頼子百万里走単騎 "Riding Alone for Millions of Miles"

環境学者・地理学者 Jimmy Laai Jeun Ming(本名:一ノ瀬俊明)のエッセイ

サイエンスコミュニケーターは難しい

2021-06-03 02:03:51 | 日記
ライターさんが小生にヒアリングして一般読者向けの取材記事を書くという企画だが、そんなに簡単なものではない。こっちが恥をかかないよう大真面目に厳しくいわざるを得ないが、わかるだろうか。
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「夕方に打ち水を、、、風を作る」
中庭の上昇気流とそれにともなう風は日中の話なので、この表現は不自然な印象です。
「太陽が地面を温める熱エネルギー。地面から跳ね返る、、、」
太陽から来るのは熱ではなくて放射(放射エネルギーを地面が受け取ってはじめてそれが熱に変わる)ですので誤解につながります。熱は削除するのがよいです。地面で跳ね返るのは太陽からの直接的な放射(可視光線など短波放射の領域)であって、ここで表現している上向きの赤い矢印は地表面の温度で決まる赤外線(長波)の放射です。跳ね返ったのではなく、地面が熱いので放たれているエネルギーです。誤解を生まない表現が必要です。
「地中の熱に水が蓋を、、、」
そもそも池のような厚みの水体であれば、水底の地中に蓋をして防ぐ必要のあるような(太陽由来の)熱がたまることはないので、この表現は不適切な印象です。
「赤外線の跳ね返りが大きい」
そもそも赤外線は跳ね返りません。放射エネルギーが物体の表面に吸収され、それが熱に変わって表面温度を上昇させ、物体表面から赤外線が飛び出すわけです。よってこの表現は不適切です。
「この赤外線による反射熱のため」
反射ではありません。建物や路面などから放たれる赤外線を体の表面で受け取ることにより、気温よりも高い温度を感じてしまうということです。よってこの表現は不適切です。
「打ち水で風を起こす」「、、、下降気流が起こり」
上述したとおりです。同時に起きているわけではありません。よってこの表現は不自然な印象です。
「中庭には、、、蒸発が起き、上昇気流が、、、」
蒸発が起きると表面温度が下がるので、むしろ上昇気流は起きなくなります。上昇気流が起きるのは、表面温度が上昇し、接する空気が温められるからです。よってこの表現は不適切です。
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