFやファンタジーに正面から挑んだ作品が少女マンガに増え、フェミニストSFも増えていたことから男性読者の敷居も下がり、男性であってもSFファンなら少女マンガは読んでいてあたりまえという時代になっていく。

 ・恋する少女から戦うヒロインへ
 ・少女マンガにおけるSFとファンタジー
 ・男性作家と少女マンガ
 ・魔法少女から超能力少女へ

★C.L.ムーアの『処女戦士ジレル』の日本語訳刊行。(1974)
★不思議な力を使うお手伝いさんがエスパー兄妹や忍者と戦う、和田慎二の『超少女明日香』シリーズがスタート。(1975)
★古代人類の血を引く少女の孤独な闘い、柴田昌弘の『狼少女ラン』シリーズがスタート。(1975)
★大和和紀の『はいからさんが通る』連載開始。少女マンガの王道ストーリーに酒乱で暴れるパワフルなヒロインを配置。(1975)
★必殺シリーズ『必殺からくり人』に初の女性リーダー、からくり人・花乃屋仇吉登場。(1976)
★萩尾望都『スターレッド』連載開始。(1978)
★権力者の娘が管理社会に反旗を翻す、奥友志津子の『ドリーマー』連載開始。(1980)
★女の子の身体と男の子の勇気で戦う立原あゆみの『すーぱー・アスパラガス』刊行。(1982)


4.SFの浸透と拡散の時代
 これまで少女マンガの世界で浸透してきていたサイエンス・フィクションという概念が、「メカと美少女」の組み合わせという枠を与えられたことで少年マンガやアニメの世界でも拡散していく。まさに「SFは絵だねえ」という言葉そのままであった。
 やがて『STOL』や『アトラス』など、同人マンガ作品を中心に、戦う女性、女性型メカ、少女が操るメカなどが増えていき、そこから商業作品へと広がっていき、それにともなってマンガやアニメに登場する女性たちも通信や医療といった補助スタッフではなく戦闘要員として活躍するものが増えていった。

 ・戦場に立つ女たち~弓さやかからセイラ・マスまで
 ・生身で戦う美少女~それもダイコン3から始まった
 ・「メカと美少女」が「メカ美少女」になるまで~空山基と園田健一
 ・そして戦場は女だらけになった……

★『グレートマジンガー』にて炎ジュンが操縦するビューナスAが戦場に登場。しかし、前作『マジンガーZ』におけるアフロダイA同様、サポート以上の活躍は無かった。(1974)
★『秘密戦隊ゴレンジャー』に武器開発と爆発物処理のスペシャリストとしてモモレンジャー参加。(1975)
★同人誌「VTOL」にて園田健一が『うる星やつら』のキャラをロボット化したイラストを発表、後に『ラムロイドブック』としてまとまる。(1978)
★『機動戦士ガンダム』第16話「セイラ出撃」以後、女性が単独で兵士として戦場に立つようになる。(1979)
★怪力エスパー炎上寺由羅がテレポーター五味たむろと大暴れする、高橋留美子のコミック『ダストスパート!!』連載。(1979)
★『ダーティペア』(1979) 高千穂遙によるSFアクション。美少女エスパー2人組が災厄をまき散らす。
★人間を襲い寄生する異星生物エイリアンと女性クルーが戦う『エイリアン』公開。(1979)
★大阪で開催された日本SF大会DAICON3のオープニング映像として美少女がメカと戦うアニメが上映。後に大会の赤字対策としてビデオ販売。「戦う美少女とメカ」というビジュアルの定着。(1981)
★模型雑誌を起点に「MS(モビルスーツ)少女」に人気が出る。人型兵器の擬人化が進む。(1982)
★プラモデルのロボット「プラレスラー」を用いた競技「プラレス」を描いた『プラレス3四郎』始まる。プラレスラー桜姫が人気。(1982)
★『超時空要塞マクロス』放映開始。第12話「ビッグ・エスケープ」よりミリア・ファリーナ登場。(1982)
★コントロール中枢が美少女型アンドロイドとなった脱出用宇宙船ナダが登場する、佐々木淳子の『ブレーメン5』連載開始。(1982)
★コントロール中枢が美少女型アンドロイドとなった有機宇宙船チャイカが登場する、弓月光の『トラブル急行』連載開始。(1982)
★女性型ロボット兵器M66、M77が暴れる士郎正宗の『ブラックマジック』刊行。(1983)
★アクション映画『ストリート・オブ・ファイアー』公開。(1984)
★アニメ『重戦機エルガイム』と『魔法の天使クリィミーマミ』を足して割った設定の『ポニーメタル U-GAIM』の同人誌及びプロモーション映像ビデオ発売。(1985)
★怪力のエルフ少女が主人公の『エルフ・17』スタート。(1985)
★アニメ映画『プロジェクトA子』公開。タイトルは『プロジェクトA』のもじりだけれど、内容は女同士の三角関係に端を発した、怪力少女と強化スーツを装着した美少女による戦い。(1986)
★女性しかいない世界の未来戦記アニメ『ガルフォース ETERNAL STORY』がOVAリリース。(1986)
★必殺仕事人がモチーフの美少女SFのOVAシリーズ『バブルガムクライシス』スタート。(1987)
★新谷かおるの『エリア88』にてセイレーン・バルナックがサキ・ヴァシュタールの指揮下に入る。(1979)


5.架空戦記への女性進出
 女性が単なる男のサポート役・引き立て役から対等のパートナーとなり、またメカ少女になったり現用兵器を操ることで戦場の主役へとなっていき、青少年向けのコミックや小説でも、既に主人公が女性というのは珍しいものではなくなっていた。
 こうした中、閉塞感に陥っていたミリタリー・ジャンルにおいて、萌え系美少女を投入するケースが増えていき、女性ばかりの軍隊などが登場するに至る。そしてさらには兵器=女性という概念が定着していく。

 ・少女がすべてを蹂躙する~乙女のたしなみ
 ・男たちは見守る~ギャルゲーの派生から
 ・女たちの戦争~架空戦記の女子部隊
 ・メカ娘がいっぱい
 ・戦艦と呼ばれて~プリンセス・プラスティックから艦娘まで

★天才魔導士リナ=インバースが活躍する『スレイヤーズ』スタート。(1990)
★母親が息子を守って未来から送り込まれたアンドロイドと戦う映画『ターミネーター2』公開。(1991)
★自衛隊が世界初の女性パイロットだけのアクロバット・チームを結成するという、清水としみつの『青空少女隊』刊行。アニメ化。(1991)
★ 吉岡平のライトノベル及びOVA『アイドル防衛隊ハミングバード』スタート。自衛隊が民営化されて戦闘機を操る女性アイドルが登場する時代の物語だけれど、基本の設定は『サンダーバード』。(1993)
★コンピュータを擬人化して美少女化した、新谷かおるの『ぶっとび!!CPU』スタート。(1993)
★明貴美加によるMS少女イラストを集めた『超音速のMS少女』刊行。(1994)
★『ウルトラマンテイガ』にシリーズ初の女性隊長イルマ・メグミ登場。(1996)
★おバカな女子高生吸血鬼ハンターが主役の『バフィー~恋する十字架~』放映開始。(1997)
★無人機械が少女の姿をしているのがあたりまえという、米田淳一の『プリンセス・プラスティック』シリーズがスタート。おそらく個体の美少女を「戦艦」と言い切った最初の作品。(1997)
★『ウルトラマンガイア』に女性だけの戦闘機チーム「チームクロウ」登場。(1998)
★中里融司による仮想戦記『軍艦越後の生涯』では、軍艦にはそれぞれ女性の姿をした船魂が宿るとして、各戦艦に美少女が具現化。(2001)
★「Project G.A.」スタート。(2001)
★男子の出生率が下がったことで女性だけの女子補助海軍も創設された……という中岡潤一郎の『スカーレット・ストーム』刊行。(2004)
★第二次大戦中の空軍と陸軍の兵器を擬人化した、島田フミカネによるメカ少女のイラストコラム企画『ストライク・ウィッチーズ』がマンガ雑誌「月刊コンプエース」にて始まる。(2005)
★戦闘機や戦車などの兵器を擬人化した「メカ娘」が広まり、島田フミカネがデザインした「メカ娘」を、コナミがシリーズ化して発売。(2005)
★美少女たちの語りで戦車の仕組みや運用、開発史などについて教える『萌えよ!戦車学校』発売。(2005)
★ミリタリー雑誌『ミリタリー・クラシックス』から、兵器を萌え美少女化したイラストや記事の部分だけを独立させて『MC☆あくしず』創刊。(2006)
★『ストライク・ウィッチーズ』アニメ化。(2007)
★超兵器を搭載した第二次世界大戦時の軍艦群“霧の艦隊”との戦いを描いた、Ark Performanceによる海洋戦記マンガ『蒼き鋼のアルペジオ』連載開始。戦艦のコントロール中枢が美少女化。(2009)
★戦車道が乙女のたしなみとされている世界の『ガールズ&パンツァー』放送開始。(2012)
★『蒼き鋼のアルペジオ』アニメ化。(2013)
★ブラウザゲーム『艦隊これくしょん -艦これ-』始まる。(2013)


 偏った読書体験から戦うヒロインの系譜についての覚え書き。
 守られるべき存在、職場の華、通信・諜報・医療・事務などのサポートスタッフとして扱われることの多かった女性が戦場の主役になるまでで、全体の流れを把握するために概論のみ。レッド・ソーニャとか女ターザンは沼が深いので省きました。
 原点を探していくと、「戦うヒロイン」というと日本でも源平の時代までは軽く遡れるので意味なし。創作が男性主体だと男性主役で女性が添え物になりがち、または女神として祀り上げられるということか。
 「女性型ロボット」の元祖というと、映画『メトロポリス』(1927)のアンドロイド・マリアなんだろうけれど、日本人の原点としてはアフロダイAと考えるべきなのかな。それが「美少女なメカ」ということになると、年表を見ていてMS少女とラムロイドのどちらが早いかという話になるかなと思うのだけれど、そうすると当然のように手塚治虫の陰が。『鉄腕アトム』とか『疾風Z』とか『マグマ大使』とかまで行ってしまうんですよね。恐るべし。
 ロボットもののヒロインは、タツノコが早期からむくつけき男をぶん殴って叩き伏せるヒロインを次々に送り出していたのに対し、全体的には紅一点で、ロボットに乗り込んでも悲鳴要員ということが多くて、忍者とか格闘技もできるとかいう設定はなかなか使われず。『超獣機神ダンクーガ』(1985)あたりまでいくとヒロインの暴れっぷりが目立ちだし、『破邪大星ダンガイオー』(1987)あたりまでいくと合体ロボットのパイロット4人中3人が女性になります。
 紅一点ではなく、「女性ばかりの武装集団」でかつ「男主人公の当て馬」でない……というと『ガルフォース』『バブルガムクライシス』などのSFものから流行だし、民営化された自衛隊『ハミングバード』とかアクロバットチーム『青空少女隊』になりますが、大元祖はやはりワルキューレかアマゾネスかということになろうと思います。

 とりあえず思いつくまま。(2015/02/05 改稿)
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「僕は友達が少ない(10)」 平坂読

2014-07-10 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「親となんてうまくいってなくても、人生どうとでもなりますよ」
 志熊理科は冷たく吐き捨てるように言った。

 みんなにばかり変われ変われと言って、自分が変わらないのは許されないと、小鷹はついに自分を変えてみようと決意する。
 けれど、クリスマス・パーティーの騒ぎの後で、彼は基本的に思い違いを気づかされることになる……。

 それぞれの人間関係がパタパタパタッとひっくり返っていく終盤です。次巻はエピローグ的なものになると聞いて、えっ、このまま一気に終わってしまうの!?と愕然。いや、そりゃ、良いですけれど。なんとなく、タイトルに向かって収束していくなあと思いました。つまり「友達がいないから、いっぱいつくろう」として失敗したので、最後は「僕は友達が少ない。でもみんな最高だ」みたいな言葉で締めくくられそうな展開です。少なくとも「僕は友達が少ない。でも恋人は多い」という話にはなりそうにありません。残念。
 本当に「正しさに背を向けたまま」突っ走ってしまうのかな。
 前半は、良い「汝は人狼なりや?」のリプレイ小説でした。こうやって読むと、「汝は人狼なりや?」って、紳士的な「闇はりせん」ですね。(人狼の発売は2001年、はりせんは確か1989年のイベントでありったけ買い占めて、それでも足りなくなって自作したからそれくらい)

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「鍵穴から覗いたロンドン」 スティーブ・ジョーンズ

2014-07-09 | エッセー・人文・科学
 旅行ジャーナリストである著者が、さまざまな文献や新聞記事、裁判記録あたりまでを引っかき回して集めて作ったビクトリア朝ロンドンのガイドブックで、犯罪とか怪奇がメインだった『恐怖の都・ロンドン』の続編で、主に退廃と放蕩と色欲。森薫の『エマ』の副読本くらいのつもりで手を出すと、その内容に打ちのめされること間違い無し。

 ビクトリア朝ロンドンといえば大英帝国の繁栄の象徴ではあるけれど、その裏を覗いてみれば背徳の都といわれても否定できないものであった。
 街には高級娼婦から幼女の淫売まで娼婦が跋扈し、その多くはスリや盗人と兼業だったし、ポルノグラフィーの歴史はロンドンの歴史ともいえるものだった。動物いじめはレジャーの一種であったし、ネズミの山から女同士のキャットファイトまで賭博は盛んで、王侯貴族から貧民街の庶民まで、変態と悪趣味が満ちあふれていたのだ……。

「あなたが何を考えているか、そのズボンなら一目で判るもの」
 17世紀には、男は14歳、女は12歳で結婚することができたが、結婚式では男の多くはびっちりした半ズボンを身につけるよう花嫁から求められていた。

 貧しい人々は医者にも見放されて死んでいき、生活苦で売られたり誘拐された子供の運命たるや酷いもので、「処女には性病を治す力があると信じられていた」というについては何をか言わんや。
 この本の唯一の救いは、19世紀になってメソジスト教会の牧師であるウィリアム・ブースによって救世軍が創設され、餓死寸前だった幼児や孤児の幾ばくかは救われたというあたりでしょうか。
 でも、現代日本の東京あたりでも、100年後にスポーツ新聞や週刊誌の記事をベースに紹介記事を書かれたら、こんな本になってしまうのかもしれません。

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「本命TV時代劇テーマ曲集」 徳間ジャパンコミュニケーションズ

2014-07-08 | 時代・歴史・武侠小説
 タイトルに「R40's」とあるように、40代をターゲットにしたTV時代劇のテーマ曲集。ホームセンターのワゴンセールで見つけて購入、1500円。
 「ちょんまげ天国」とか懐かしのテレビラジオのテーマ集みたいなのは過去に幾つでもあるのだけれど、バージョン違いも多いので重箱の隅をつつく感じであまり他で聞けない曲もちらほら。
 「暴れん坊将軍」は旧オープニングの方。
 「銭形平次」は舟木一夫ではなく、北大路欣也バージョン。
 「水戸黄門」のは里見浩太朗と横内正による「あゝ人生に涙あり」。
 「大江戸捜査網」のテーマは今までに購入した中には入ってなかったので嬉しいな。
 夫婦でドライブ中に危機ながら、「浮世絵女ねずみ小僧」は好きだったとか、「水戸黄門」はやっぱり東野英治郎だよなとか話ながらも、必殺シリーズは結局、いい人がみんな死なないと話が進まないのがキライだったということで意見の一致を見ました。

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「孤島の夜明け」 九条菜月 

2014-07-08 | 超能力・超人・サイボーグ
 グルア監獄のシリーズも、監獄の秘密も、国内の派閥抗争も、暗躍する謎の組織もきっちり処理して4巻完結です。
 古めのマンガ読み向けの比喩で言うなら『エロイカより愛をこめて』とその外伝『Z』のように、ドタバタタッチのコメディとシリアスなアクションの間を行ったり来たりした話でしたが、最終巻は前巻の引きそのままにクーデター勃発。クーデター話なんかに筆を割いていて大丈夫か?と思わなくもなかったですが、首都動乱も監獄叛乱もどちらもきっちり収束。
 ここぞとばかりにへっぴり腰で暴れるカルディナ・バシュレ一等兵とか、リル少将に鍛え上げられた将官はただのお飾りじゃないぞ!とか、笑い処もあるのだけれど、一方では死屍累々となかなか厳しい状況です。

 グルア監獄へ割り当てられた不審な予算を調査するための調査団が来島。ところが、クロラ・リルが脱走幇助の容疑で拘禁され、執拗な尋問が加えられてしまう。
 だがその頃、本土では平和式典のさなかに軍拡派によるクーデターが勃発。元帥以下軍の首脳陣とクライシャナ中佐は、議員らと共に議会会館に立て篭もって援軍を待つのだが……。

 どうせ間に合わないからと、報告を後回しにするイグレシア大尉はおかしいと思います。

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「エロマンガ先生2」 伏見つかさ

2014-07-07 | その他フィクション
「マリみて全巻、『パラソルをさして』だけ抜いて貸してやろうぜ」
「な、なんで兄さんは、そんな悪魔みたいなことが思いつくの?」

 ライトノベルファンを増やすための啓蒙活動みたいなものだけれど、その所業、許しがたし!
 作中でいろいろ面白いライトノベルの紹介をしているのだけれど、それがちゃんと電撃文庫以外にも言及していて、うん、そのあたりが王道かと勉強になりました。しかも「面白いけど、なかなか続きが出ない」というところがミソ。

 エロマンガ先生の協力も得て次回作の企画と執筆に励む和泉マサムネだが、人気作家・千寿ムラマサの突然の出版が割り込んで先送り。次の出版枠が1年後では生活費が稼げないという緊急事態に陥った。
 それを聞きつけた山田エルフが知り合いの編集部を紹介しようかと提案してくれたのだが……。

 誰でも、自分だけの“世界で一番面白い小説”を持っている、という話。もしくは公開ラブレターの2通目。AがBのフォロワーではなく、BがAのフォロワーだったというあたりがミソ。
 いきなり「天下一武闘会」なんて始まるものですから、『犬とハサミは使いよう』みたいな執筆勝負になるかと思いきや、意外にもまともなコンテスト。どちらかというと『男子高校生で売れっ子ライトノベル作家……』の方に近かったかも。
 でも、ちょっと編集者がうざかったかな。理由はどうあれ、結果的に話がぐたぐたしているときは静観し、調整も何も後回しにして、一件落着してから結果オーライで自分の手柄みたいに胸を張るのはちょっといただけないです。

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