地理学や環境学、社会学などの分野で、ライフコースにおける「田園回帰」が流行の研究テーマになりつつある。
小生の故郷でも、もともと地縁のないIターン移住者は確実に増えている。しかも若い世代が少なくない。
ちょうど30年前(平成初期)、農水官僚から国有林の現場監督を経て大学教員に転任した小生は、国土の均衡ある発展と地方振興、過疎対策、第一次産業の持続可能性などの視点で、(兵役に替わる)「農林役」「土木役」を提案してみたことがあった。同業者の反応は、「そんなものはファシズムだ。」「俺はこの仕事をしたいから都会で頑張ってんだ。」と、予想通り。
今小生も「田園回帰しませんか」とか言われたら、間違いなく同じことを口にするだろう。天職として選んだこの仕事において、自分の価値を100%引き出すために、この土地で戦っているわけだ。
それでも健康や経済、家庭などの事情により、志(あるかないかはさておき)半ばで都会での競争社会を下りて「田園回帰」を選ぶという人も増えている。そしてその「田園社会」が自己実現、あるいは食べていくための受け皿足り得ればよいのであるが、都合のよいケースばかりとは限らない。親について移住した子供についても、人生の選択肢を狭めたくはないと考えるようになるかもしれない。その意味では、行政(総務省や各地方自治体)から大都市圏住民へのアピールの現状には、一抹の不安を感じたりもしている。
Iターン移住者が増えている一方、離京したかつての同級生の一家が戻ってきたとかは聞いたことがない。この違いはなぜ?