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『弥生から古墳へ 日本の古代はこうして始まった』 1996年 同朋舎出版

2013年05月05日 | 初期国家・古代遊記

『弥生から古墳へ 日本の古代はこうして始まった』 1996年 同朋舎出版

弥生時代から古墳時代の移り変わりはどのように考えたらよいのか、日本の古代はいつから始まるのか。

1994年2月13日に行われた弥生文化博物館三周年・近つ飛鳥博物館完成記念シンポジウムに基づく記録集。

コーディネーター金関恕の司会のもと、佐原真・田中琢・大庭脩・佐々木高明らが、基調講演のあと、白熱した討論が続く。弥生と古墳時代を分けるものはなにか、あるいはこの区分法がよいのか、佐々木高明の銀河系政体論など、長時間の討論も刺激的であった。

 ▼ 目次

 

基調報告のあとの討論も面白い。この本の後半半分ほどを、討論・会場参集者への簡潔な応答などが占めるがこれがまだ未解決の古代史論争に関わるものが多く、けっこう示唆的で、古代国家生成の過程をどう考えるのか参考になる。

5月4日に古書店より到着・入手したが、積読(つんどく)コーナーに移動せず、ざっとだが一気に通読してしまった。

以前に2004年の『歴史評論』 11月号 校倉書房 に佐々木憲一が「古代国家論の現状」と題して、都出比呂志の「日本古代の国家形成論序説 ー前方後円墳体制の提唱ー」以降の主な古代国家・初期国家論の論点を整理する中で、佐々木高明の「「首長制社会からクニへ」を高く評価していて、ぜひ読みたいと思っていたものだった。

期待に違わず、古墳時代の変遷の分析にあたり、モデルになりそうな、「銀河系政体論」だった。まだタンバイアーの著作 「World Conqueror and world Renouncer,1976」   が日本語に翻訳されていないのが残念だが、この紹介が、弥生から、古墳時代への移行や変遷の理解などに役立ちそうなのだ。

タンバイアー によれば

「中世のタイ諸国、例えばスコーター王国やアユタヤ王国は「集権的官僚制の帝国ではなく、むしろ銀河系型の構造であり、中心に位置する(世界の支配者たる)ものの周りを、いくつもの同型物が回転し、分裂と合体のたえざる運動を繰り返すものであった。70p」

「大変面白いと思うことは、中心のクニも、それぞれの中心がはっきりしているけれども、その周縁はぼやけている、ですから、今日のような、はっきりした領土国家を考えるのは当たらないという指摘」

「このタンバイアーの学説で重要な点は、中心がはっきりしていて、外縁がぼやけること、つまり、クニとクニの間にかなりの空間が存在した可能性が考えられるということです」

「また各々のクニは規模こそ違うが、同型で自立的な実態を持っていたということです。周縁のクニから中心のおおきな国に朝貢関係があったり、さまざまな関係があり、一種の従属関係が保たれているが、中心の引力の大小により、分裂と合体のたえざる運動があるものとタンバイアーは考えたようです」

 

続く

 



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