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付け焼き刃の覚え書き

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「鍵穴から覗いたロンドン」 スティーブ・ジョーンズ

2014-07-09 | エッセー・人文・科学
 旅行ジャーナリストである著者が、さまざまな文献や新聞記事、裁判記録あたりまでを引っかき回して集めて作ったビクトリア朝ロンドンのガイドブックで、犯罪とか怪奇がメインだった『恐怖の都・ロンドン』の続編で、主に退廃と放蕩と色欲。森薫の『エマ』の副読本くらいのつもりで手を出すと、その内容に打ちのめされること間違い無し。

 ビクトリア朝ロンドンといえば大英帝国の繁栄の象徴ではあるけれど、その裏を覗いてみれば背徳の都といわれても否定できないものであった。
 街には高級娼婦から幼女の淫売まで娼婦が跋扈し、その多くはスリや盗人と兼業だったし、ポルノグラフィーの歴史はロンドンの歴史ともいえるものだった。動物いじめはレジャーの一種であったし、ネズミの山から女同士のキャットファイトまで賭博は盛んで、王侯貴族から貧民街の庶民まで、変態と悪趣味が満ちあふれていたのだ……。

「あなたが何を考えているか、そのズボンなら一目で判るもの」
 17世紀には、男は14歳、女は12歳で結婚することができたが、結婚式では男の多くはびっちりした半ズボンを身につけるよう花嫁から求められていた。

 貧しい人々は医者にも見放されて死んでいき、生活苦で売られたり誘拐された子供の運命たるや酷いもので、「処女には性病を治す力があると信じられていた」というについては何をか言わんや。
 この本の唯一の救いは、19世紀になってメソジスト教会の牧師であるウィリアム・ブースによって救世軍が創設され、餓死寸前だった幼児や孤児の幾ばくかは救われたというあたりでしょうか。
 でも、現代日本の東京あたりでも、100年後にスポーツ新聞や週刊誌の記事をベースに紹介記事を書かれたら、こんな本になってしまうのかもしれません。

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