付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「不肖・宮嶋 南極観測隊ニ同行ス」 宮嶋茂樹

2009-08-29 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
「カメラのことは忘れてください」
 不肖・宮嶋にダンボール箱を手渡した金戸ドーム基地旅行隊長の言葉。総出で物資100トンの揚陸作業が始まるのである。

 「週刊文春」に連載された、カメラマン宮嶋茂樹が第38次南極観測隊の夏隊に同行した2ヶ月余の記録を、「吠える40度」「狂う50度」「叫ぶ60度」など156枚の写真と共に1冊にまとめたものです。
「ほとんどの隊員のかたからは喜んでいただいたが、一部よりは大変なおしかりも受けた」とあるように、真面目な観測隊の活動の取るに足らぬ部分ばかりを取り上げ、針小棒大に誇張して面白可笑しく書いたものなので、あとがきは謝罪文の山です。「不肖・宮嶋」の文章パートを担当している勝谷誠彦のあとがきもほとんど言い訳です。でも、それが単なる詫び状や愚痴にならないところも芸だと思います。
 ただし、こういう本だけ読んでいて南極観測隊のことを知ったつもりになっていてはいけませんが、長い間、しばらくまともなマスコミの取材は行われていなかったようでしたから、その空白を埋めるという意味で重要です。とにかく南極観測は簡単で楽な大名旅行とは違うんだという点は伝わってきますので、ここんところは重要。そして、真面目な南極観測隊の活動については他の本や雑誌、新聞、インターネットの記事で幾らでも読めるので、合間にこういう本を読むのも悪くありません。
 とりあえずチェックする必要があるのは宮嶋カメラマンに怒り狂っている西村淳の『面白南極料理人』と、その7年後の第45次隊に参加した女性記者の『こちら南極~ただいまマイナス60度』でしょうか。(09.08/29)

 子供への就寝前の読み聞かせは続けるようにしています。
 就学前は童話。小学生になったら、ガリバーの冒険あたりの児童版から始まって、ロフティングや佐藤さとるあたりを経由してファンタジーやSFへ行き、高学年になったら旅行記みたいなものへ。そして「あとは自分で読め」と宣言するか「自分で読む」と言い出したら卒業。
 まだ小学生だった長男への夜ごとの読み聞かせは、西村淳の『面白南極料理人』が終わって、最後には『不肖・宮嶋 南極観測隊ニ同行ス』に突入したあたりで終わったんじゃないかな。ハリー・ポッターを自分で読めるようになったら、親は用済みさね。
 ただ、『不肖・宮嶋……』は端折って読んでいかないと、「南極大陸に南極2号」とか「胸ポケットにコンドーム」とか、親として非常に説明に困る部分が多いんだよね。いや、そんな本、最初から選ぶなと言われそうだけれど、アムンゼンとスコットとか南極探検シリーズだったんよ。(07.08/27)

【不肖・宮嶋】【南極観測隊ニ同行ス】【宮嶋茂樹】【勝谷誠彦】【平成のレイテ作戦】【不運長久】【幻日】【南極ラーメン横丁】【「捨てたのではない。置いているだけである」】
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「僕は友達が少ない」 平坂読

2009-08-29 | 学園小説(不思議や超科学なし)
 ライトノベルは終わった!といわれてもう何年? 確かに発行部数は減っているようでもラノベ系といわれるレーベルは増える一方で、8月の電撃文庫新刊は15冊、HJ文庫は6冊、富士見ファンタジア文庫は11冊、ファミ通文庫が6冊、MF文庫が12冊。よく出るなあ。買って読むどころかタイトルを抑えるのも一苦労。まあ、なんのかのといってもライトノベルというのは「アニメ・コミック系のイラストを多用した、手軽に読める中高生向けの出版形態」なので、環境適応能力はありますよね。売れるジャンルはどんどんテコ入れし、売れないジャンルは撤退し、新しいジャンルも1冊2冊は冒険し……。
 ちなみに創元推理文庫は新刊15冊で、そのうちファンタジーが3冊、いしいひさいちのコミックが1冊、あとはミステリ・サスペンス系です。SFは1冊もないじゃん……。

「友達がいないことがイヤなのではなく、学校とかで『あいつは友達がいない寂しいやつだ』と蔑むような目で見られることがイヤなのだ」
 三日月夜空の告白。これは「友達百人なんてできなくてもいいから、百人分大切にできるような本当の友達を作りなさい」と対になる言葉。

 それはともかく、先日知り合いに薦められたのがMF文庫の『僕は友達が少ない』。今月のお奨め作品。どんな話かと聞いてみると「すごく笑えるけれど話としては何も進展しない、ぬるい学園4コマみたいな話」。昔なら「学園ユーモア」でひとくくりにされていそうです。

 高校2年にもなって聖クロニカ学園に転校してきた羽瀬川小鷹には友達がいない。
 彼が偶然出会った少女・三日月夜空には「エア友達」はいる。エア友達がいるということはリアル友達はいない。けれども夜空には無駄な行動力だけはあり、小鷹を引き込んで友達作りを目指す「隣人部」などという残念な部を作って顧問まで見つけてきてしまう。しかも何を間違ったか、そんな残念な部なのに続々と残念な美少女たちが入部してくるのだが……。

 クラスに友達がいないなら部活をすればいいじゃん? 中途から部活を始めるのがイヤなら新しい部を作ればいいんじゃない? そんな連想から始まる、友達ってなんだろう?と考えさせられる1冊です。考えないけど。さんざん笑いながら一気に読んでしまっただけですが。
 確かに4コマ的に1章で1エピソードが完結するような流れですが、とりあえずこの巻は小鷹と夜空、それに性格以外は完璧な美少女・柏崎星奈の3人の関係を丹念に追っています(ほとんど罵りあいですが)。見た目は美少女な男子生徒の幸村とか小鷹の妹で電波系の小鳩とかも登場しますが、それほどぶれないところは侮りがたし。
 最後の2章で一気にフラグがポンポンッと立ったと思ったら、もう1本も立ちかけて、どうなるかと思ったところで続く。次も冒頭から荒れそうだあっ!
 うん。夜空も星奈も1対1でつきあう分には攻略可能です。真剣で斬り合っている中に飛び込む勇気が必要ですが……。

【僕は友達が少ない】【平坂読】【ブリキ】【残念な美少女】【闇鍋】【礼拝堂】【エア友達】【脳内遊園地】【キリスト教】【聖クロニカ学園】
コメント (2)
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